田中邦和x高岡大祐x福島紀明@吉祥寺FOXHOLE

まだまだ予断を許さない日々が続く。緊張が途切れない。
しかしこの日も決行を決定した。
停電などの影響で電車のダイヤが乱れている。
かなり早めに移動の準備をしたが新宿駅で中央線ホームに上がる前に足止め。
ロープが張られ、ホームに人が多すぎて危険のため順次上がれるようになる、とのこと。
そういう時、皆信じられないくらい大人しい。
電車が来ても一向に上に上がれない。相当な数の人が待っているのだ。
3回くらい待ってやっと上がれる。その時、目の前の女がおばあさんを蹴るようにぶつかった。抗議しても知らぬ顔。
荷物もありなるべくゆっくり上がり列に並ぶ。
横抜かし、人押しのけ、何をしとるんだ。
さっきまでおとなしく待っていたのは、マナーが良いのじゃなくて横並びだっただけか。
皆がそういうわけではないが、そういう無体をする人も行儀よく待っていたのだ。
とにかく何としてでも先を急いで乗ろうとする人達、恐らく勤め人なんだろうが、
何をそんなに急ぐ?
僕はこれから演奏で、早く行かないといけないが、人を押しのけるくらいなら遅刻した方がましだ。
おまけに楽器が危険なのでなかなか乗れず、電車を譲って待つと、
僕一人が乗れるかどうか、というところに5人くらいが乗ろうとする。
もし僕が後の予定がなければ、そのへんで本でも呼んで1,2時間時間をやり過ごすだろう。
まあなんとかのり幸い網棚に楽器を押し込めた。
ここから、人生最悪の満員電車に乗ったことになる。
死ぬかと思った。
なんとか吉祥寺で降りれてほっとひと息。
駅を降りると嘘のように静かだ。
いつもビカビカ光っている看板もうるさい音も殆ど無い。
夜が、ちゃんと夜だった。
普段からこれでいいんじゃないかな、という人は結構多かった。
節電ムードで一色の世の中でフォックスホールは表にもジャズを流してて笑った。
ひとつくらい、こういう店があっても良いじゃないか。
いつもよりかなり落とした照明、福島くんは先に着いてた。
心配していたクニさんも無事に送れて到着。
時間つぶしと材料探しにとなりの百円ローソンに入ると愕然とする位ものがない。
酷い買い占めが始まっているのだ。
演奏は、もう言葉には出来ない。
特別な気持ちにならないでいられるだろうか?
今までやっていたことの真価が問われているような気がする。
こんな時に、演奏がとても楽しいのだ。
この楽しさは余裕や逃避なんかじゃなくて、根源的な喜びだと思う。
何かはやはりうまく言葉に出来ない。
いい夜だ。そして酒が染みるように美味い。
不謹慎の謗りを受けるかもしれない、しかし全体主義にように悲しみに覆われ喜んではいけない、などと僕が被災して思うだろうか。
音楽は少なくとも僕には生きる全てだ。
それだけはいっておきたい。僕だけじゃない。
人が大事にするものはそれぞれ違うはずだ。
あ、やはり」言葉は駄目だ。このへんで。
帰りの中央線は殊の外空いていて快適だった。