CHOPPA Festival 2015 3rd day

早めに起きて一人朝飯。
持ってきた高野豆腐を戻して野菜炒めと味噌汁に使う。
穀物入りパンで食べる。
ダレンから「メイドさんが掃除に来るのでその間家にいてほしい」とのこと。
インド系の彼女が数時間掃除や洗濯をしている間、その辺で作業する。
メイドを使うって、シンガポールっぽいなあ。
2時くらいに出かけいつものフードコート豚内蔵料理屋にて、今回は豚バラピータンの中華粥。

ピータンって英語でcentury っていうんだ。
結構ボリュームがあって美味しい。
ここは味付けがあっさりしていていい。
昨日歩きすぎて靴のかかとが抜けてしまったので中華ショップでサンダルを買う。安い。
ベルギーで買って震災の日に北区から渋谷まで歩き通し、
ここシンガポールでも歩きまくって御臨終したスニーカーは路上のゴミ箱へ消えた。


chops festivalは今日で最終日だが、僕の出番は昨日で終わっている。
今日は自分の時間がたっぷりある。
急ぎ足で大型デパートへ向かう。
目当てはペットショップだ。
それにしてもシンガポールはどこもかしこも買い物のためにできているかのようで、
初めてデパートに入ったが、買い物が得意でない僕には少々ハードだ。なぜか居心地が悪い。
デパートは不案内でフロアごとの店舗がわかりにくい。
やっと見つけたペットショップ店員に「鳥や魚用のライブベイトはあるか?」
と聞いたら、ない、と。
よくあるミールワームを釣り餌にしようと思ったのだが失敗だ。
もう何も用はないので買い物に狂奔する群衆を後にして足早に去る。


ここらへんで、ああシンガポールなんだな、と思う、
最寄り駅のNSラインから比較的新しいmalina bay方面に向かう。
目当ては堤防だ。
終着駅からフェリー乗り場沿いに地図を頼りに歩くと初めて見る堤防と釣り人達。
みなごっつい投げ竿と胴突き仕掛けでぶん投げている。
下を見ると敷石がありかなり浅い。
深場を探して歩き回ると、バスタクシー乗り場の横に見辛いがヘチに落とせそうな場所がある。ここだ。
一応投げて釣る準備もしてあるのだが、
どうしても自分本来のスタイルであるヘチの落とし込みで釣りたい。
そのためにタイコリールを持参したのだ。
急ぎ仕掛けを作りパワーイソメを付けて落とす。
イソメ同様、と謳う有名な配合疑似餌だが、イマイチ不安。
あたりはあったようなないような。
探り歩くと誰かが釣り上げて捨てたヒイラギのような魚が半ば干からびかけで捨ててある。
これを拝借し、ハサミで細く切って餌に仕上げる。
チヌ仕掛けから軽めな一本胴突に変更して探ると、ヒット!
小さいが、やっとシンガポールでの初釣果。
執念と工夫の成果はやはり嬉しい。

見るといつも釣るメバルのようでもあり小型のハタのようでもある。
正直いって、南国らしい派手な魚が釣りたかったのだが、でも嬉しいものだ。
小ぶりにやり、おかえりいただく。
このあと妙な重さを感じて引き上げること二回、ナス型オモリになんとタコが絡み付いていた!
オモリを貝だと思ったのだろう、慎重に引き上げたが、さすがに針がかりしていないので落ちて逃げた。
海面に怒りの墨を吹き残して。
面白いなあ
偏光グラスで海面を見ると、アジのような回遊魚や大型のサヨリかダツのような細長い魚など、
いろいろな魚たちが見える。
ヘチは結構深い。
しかし、ここら辺の釣り人達は仕掛けが間違ってるのか下手くそなのか、海中のそこらじゅうに根掛かりして切れた長い仕掛けが沈んでいて、
探っているとそれらにまた根掛かりしまくってイライラする。
少ない釣り場を繰り返し探るのだが、時間とともに風が吹き気温が下がっていく、
おそらく水温も下がったのだろう、
見えていた魚も頻発したアタリも消えてしまった。
やはり南国の魚は低水温に弱いのだろうか。
暗くなるのを待ちたいが7時半でもまだ少し明るく、タイムアップ。

しかし、釣れてよかった!
帰りは慌てて急いで、途中でビールを買い一人祝杯、
空腹の限界でフードコートのタイ料理屋でトムヤム板麺をかっこむ。

慌ててラサールに入るとリークワンととしまるさんとジェイソンカーンのトリオが会場中央に内向きの三角形フォーメーションで始まった。
ドローンではなく、バリバリと激しいエレクトロニクスのサウンドは刺激的だ。
続いてティムとクレイトンとダレンのトリオ、
始まった瞬間に猛烈にジャズ、それも情念系では全くないフレッシュなフリージャズの音に驚いた。
クレイトンはラインでコントラバスを鳴らしティムのサックスとダレンのドラムは良すぎるくらいにコンビネーションが良い。
このフェスでまた異色のサウンドだ。
次はアメリカからジェリーヘミングウェイ、ブラクストンのドラマーなどとして有名な彼はサラウィーヴァーという作曲家の作品を演奏。
最初はアンプリファイドとエフェクトのあるシンバルソロ、その後ドラムセットで2曲。
聴いてるとほとんど即興のように聞こえる、繊細なテクニックが心地よくて、
気持ちよすぎのためうとうとしてしまった。
いよいよこのフェス最後のBaliphonics。
スリランカのグループでコントラバスとドラムと伝承伝統歌唱と舞踊のトリオだ。
造花を誂えた鐘を片手に上半身裸の男性が朗々と歌い上げる。
目線と表情の変化が既に踊り始め、全身を激しく使った動きのダイナミックなダンスに思わず声があがる。
コントラバスは彼の歌からキーを取り出し、楽曲のリズムを作り上げ、
ドラマーは通常のドラムセットでなんとも形容しがたい、
西洋のリズムとは全く根本的に違うグルーヴを叩き上げる。
リズム隊の演奏は聴いたことのないユニークさで非常に興味深い。
油絵具で日本画を描いているというか、西洋楽器を完全に換骨奪胎して伝統邦楽を演奏しているというか、
そんな感じ。
聴いたことのない音に耳を奪われ、激しく美しい踊りに目を奪われる。
ダレンが猛烈に推薦しトリにしたのがよくわかる。
なかなか言えないが、アヴァンギャルドな上に初めて観た人でも猛烈にノレるのだ。
ここまでかここまでか、と思ってもダンサーは何度も何度も新しい歌を歌いまくり、
リズム隊がヘロヘロになってくるまで続いた。
ダレンが終わりの挨拶始めろうとしたらまた歌い始め、
半ばヤケクソ気味にリズム隊が猛烈に弾ける。
ダンサーは歌いまくりながらついに観衆の側に飛び込んできて、
私達に襲いかかってくるようにして歌い続け踊り続ける。
僕も頭を抱えられて揺さぶられ顔の目の前で歌を浴びた。
こちらまでトランスしそうだ!
喝采で終了。
終わってもエネルギーが持続するような素晴らしい熱演だった。

素晴らしかった。
数々の名演が続いたこのフェスもこれにて幕。
ダレン、あんた凄いよ。ありがとう。
初めて日本であった時、この人はなんて楽しんで音楽をするのだろう、
なぜこんなに一瞬一瞬を大事にして欠かさずいられるのだろう、と思った。
前々から、シンガポールはこういう音楽に簡単な場所ではない、と聞いていた。
だから日本に来るといつも幸せ、
毎日好きな音楽ができてたくさん素敵なミュージシャンがいて場所がある、と。
今回のこのフェスは本当に素晴らしかったが、
これでここが素晴らしいのだ、とは勘違いしない。
困難な場所にこそ、音楽を愛する人達が集い、行う。
人があってこその場所だ。


終演後はまたしても外の店で打ち上げ。
明日は朝8時集合で早いんだから、と思うけど、飲むよね、このメンツ。
バリフォニックスのメンバーが合流したので彼らと少し話をする。
楽器の二人はどちらかというとジャズミュージシャンだそうだ。
ダンサーの彼は英語が話せないが、なんとも言えない目の表情で話をする。
いい時間だ。
ちょっと早めに上がって、といっても2時にお開き、
バリフォニックスのメンバーはなんとダレンの家の居間でクラッシュ(雑魚寝のこと)するという。
僕の寝具も幾つかシェアして、そしてまたウイスキー飲み会開始、おいダレン!!
もちろん歓迎。
スリランカのことを何も知らない僕にはどの話も興味深かった。
いつかいけるかしれない、そんなはなしになった。
(あと、僕がもうすぐ42歳になるといったら驚かれた。
スリランカ人から見ると30そこそこにしか見えないらしい)
彼ら、日本に来たら絶対人気出るよなあ。
アンダーグラウンドじゃなくて、オーバーグラウンドな、
新しい伝統音楽の形として紹介されそう。
誰か呼んでみませんか?紹介します。
ベッドに倒れこんだのは3時、起床は7時の予定だ、