クラッピー、レジデンスレコーディング、hamiet buluiett&kahil

起きたら暖かい、というか暑くて目が覚める。ここはルラとアンジェルの家。
暖房が快適すぎてそして前の家に慣れすぎてる。Tシャツ一丁で平気だ。
今日からクラッピーミニバンドのレジデンス&レコーディング@ピアノファブリックという公共の場所で。
これから毎朝の出勤。他の人達のセッティングに合わせて遅めにいくことにしたがそれでも僕は2番手。
二人のエンジニアと相談してゆっくりセッティング。とにかくゆっくり。
僕なんてたまマイク立てるだけなのであっという間。リンは複雑ながらいつも早い。
パクヤンはいつもノイズの問題に悩まされる、彼女は3時間くらいかかった。
その間僕は練習したり食料の買出しにいったりお茶したり食べたり。
6,7時間の間で僕の仕事は殆どなかった。
フランスから到着の打楽器奏者マチューと初対面挨拶、彼はベースドラムだけを中心とした奏者で
前から評判は聴いている、一発で分るナイスガイ、いきなり仲良し。
さらに遅れてニコがバルセロナから帰ってきてすぐに駆けつけた。挨拶だけして彼のセッティングに任し
本日は終了。退散、



いちど家に戻りちょっと落ち着く。ご飯でも作ろうかとおもったらルラが夕食用意してくれた。
白米と魚のテリーヌ、チコリとりんごのサラダ、インゲンとブロッコリーのサラダ。
僕は赤ワインを持ち込み乾杯。
テリーヌってこっちに来てから食べるようになったけど、おいしいなあ。
ルラは非常なる美人で女優、あんまり英語が出きなくていつも僕に謝るのだが、頼むから謝らないでください。
(後で聞いたら、よく謝るのはフラミッシュの習慣らしい)
平田オリザと演劇のコラボをした話、日本とこちらでの芸術の捉え方の違いなど、会話と食事を楽しむ。
アンジェルは僕が来るとお気に入りのボリショイズのCDをかけてくれる。パンクキッズだ。


美味しく食事をいただいてまたでかける、まずはパクヤンちの前で集まってグレッグのパパの家、
正確にはパパがその恋人でハーピストのマリアのために建ててあげた豪華な家。
入ったら中では思いがけずグレッグの兄のイヴァンが弾き語りシャンソンライブをしていた。
ひとしきりライブを見て、この後のジャムセッションは辞退してみんなで次へ。
今晩特別なライブが有ることを昼間に知ったのだ。
ハミエットブルイットとカヒルエルザヴァルのデュオ。うわお。
ハミエットはワールドサクソフォンカルテット、チャールズミンガス、マーヴィン・ゲイスティーヴィー・ワンダーらと共演している有名なベテランバリトンサックス奏者、
ヒルはたぶんみんな知らないがシカゴ出身でヘリテイジアンサンブルのCDは今でも愛聴盤だ。
トロンボーンのジョーボーイ目当てで買ったがこの打楽器奏者の演奏は強烈だった。
歩いていると偶然ダニエレの車が通りかかり小型車に6人乗り込んで店へ。
噂のお洒落カフェ、客も満員、ミュージシャンの顔も非常に多い。
なんていったってこのメンツのライブが無料!これがブリュッセルだ。
開演予定時間からものすごい押すのもここならでは。ビール片手にいろいろな人達と挨拶。
前の瞬間同居人ソフィエンもフランスから帰ってきている。


かなり待ってライブが始まる。なるべく前に行く。ほとんどカヒルの目の前。
彼のアンプリファイドされたカリンバがいきなり強烈、ただのアフリカ風とも違いオリジナル、
しかも彼はこのライブ中ずっと歌いながら演奏していた、この歌声がまた強力。

ハミエットはフルートから始まる、音色と音量に驚く。このひと70超えてるんじゃないの?
スタンドに立てたバリサクから出てくる音もこちらで耳慣れた耳障りの良い綺麗なサックスの音じゃなくて
もうなんか突き刺さるような、それでいてノイジーじゃない独特な音。
ヒルはもうブレーキの壊れた機関車のようにグルーブしまくる。
フリーミュージックの自由さにどこかから土の匂い、ゴスペルのような高揚感。
ハミエットは結構休んでてカヒルは全く止まらない。とにかくぐいぐい引っ張って載せていく。
ドラム叩きながらも歌いまくり、ソナーのドラムが暴力的なくらい鳴りまくる。
後半はお客も歌いっぱなし、このノリの良さも最高。



休憩挟んでたっぷり2部。途中で多忙と睡眠不足とトランシーな音で頭がくらくらしてきた。
もう限界、というところまで聞いたのがなんとマイルスのオールドブルース、カリンバとバリサクのデュオ。
ヒルのエネルギーは20年前に聞いたレコードと変わっていない、というかもっとパワーアップしていた。驚異。
ぶっ倒れそうになるまで音楽を聞いたなあ、今年聞いたライブの中で最も楽しかった。
変な音楽とかなんとか、いつもどうでもよくて、こういう強くて美しい音楽にはシンプルに感動する。
ワタンベは大喜びでカヒルを「黒いフレディ・マーキュリー」なんていう。言い得て妙。
雪の中ふらふらと家まで歩いて帰る。バタンキュー。