ゲントへ バルト、ファンファーレ、vooruit

目覚ましより早く起きる癖はどこでも変りない。
ベルギーで早起きしなくてはいけないなんて稀。
からしっかりした朝食を食べて出かける。
MIDI駅から出てくる人は多いが乗る人はそんなに多くない。
ゲントまでの往復チケットを買って駅員に教えてもらった電車に乗る。
不安。ゲントに電車ではいったことがない。
世の中には鉄ちゃんという人達もいるが僕からは遠い。
知らない土地で間違えば全く違うところに行ってしまう不安。
計画をたてることも迷うことも全然楽しくないのは性格。
しかし乗りながらなんか違和感。
検札にこれゲント行く?ってきいたらやっぱりダメ。ああ。
車掌は乗り換えて行く経路の分をタダにしてくれた。有り難い。
メッヒェレンで少し乗り換え待ち。降りた途端に黒人男性から凄い訛りの英語で
なにか言われて気をつけて聞いたら彼も駅員の支持に従って乗りそこねたとのこと。
ブリュッセルまで戻った方が数分早いらしいけど、いいやと直通まで待つ。
今日も朝から快晴、駅の下からはとても良いパンの焼ける匂いがする。
最高だ。遅刻するのを除けば。


そこからゲント・セントピーター駅まで30分ほどの直通。
フランダースの田園風景が美しい。本も読まずに眺める。
駅についてからさあどうしようか、と思っていたら呼んでくれたバルトが車を横してくれた。
髭モジャ巨漢のWIM。青いバンに乗って登場。
今朝のプロジェクトの関係者でヘビメタバンドのベーシスト。
今朝はそのバンドの曲を別アレンジにして演奏するのが目的。
リハ会場は懐かしいvooruit。5年前に渋さで演奏した場所だ。
ものすごく立派な部屋に入るとすでにリハは始まっていた。
遅刻を詫びる時間もなく参加。楽譜が二枚。
音階は大して難しくないけどリズムが少々入り組んでる。
なんか久しぶりに譜面見たけどちゃんと読めてできて一安心。
サックス2トランペット2トロンボーン2tuba1にドラム1。
スーツでバッチリ決めた悪そうな中年男性が指揮してる。
彼とドラムはそのヘビメタバンドのメンバーらしく、あとはクラシック系の奏者たち。
さらっと演奏してまた車に乗り込んで移動。
駅との間にある公園は昨年クルワサンmeetsエリックティールマンスで
ジャズフェスに出た場所と全く同じ場所。
こちらでは公園にある天蓋付きの舞台をキオスクという。それ。
平日の昼間、日向ぼっこに来ている少数の人以外誰もおらず。
でもなんだかここで演奏するのはvooruitの企画だそうだ、謎。


円陣を組んで一度演奏。リハだと思ってたら本番だった。言ってよ!
で10分くらいの演奏でおしまい、え?これでいいの?楽すぎる…。


バルトはこのあと別の現場へ行く人のことでみんな解散し始めた。
vooruitに戻って事務手続きをしたらまた公園へ戻る。
途中でwimお薦めのサンドイッチをご馳走になる。
公園でビールと頂くルッコラとローストビーフサンド、うまい。
ついでにサラミも貰った。本物のサラミ久しぶりだ。


音の聞こえる方に足を向けると池の上にある滝でバルトが太鼓と何かしてる。
降りてきた太鼓は昨年共演した若手天才ドラマーのランドルだ。
再会を喜び色々話。今度政府の金で中国にソロしに行くらしい。
いいなあ、実力があるのはわかるけどそれだけでぽんとこういう話が進むのもベルギーらしい。たしかまだ22歳くらい。見た目はもっと若い。


バルトはまたすぐに次の用事にいくということで一旦別れ。
夕方からファンファーレ(ブラスバンド)に参加を誘われたのでそれまでひとり時間潰し。
公園を散歩してベンチで和む。
何もしないでただ目の前の風景を眺める時間。久しぶりだ。考え事もしない。

公園を出て街の中を散歩。ある程度道を覚えたのでvooruitまで。

中のカフェで珈琲。wifiもあって便利だ。
はじめにここに来たのは5年前のtime festival。
渋さの欧州旅中でこれが僕の初めてのベルギー来訪。
賄いでこのカフェでタイカレー食べて終演後は初めてベルギービール飲んで酔っ払ったっけ。
ベルギービールの銘柄も何一つ分からなかったし(多分ロシュフォールを貰ったと思う)
ああやってすれ違うだけの旅をしていたらベルギーのことは何にも分からなかっただろう。
そういえばあの時に見に来ていたというドラマーのジョアオと後にバンドをやることになったりして
人生というのはどう運ぶか全く予測がつかない。
足跡のあるところに戻ってくると、こういう事も起こる。
ゲントはブリュッセルの次によくライブさせてもらっている街だ。
カフェではひたすらボーッとしてた。そこにいる人たちの顔を見ているだけで飽きない。
ネットで見た日本のニュースも世界のニュースも心がいたくなるようなものばかりだったが
目の前にある光景は、明るい昼下がりに対話し珈琲やビールを飲み、煙草をくゆらせて楽しむ人々。
僕自身、日本に居る時と心持ちがかなり違う。
焦ることも義務感もなく、ただぼーっと出来る。
この時間、いいなあ。
つい気持ちが良くて募金に来た子供にお金をやってしまう。


約束の時間が近づいてきて次の場所へ移動。
koutelだっけ、有名な広場だからすぐわかると言われていってみると
最初に渋さ出来た時も散歩したあたりだ。それから何度か車で通っていて見覚えがある。
なにやら色々と催しがやっていて賑やか。
あちこちで焚き火をやっていて煙い。
バルトが今度はサンダル履きでチャリ乗ってきた。スーツにビニサン。
彼が参加しているVA FAN FAHREは管楽器にギター、アコーディオンが入ったバルカン風バンド。
ベルギーにはあちこちにファンファーレと言われるブラスバンドがいて
それぞれお祭りやいろいろな場で演奏している。
広場には四角いキオスクがあってそこが舞台。
メンバーはビールを飲みながら待っている。
ヘリコンバスという古いスタイルのtubaを持っている男性にヒルスブルナー(高い)tuba持ってる女性も。


複数のtuba吹きと演奏するの久々だ。
なんだかキオスクの前には焼けた炭が敷かれていてその上を皆が裸足で渡るイベントらしい。
日本の習慣だろう、といわれ、まあ密教の坊主だけど、といっておいた。
アレはたしか松の炭とかを使うと踏んだところだけ温度が冷めるんじゃなかったっけ。
それを前にして演奏。みんな結構平気で渡る。
演奏は変拍子も多く、まあキーは単純で予想もつくので追っかけて演奏していける。
久々にこういうので思いっきり楽器を鳴らしまくるのも楽しいなあ。
ソロも何度か渡される。そういえばこちらでもtubaでソロ吹く人は珍しい。
ゲントでなんどもライブをしているので僕がフロントに立っているのを皆が知っているのだろう。
思いっきり吹かせてもらう。


一度休憩してまた吹きまくり。最後には広場に降りて練り歩いて演奏も。

しっかしここは観光客が多いのか演奏後の拍手が極端にない。フランダースだから?
まあ楽しいからいい。ビールも屋台からガンガンやってくる。
終わってからもバルトと話。彼はゲント在住ベルギーでも最も忙しいラッパ吹き。

一日に三カ国をまたがって演奏していることもある。
良い音で楽器鳴らしてどんな演奏にも対応、というラッパ吹きはここでも希少らしい。
(サックス吹きはなんぼでもいる、さすがに発祥の地)
シンクオブワンやフラットアースソサエティなどの重要バンドにも参加。
重鎮だが腰が軽いというかこうやってどこでもなんでもやる。フットワークは極めて軽い。
演奏よりもその止まらない会話のほうが饒舌。以前はよくわからなかった英語も今はよくわかる。
なんだかやたらによくしてくれていて大感謝。彼と演奏するのはとても楽しい。
なんぼでも来るビール、夜9時を過ぎても強い日差しでちょっとくらくら。
9時半くらいにお暇、バルトとは日曜に再会する予定。

10時前でこれは明るすぎ。ここは5年前に泊まったホテルだ。

土地勘がつかめたので歩いて駅まで。もうこれで一人でゲントに演奏に来れそうだ。
小腹が減ったので駅前のスナックでドゥルムピタ買ったがベルギーらしくなくポテト入ってなかったしちょい高。
電車に飛び乗りあっという間にブリュッセルへ。


友人たちは近所で飲んでいるそうだけどさすがに早朝から動いてビール飲みまくり吹きまくりtuba担いで10kmは歩いた後、
さすがにヘビーで、〆に飯を軽く食ってシャワー浴びてまたしても早寝でコテン。