アントワープにライブ鑑賞

この日は走りまわった。
午後からは洗濯にでかける。この家には洗濯機はない。
初めていくコインランドリー、ここは珍しく現金投入型。
洗剤入れを開けると何故か洗剤が満杯入っている。これは水が流れない不良品なのいか
それとも前に使った人が余ったのを善意で恵んでくれているのか謎。
様子を見ようと思って蓋を開けたまま開始したら滝のように流れる勢い良い水が洗剤ごと吹き飛んできて
顔面直撃。誰もいなくてよかった。
洗濯中に食材の買出し。明日出張料理人するしその後のも。
気に入りの肉屋はやたらにかっこいい。鶏2kgと羊の肋肉1kg。どちらも泣けるほど安く新鮮。
アフリカ系食品店では少なくなった米を購入。前から気に入っていた少し高いバスマティライスが気になる。
店員から「その米はうまいぞ!」と英語で叫ばれる。このへんで英語喋れる移民は珍しい。
可愛らしい黄色い袋にも惹かれて購入。

総計20kg近くなってしまった荷物を持って帰宅。


今日は色々と予定に悩むオフ。
元元はたまに出演する近所の音楽バーbonnefooiのジャズライブとセッションに参加する予定だった、
ブリュッセル実力派のジャズマンたちがホストでほとんどみんな知ってる人、終わった後のジャムへの期待が
あちこちで高まっているのを感じる。
この感じは独特でこの小さな町の緊密なコミュニティでクチコミが猛烈に強いのを知らないと分からない。


ただ朝にfacebookで知ったエリックティールマンスの主催ライブが気になって仕方がない。
交通費もかかるし初めての場所で地理もよく分からない。でもこれはいかなければいけない気がする。
ここにいくことを決定して食事の準備。
今日から少し旅に出る同居人の独りファビエンも料理に夢中、彼女は正統フレンチを本見ながら作ってる。
僕はその横で実験料理。さっき買ってきた羊の肋肉、ニンニク、トマト、オリーブ、玉ねぎなどを圧力鍋に敷き詰め
弱火でとろとろと煮込む。
作業や洗濯片付けの最中に放置している間に出来上がるのが最高。
やっぱスーパーで買うのとは肉の質がぜんぜん違うなあ。最高ウマイ。羊ラブ。


食べたら急いでMIDI駅へ。アントワープ行きのチケットを買うと前に買ったよりもかなり高い、なんでや?
時期とか週末とかでしょっちゅう変わるんだよな料金が。
ダイアが乱れまくっていてうまく電車に乗れない。アントワープ行きだけに何かトラブルが起きているようだが
アナウンスがあいにくオランダ語とフランス語だけでいまいち分からない。北駅と南駅の間で何かある模様。

仕方が無いので掲示板の前で監視して待つ。結局予定していた列車が全部こずずいぶん遅れたのに乗る。
これが各停でどうしようもなく遅い。しかししょうがない。
到着した相変わらず巨大で壮麗で呆れるアントワープ駅を降りてエリックに聞いたトラムを探す。
が、時間は迫っているし待っとれんのでipodに落とした地図を頼りに走り始めた。
途中で一回不安になって犬の散歩している男に道の名前を聞くと正解。ここらはみんな英語喋れる。
さらに走る走る。街中からどんどん静かになっていく方へ。本当にあっているのか少し不安だがいくしかない。
なんとか到着。BAFF。中の男にここが会場か聞くとあたり。よかった。
聞くと招待リストには入っていなかった(後にエリックが忘れていたこと判明、結構忘れんぼ)7ユーロ。


安いもんだよ。んで中に入るとエリックが「アントワープで最も美しい演奏会場の一つ」というだけあって
ものすごく美しい劇場。作り物感はなくて落ち着いて美麗。
まだ始まったところだということで安心。
底にあるステージにはバスクラ/サックス奏者Lucioとエリックのデュオ。
静寂込みだがとてつもなく面白い音楽。
エリックは大太鼓を寝かせてその上で色々なオブジェクトを演奏しているがほとんどスティックは使っていない。
上に置いたものを弓で弾き指で叩きこする。金属のボールに入れたガラス玉を回しながら皮の上で滑らせたのとか凄い良い。

ルチオの方がまた凄くてバスクラに色々な筒を突っ込んでその上にさらに色々なものを重ねさらにその上に載せた物体が振動で音を奏でる。シリアスにして美しく笑いがこみ上げる。ある種の理想。
照明も控えめなステージに向かって息を飲んだ。素晴らしい。
続いてビール片手に登場した男がエレクトロセットされた机に向かう。

多分彼がパンソニックの独りであるミカだ。ケーブルがたくさん。小物を大量につないでいるが結構シンプル。
音はエレクトロともなんともつかない奇怪で楽しい音楽だった。これはソロ。
ここで休憩。バーにいくとここもいい雰囲気で独りでデコニンク飲んでいるとエリックもやってきた。
いいねここ、だろう?このスペースではエリックの友人のDJがこれまた冴えた選曲とミックス。
アフリカとテクノを混ぜるのですぐ彼とわかるサウンドだ。

休憩終わりにバーにあった鐘をエリックが盛大に鳴らす。皆で会場へ戻る。良い席をゲット。
セットチェンジされていて今度はルチオと告知されていなかった男とのデュオ。
この人はミキサーとサンプラー少しのエフェクターを机に設置。
ルチオの音は三本のマイクで集音されまずは彼自身がミキサーでコントロール出来、
さらにこれがもう一人の男に行っているようで、サンプリングとはまた違うアプローチで
イコライジングなどを中心に操作していて面白い。


ディレイとかサンプリングとか安易になりがちだもんな。
結構な大音量。プリペアド奏法もするがルチオはサックスのブローも強烈。
長く二人のセット、終りはルチオが引き出しのような形をした妙なオルガン(アコーディオンかも)で
ドローンを奏でもう一人がそれを音響操作するもの。終局にぴったり。
コンサートはこれで終り。素晴らしかった、来てよかった。


もう11時過ぎているので電車も気になり早めに帰ることに。
エリックに挨拶、彼の娘に次回は寿司を作るように約束する。
今度は地理がわかったので帰りはトラムを使って駅前まで戻り(4kmくらいあったので楽だ)
アントワープ駅にいくと電車が全然ない。結局終電まで1時間近くまた無くてはいけないので近所を散歩。

アントワープは本当にブリュッセルとは何もかも違う街だ。同じ国とは思えない。汚いオランダという印象。
表は古めかしく中は最先端なこの巨大な駅にほとんど人がいないと不気味だ。

無事に終電に乗りこれがまた各停で遅く、もし早く着いたらbonnefooiのセッションに行こうと思ってたけど
こりゃ無理だな。疲れも激しい。しかし顔出しておこうと思いブリュッセル中央駅で降りたのが1時半。
店まで歩いていくとちょうどジャムが終わったところらしい。知った顔多数。挨拶。
ジャムはどうだった?というと最高!という人と、別に〜という人と。どちらかというと後者を信じる。
ブリュッセルでは実はあんまりフリーインプロヴィゼイションと出会わない。
印象としてはもっとジャズ寄りで古風。たまにジャズ寄りのインプロは飽きる。もっと自由を感じたい。
お前どこ行ってたんだ待ってたのに!と皆に言われアントワープのライブのことを説明。
ジョヴァンニが嘆く、アントワープブリュッセルには交流がなさすぎてお互いのことを何も知らない!と。
そうだなあ、でも僕はアウトサイダーで今では自分でこの国の音楽情報を探し出せるようになったから
自由に行き来する。日本人の僕からすれば1時間かからずに行ける大阪京都間の感覚。
なぜみな足を運ばないのか不思議だ。お互いに魅力はたくさんあるのに。
店のスタッフが僕を見かけてビールおごってくれた。こないだ逃したレフのクリスマススペシャル。
もちろんうまいが普通のでもいいや、って感じ。ノエル限定は砂糖が多いと思う。
空気も悪く眠いのでジョヴァンニとジョルディと途中まで歩いて別れて帰宅。モロッコ屋の匂いが誘惑だった。

Mika Vainio (1/2 Pan Sonic), Lucio Capece, fyoelk ,eric