泉邦宏ニュートリオライブ


昨夜のライブでのこと。
二人の素晴らしいプレイと共演した余韻に浸っていた一部の後の休憩を終え、
さあ二部に行くぞと向かうと、池澤君が血相を変えてこちらへ、
倒れた?
シンバルスタンドが何もしないのに何故か倒れ、運悪くtubaにあたり、
tubaごと倒れた、とのこと。
駆け寄り調べる。
ヤバい、よりによって、ピストンの方から倒れたようだ
(駆け寄った時には起こされていた)
3番ピストンがすでに押された状態のまま上がってこない、
引っ張り上げようとしてもびくともしない。
二番ピストンは押すともう上がってこない。
一番と四番は辛うじて動く。
これはライブできない。
以前交通事故で自分もろとも先代の楽器が全壊した時と殆ど同じ壊れ方だ。
前回はあれで文字通りオシャカだった。
なので事故の保険で今のが来たわけだが…
今回は誰のせいでもない。
頭の中をあれこれ錯綜する。
もうこんな楽器は手に入れることはできなさそうだな。
珍しい楽器ではないが普通に高い。
馬鹿安い自動車くらいする定価。
頭真っ白。
まずあるのは目の前のライブだ。
3番ピストンが沈んだままで基本キーはDだが、
ペンタトニックのごく一部しか出ない。
二番ピストンは動かないので使えない。
三番が動かないと四番は使う意味がない。
三番押さえっぱなしで使えるピストンは一番だけ。
開放(三番が押さえられた状態)で出る音は下から
G,D,G,D、その上で一番ピストンを使うと下からF,C,FC,
さらに上の方は倍音列の音で唇だけでいくつか吹けるが
平均律的には音程は怪しい。
壊れたクラリネット状態か…
最初はネイ吹きで笛の演奏から始める。
四番管をオフ。
しかしさすがにバリエーションなさ過ぎ。
無謀を承知で普通に吹く。
音抜け悪いが出る音は出る。音階これだけだが…
泉さんと池澤くんの演奏が不自由で足りない部分を
支えようとしてくれている。
といっても、べったり補完しようとするのではなく、
まるで全く関係ないかのようにバラバラに、かつ一緒に。
ありがたい。
上の方の音列になると自然倍音で近い音階が出せる。
口はキツイし音程は何だが少し自由がきく。
だんだん面白くなってきた。
動かないのはピストンだけだ。
いい演奏だ。
そのまま演奏し切って終了。
即興だし、あとは自分とメンバー次第。
こういう時に演奏のポテンシャルが下がるなら、
今までなんのために即興なんかやってたのか。
舞台で楽器が壊れたのは今回が初めてではない。
ハンブルグではステージから落ちて楽器だけ全壊、
横浜でライブ前に全く音が出なくなって、メンバーたちから様々な楽器を借りて、
やりなれない楽器や口笛歯笛に歌でもなんでも、
曲の時もそうやってきた。
今回は偶然に、とても良いライブになった。
ライブの後も気を張ってたのか、落ち込むことはなかったけど、
後になるとやはり凹む。
この楽器、なおるのかな…
とりあえず専属修理人に診てもらうべく、
横浜へ向かってます。
幸か不幸か、名古屋のライブは楽器を借りる予定だったし、
次の自分のライブは6日までない。
なおっても、六年かけて作ってきた楽器のポイントは
大幅に変わってしまうだろうけど、
なおれば上等だ。
うまくいきますように、と祈る以外ない。