Eric/高岡/坂田/梅津@早稲田茶箱

Eric Thielemans(per,ds)高岡大祐tuba 坂田明reeds 梅津和時reeds
ついに最終日。そしてこのメンツ。僕関連のライブでは珍しく予約制でまさかの完売。
まあこのメンツなら当然か。エリックのライブを繰り返し聴きたいという要望も毎日集まってくる。
この日はさらにまさかがいっぱいあった。
最初のお客さんは、なんとまさかの灰野敬二さん。さらに酒井俊さんもご来場。
僕なんかよりも長年海外での経験が山ほどあるreedsお二方はエリックともすぐに仲良く。
最初はエリックと僕のデュオから。ホストバンドの気分でやらせてもらう。
これでこの肌合いになじむデュオも当分ないのか、と思う気持ちをぐっと抑え今だけの今へ。
続いて順番が決められず坂田さんと梅津さんがジャンケンで順番を決める、これだけでおかしい。美味しすぎる。
デュオに梅津さんを招いてのトリオは、梅津さんエリックのバスドラに密着し過ぎの本気仕様。
悪乗り寸前(たまに柵越え?)の沸騰を見せてくれた。
次は坂田さんを迎えたトリオ。こちらは逆に真っ直ぐというか(といってもありていのストレートではない)、
素直な気持よさ。それぞれの個性が、私たち二人を鏡に反映、というと言い過ぎか。
1分最後はエリックのソロ。彼のソロは僕ももっと聴いておきたかったし皆にも聴いてもらいたかった。
息が飲み込まれるとはこのこと。最初から最後までロールだけ、そのいい音から無数の音と音楽が生まれる瞬間に立ち会う時間。


2部は4人全員で。
もうこれはありとあらゆるなんでもありというか、なんというか。
60オーバーの「大人気なさ」全開に開いた口がふさがらないがそれだけだと僕は演奏できない。
対抗することもなくいく自分が、年を食ったような気持ちになった。
しかし「帰れ〜」「お前こそ帰れ〜」って。爆発的掛け合い漫才。
最後はなんと全員が声だけになっていくという展開に。
ハナモゲラ、日本語、エリックの母語であるオランダ語(ベルギー北方はオランダ語圏)。
大きな長い拍手。
広くはない茶箱の空間がなにやら濃い空気に満たされていた。
それは音楽家たちだけが醸し出していたものではなかったと思う。
お客さんたちもお店の人達もあった何か。


この日は久しぶりに今まで作ったラジカセ録音で一本きりしか作らないライブテープを放出、
お金ではなく、飲み物を奢ってもらうことで賄う方式、ちょうど4本出たので、全員に飲み物がまわった。
坂田さんがいるとそこはいつでも宴会場の様相。梅津さんは車来場で飲めないのが残念。

終電近くまでわいわいと騒いで、お客さんたちも交えていい感じだった。
エリックとは駅でおわかれ、明日帰る彼だが見送りも要らない、なんて身軽な男。
この2週間は僕にとって10年分くらいの何かがあった。
けして何かが変わったのではない、いわばなにか掘り起こしたような、元々の何かに行き当たったような感じ。
ますます音楽することに、興味がわく。もはや楽しいとかそういう事じゃない感じがする。
感謝の念は言葉にはけしてならない。しかし、ありがとう、エリック。


大仕事だったライブや大変だったツアーの後の感慨というのが、ふっと湧いてこないこの感じも特別だ。
良い時間を過ごしたのだと思う。