Switch ON Mini Fest 2015 in Malaysia KL

目覚ましが鳴りしきっかりに眼が覚める。
基本的に寝坊というものをすることはほとんどない。
情けない話だが、寝坊することでチケットロストなどお金がかかることを絶対避けなければいけないので、
ずいぶん前から全く寝坊することがなくなった。
ただの経済的理由だ。
バリフォニックスのメンバーも起きて身支度しているがダレンが遅いのでノックして起こす。
やきもきして一足先に集合場所であるラサールに向かい向かい楽器をパッケージする。
三々五々集まりタクシーでバス乗り場へ。
急いで朝飯を探す、なにやらマレー系の店にバナナの葉に包まれたものがあり、
名前を失念したが有名なナシレマッに似ている。
1.6ドルと非常に安いのでこれにしてバス内で食べることにした。

初めての味で楽しみだ。
いざバスに乗ろうとすると、なんと食べ物の持ち込みが禁止!ノー!
慌てて外に出てバナナの葉を開いて中の揚げた煮干しと辛いソースをかけて頂く。

ココナッツミルクで炊いた飯に揚げた小魚とナッツなどと辛いソースが混ざって結構美味しい。
これはいいものだが、もうちょっと落ち着いて食べたかった。
かっこんでいざバスへ。
初めてのアジアでの長距離バスは日本のものよりもシートが広く快適だ。
これで20ドル(1800円くらい)で6時間、外国に行けると思えば至極安い。
途中国境付近でまずシンガポール側のパスポートチェックがあり、
その後またバスに乗って国境を越えるためのマレーシア側のパスポートチェックがある。
すべての荷物はここで検査が必要になるが、
ここで少しトラブル、ジェイソンを中心としたエレクトロニクス系のミュージシャンの荷物が厳重チェックに。
何故かとしまるさんと僕とブルクハルトはスルー。
開封を命じられたジェイソンが箱を開けるとそこにはパッチングされたアナログシンセが現れ、
係員が怪訝な顔をした時は悪いけど笑ってしまった。
そりゃあ、何かわからないよな。
日本に初めてムーグが来た時に税関で悶着があった時と同じではないか。
何とかパスして再びバスへ。

車内では皆が眠りについている。
外を見ても高速道路の周りはずーと椰子椰子、椰子、また椰子の木で代わり映えがなさすぎる。
途中でサービスエリアのようなところに立ち寄り、食事。
あまり腹は減ってないけど面白そうなので頼んでみる。
Mee hoon baksa というのにしてみた。牛肉団子の汁麺だ。

うっすらカレーっぽい香りがする汁にコシのない黄色い太麺、ここでも揚げ煮干し粉。
マレーシア人のリークワン曰くここの名物らしい。
なんてことないのだが、付け添えられた調味料を入れるとグンと美味しくなった。
すこし辛くてニンニクと中国醤油の香りがする。
なかなかいけた。
食後はまたバスに乗り延々と椰子の海。
アルゼンチン人のアンラは遅れてきて僕の演奏も見ていないので僕が誰かよくわかってない。
すっかり僕のことをマレーシア人だと思い込んでいたらしい。
俺は何なのだ!いいけどね。
六時間半近くかかってようやくクアラルンプールに到着。

バス停を降りて大荷物をおろし、みんな仕方なくという感じでスターバックスで喫茶。
道の乞食に皆が優しい、受け取る方は鷹揚、久々にムスリムの国の感じを思い出した。
今回のコーディネーターであるリークワンにいろいろ話を聞く。
まずはこれより会場のfoundersにタクシーで向かい、すぐ近くのゲストハウスにチェックインだ。


大型タクシーに分乗して移動ほどなくチャイナタウンにある会場に到着。
悲報、エレベーターなしの五階…
僕はともかく、エレクトロニクス奏者は大変だった。
非常に感じの良いファウンダーズにまず荷物を置いて宿へ、角を曲がってすぐ。
海外でゲストハウスに泊まるのって思い出せないくらい久しぶりだ。
少しのんびりしてから会場に戻りセッティング。
僕はパーカッションのブルクハルトとサックスのヤンセンとのトリオで出演。
真ん中にスポットライトを丸く当て、それを囲むようにセットしよう、というブルクハルトの意見を採用。
ノーマイクのアコースティックで、楽だ。
ここは生音ですごく良く響くので、かなり楽しいことになりそう。
その後は地元民オススメの店めがけて雨の中ゴー!
しかし言われた店が見つからず、チャイナタウンの迷路のような屋台街を歩いているうちにいくつかのグループで逸れてしまう。
としまるさんとブルクハルトと三人で、彼らが前から知っている店へ入る。
どれもこれもすごく美味しそうだが、ここはひとつバクテー(肉骨茶)を是非、タイガービールと。
出てきたのは思いの外あっさりとしていて、スルスル入る。
豚肉は出汁に全てを吸い取られたようなもので、漢方もしつこくなくて美味しい。

2人の話を聞きながらの食事は、とても楽しいものだ。
食後はまた会場に戻り、僕はもう一泊延長する手続きをする。
ロビーに日本語を話す人がいてリークワンが大祐行け!というのでライブに誘ってみる。
あとできてみるとのこと。
会場に戻ると三三五五一が集まり始めている。
気がつけば満員に。
皮切りはジェイソンカーンとアンラカーティスのデュオ。
前に東京でみたようにジェイソンはコンデンサーマイク一本にスタンディングでヴォイスのみ、アンラはテープレコーダーなどのオブジェクト多数とギターなど。
極小音からラウドなものまで幅広く、ジェイソンは怪人(失礼!)といった趣炸裂。
(写真はリハ)
次が僕らのトリオ。
先日のヤンセンとのデュオからさらに輪をかけて過激なセットになった。
僕はやはり床に座って演奏、コンクリートの床と金属ボールの相性が良く、いろいろ試す。
最終的には二つほど思いっきりふみつぶしてしまった。
ヤンセンはフルで鳴らすようなシーンも多く、ドライでスピードのある音色のブルクハルトがさらにヒートアップして
全員汗まみれの大熱演。
息切れを抑えて演奏するのに必死だった。
終わると、ああ、やってもた、やりすぎたか…と思うが、ミュージシャン達にも大当たりで、
特にまだ僕を見てなかったアンラに見てもらえたのが良かった。
やはりライブ観ないとどんな人かわからないし、内容の良し悪しを別にしても、信用できないもんね。
その演奏家ががどういう人物なのか、それは演奏に全て込められている。
次のダレン、ブライアン、としまるトリオはさらに全てを上回る過激な演奏で、完全にノイズ。
前方に二台のアンプを構えたとしまるさんはまるで戦車乗りのようで、
そこから繰り出されるあまりに多彩な音にとことん圧倒された。
時に完全な調性楽器のように、重厚なコーラスのように、それらをこえた未知の音色に。
フィードバックを全く恐れないノイズベースのブライアンと天井を吹き飛ばさんとするダレンのドラムに、
プロジェクションの乾いた映像もあっている。
あまりの打っ叩きに吹き飛びそうになるベースドラムを長身のクレイトンが寝転んで足で支える図がシュール。
本当に素晴らしい演奏だった。
最後は主催者リークワンとクレイトンのデュオ。
ここにきてクレイトンは完全に生音でリークワンはノーエフェクトとみえるノーインプットミキシングボードのシンプルな組み合わせ。
クレイトンの生音、たまらん!
この音量だとリークワンのやっていることがとてもよくわかる。
アコースティックとエレクトロニクスに区別には何の意味もない。
とても良い〆だった。
ついに終わった!
リークワンの挨拶の後、皆で乾杯。
全てが楽しい。
演奏家は演奏することがその人を表し、それを受け取って関係が密になる。
いつもうまくいくわけではないけど、今回はすごく良い関係を皆と持てていると思う。
今回の共演でブルクハルトと共演できて、お互いの新しい関係が生まれた。
とても嬉しい。
最初は気難しいところもあるのかな、と思ったけど、それは僕の思い込みでしかなかった。
そしてヤンセン、お互いを兄弟と呼び合う彼。
ここマレーシアで、あんなことを一人で続けている人は他にいない。
僕がいることで彼が喜んでくれることが、心から嬉しい。
気分転換に噂の屋上に上がると、そこにはたくさんのマレーシアの人たちがたむろしている。
僕が来るなり皆が突然何かを話しあっている。
ヤンセンに聞くと、なんでもある有名なアーティストと顔がそっくりらしい。
写真を見せてもらうと、確かに似ている…
アンラにもマレーシア人だと思われてたし、俺ってマレーシア顔だったのか!
ヤンセンは日本人顔、なぎら健壱系)
屋上から見える景色も良く、しばし一人の時間も楽しむ。
今日はここでお開きだ、これより明日シンガポールに戻る人達、ここから世界各地に飛ぶ人たち、
僕は一人ここに残り、もう少しだけマレーシアのことを知りたいと思う。
ヤンセンが一日の案内を買ってくれた。
彼の仕事(漢方薬局で、デリバリーもするらしい)の移動に付き合って、ごく普通のマレーシア人の暮らしを少し見せてもらう約束だ。
本当に、楽しかった!
今日はみなさん、早めにお支えるやすみなさい。