radio camus/KuRuWaSan@goute a pepe

朝は早起きしてしっかり朝ごはん。鶏キノコ煮込みと白米。最近すっかりアジア食。
昼間は急遽ラジオに出演してきた。
来日経験もあるチリ人写真家ミレーナの推薦で。
昼前に待ち合わせして電車とバスを乗り継いでブリュッセルの大学へ。
構内にラジオ局があるのはそう珍しいことではない。
以前リエージュのキャンパスラジオに出演したことがある。
学校が出資しているけど運営は独立していたりする。

ついて担当者と話。とりあえず英語のインタビューとtubaの演奏を二つ。
英語インタビューは緊張する。そんなにうまくないし、公共の電波に流れるので。
質問の流れが面白かった。
名前を紹介されたあとに言われた


「あなたはとてもたくさんのライブを毎日やっているけどどうやってライブしているの?
この町でライブをやりたがっている音楽家はたくさんいるけど みんなが出来るわけではないのに、なぜ?」


「ここには多くの友達がいて、みんなが色々なライブを持ってきてくれます。
僕は旅先では選ぶということをせず、僕を連れていこうとする人と一緒にそこにいくだけですよ」
みたいな。


二言目に言われたのは「で、ここに住む気は?」
これは日本語でも説明するのが難しいが、毎日のように誰かから聞かれるのでこう答える。

「いつか、かもね、でも日本にも大事なものが沢山あって、僕はこうやって行ったり来たりするよ、当分は」

みんな帰らないで、とは言わない(たまにいるけど、野郎どもが)。
なぜ帰るの?とはいう。こんなにあなたには道があるのに。
うーん。ここに居ると楽だ。しかし日本でもしたいのよ。
とにかく何にもかにも、自分にさえも拘束されたくないの。
自由意志でそこにいたいのよ。

演奏は4分前後、好きにやってと言われてtuba吹く即興とtuba笛の即興演奏。
tubaは敏感なラジオ用マイクでとると物凄い倍音が録音されてえらいことになった。
ディジュリドゥ吹くでしょ?と言われたけど吹けません、全くもって。
会話挟んで次は管を全部外してtuba笛奏法。
はじめにtubaの音は全くしませんよ、といっておかないといかん。
聞いたDJさんは「私は尺八の音が大好きなのよ」といっていた。


お昼間の校内放送と市内に鳴り響いた謎の音とドヘタクソで訳の解らん英語は
どのように伝わっただろうか。
ライブやCDの宣伝(明日のレコ発)、自分の公式HPの宣伝までしてくれた。
クチコミだけで絶大な効果を持つこの街で、ラジオはどこまで届き広がるだろう。


生放送終了後(そう、生だったのだ)担当者から次は1時間自由に何をやっても良い時間と
マイクを渡すので考えておいてくれ、とのこと。ひょえええ。
うひゃひゃ、なにやろう。バンド作ってライブしようと思う。


帰り際にミレーナにお礼を言う。
彼女は別に個々の職員でも何でもなくてただ知り合いがいて、ここ関係の展示もしている、
そんだけの関係でいきなり前日のプッシュで生放送に出演させてくれた。
でもどうして?と聞いたら、たった一言。
「あなた、グレートだから」
聞いてても恥ずかしいが、本当にグレートなのは、僕をグレートといい
善意で責任をもってラジオ局に出演させた、ミレーナ、あなただよ。


ここでは良いと思ったものを見たり聞いた人は、ただ受け取るだけじゃなく
なんとかほかの人にそれを知らせたい、届けたい、と思うのが人情らしい。
彼女だけじゃない、そのおかげで僕の音楽生活はどれほど広がってきたか。
見返りも裏も何もない、底の抜けた明るい感情。


ミレーナの言葉はよく覚えている。
この街での芸術の扱い方の大きさ(貧しい人もそれを欲しがるという現実)に驚く僕に
「だって音楽も美術も、アートはパンと同様に人々にとって必要なものでしょう
 それなしで人は生きていけないじゃないの、当然よ」
これを聞いただけで感動したものだ。

(ちなみに僕のアーティスト写真は主に彼女の撮影のものです)

ああ、面白かった。
今晩のライブも楽しみ。


ラジオ出演終わって楽器をパクヤンちに預けて一人でぶらぶら。
街はセール時期で目に毒だからなるべく店には入らない。
しかし時間つぶしに入った中古専門おばちゃんブティックが…。ヤバイ。
2年以上前にここの投げ売りでバッファローの革パンを3ユーロでゲットした。気持ち300円。

靴コーナーで目がつぶれる。あかん、全部欲しい。しかもサイズがほとんどワシサイズ
(28cm前後)
レジのおばちゃんがイエスも言えないくらい英語が分からない。
これだと僕のダメダメフランス語でもいいわ。
値段聞くと信じがたい安さ。耳を疑うがこちらは数くらいはフランス語でもわかる。
(ちなみにフランスとベルギーでは同じフランス語でも微妙に数の数え方が違う)

ああ、20年近く前から買おうか買おまいか悩んでいたドクターマーティンの8ホール。
まったく新品やんこれ。
そんでもってイタリアの超隠れた優秀メーカーstoneflyのゴアテックス衝撃吸収靴。
これなんてタグ付きの新品やんけ。
どちらも15ユーロ。うそやろ。1足2万円いじょうするでこれ。
しかもぴったりだ。これはあかん。ゲット。


僕は靴と鞄が大好きで、鞄に関してはちょっと病気かと思う。
どちらも好みはほとんど一貫している。
丈夫で長持ちし、防水性や耐久性に優れていて質実剛健なもの。
靴と鞄が僕に意味するものは、旅であり移動だ。
より身軽になるための道具。
なんども書くけど旅は好きではない。
でも一人で拘束されずにどこにでも行ける準備は好きだ、わくわくする。
実際に僕は自分でもこの先どこにいくか分からない気持ちを持っている。
旅は嫌いだけど旅出来るのは好きだ。
旅人にはなりたくない。そこの人になりたい。

    1. +


夜はパクヤンちに集合して彼女の車で会場へ。グレッグはこういう時に絶対遅刻する。
ブリュッセル出身の人間であるほど時間にルーズ。
goute a pepeはよく出るmurmureの姉妹店。gougouteだっけ、名物の飲み物があって大きなガラスのビンに
生姜漬けのラムとウォトカがどーんとあってこれが安くてうまい。
そういえばこの店は今日ラジオ出演した大学からも近い。さてどのくらい反響があるだろうか。
セッティングしてると演奏時間が10時半までに限定されていることを知る。もうすぐ9時。
やばい、いそがなくては。とはいえ僕はやることないが。


目の前の大テーブルにいる若者の集団は音楽には全く興味のないタイプのようで宴会モードでウルサイが
まあこちらではこういう事はよくあるというか大抵ある。気にしないで開始。
聞きたい客は少し遠巻きにカウンター付近に集結している。
今日はグレッグの音が聴きやすい、おかげでより良いコミュニケーションが取れる。
奥まっていたジョアオは少しやりにくそうだがそれでも彼のプレイはいつだって良い。
パクヤンはこないだのライブ後に話したのが効いたのか反応がいつもより良い。
なので好き勝手演奏させてもらった。楽しいなあ。汗かき。
ちょうど10時半前に終了。大受



ちょうど終わる前くらいにものすごい勢いで客が増えた。普通はこの時間くらいまでバリバリやってるもんね。
終わってからドサドサとやってきた友人たちも多い。まあ乾杯。
明日はクラッピーミニバンドのレコ発ライブイベントでチラシを各テーブルに配る。
そこに初対面のミュージシャンがいて面白かったから君と演奏したい、とオファー。ありがたや。
もう満員電車状態のグッチャグチャの中で乾杯して回遊。
ジンジャーウォトカもラムもうまいなあ。チェイサーにベルジャンビアを数種類。
ちょっと酔っ払った。楽しい夜。
ミレーナも遅くに来て今日の録音ファイルと写真を届けてくれた。
明日が皆早く多忙でありジョアオは明日からイタリアに数日出かけるので我らにしては早めに退散。
ジョアオはパーティーモードに突入していたけど目が覚めて、明日からツアー思い出してた。
いつもの場所で落として貰って最近の中では早寝。