eric,nada,craig,daysuke@L’auchiduc bxl

朝起きてぐだらぐだら。
そういえば今日は日曜なので近所の市場が良い日だ。
延び延びになっている引越しのタイミングを計って行ってなかったが、機を見て走る。
何とか昼に間にあう。


なじみの八百屋。
ここにベルギー人の嫌いな食べ物がある。
メキャベツ。
なにせこれは、la chou de Bruxelles というくらいで
シューですから「ブリュッセルのキャベツ」という名前がついているくらいでここ原産だそう。
どこでも売っているし安い、1kg1ユーロくらいじゃないかな。
これがまたみんな声をそろえて「嫌い」「好きじゃない」という。


家人グレッグに聞いたら
「子供のころからいつも食卓にあったがおいしいと思ったことはないし、自分で料理したこともない」
そうで、これだけ自炊する人でも、と驚き。
とにかく好きだという人にあったことがないんだが、僕は好きだ。
ねっとりとした食感も少し土の味がするのも。


この野菜には思い出がある。
小学校に行くか行かないかのころ、祖父母と畑をやっていたときに作っていた。
キャベツ類は大変なんだ。おいしいから無視もたくさんつく。
よく青虫を手で取っては缶に入れた。寒い中収穫も大変だったけど
これは良い思い出だ。


あとこちらでよくきくのは
「キャベツは食べると太るよ」ということ。
そんなのきいたことない。
たしかに栄養価は高いけど肉よりましだよ。
たぶん昔の田舎の人が太っていたのを、これのせいにしたんじゃないかな。


4キロくらいあるかな、というので3ユーロ、日曜に立つ市場買ってきた。
ここに来たときからお気に入りの八百屋だ。
ぶっきらぼうな爺さんやおっさんたち。
かごに山盛りのマッシュルーム3ユーロ(食べるのに1週間くらいかかる)が目当て。
もうそろそろ金がアウトなので、当分これで乗り切るのだ。


帰ったらグレッグはやはりメキャベツの山を見てげんなりしている。いいよ食わなくて。
アジア進歩趣味の彼だがなんだかんだいって保守的だなあ。
上階からグレッグの兄弟イヴァン(そういえばこちらでは兄か弟か言わない)とその娘ごがやってきて騒いでいる。
天使のようにかわいい。こちらに来ると子供たちのかわいさに目が留まる。


メキャベツとマッシュルームを煮込んでおいて、トマトと生マッシュサラダにパンで軽い食事して出かける。


夕方からエリックとナダとクレイグと僕のライブ@auciduc
ここは老舗アールヌーヴォー内装のバーで、スノッブで知られる場所。
エントランスは中から確認された客しか入れない。(ちょっといけすかん)
ドレスコードなどないだろうが、あるとことなので、一番きれいな格好をしていく。
したら、エリック、ほとんど寝巻き同然だった。損した。
そうだよな、魂が高潔なら服なんかどうでも良い。
(まあ僕の場合はコスプレを楽しんだみたいなものだが)


その前に到着に迷う。だいたいの場所は覚えていて、前に一度車でつれられてきたことがあるのだが。
このバーには苦い思い出がある。
一昨年ライブの後に友人に連れられて、無理やり楽器を吹かされた。
友人は良かれと(daysukeの才能を皆に知らせなくては!とかなんとか)思って
店を説き伏せてのことだったが、さっぱり身が入らんで、途中でやめて 楽器もって逃げ出した。
二日間くらい土下座状態で謝られたなあ。
なので記憶から抹消しかかっている。


日曜でサンニコラの日が近い中心街はまあまあの人ごみ。
聞く人聞く人超有名店のはずのアシュデュクを知らん。英語しゃべれないし。
ipodのフランス語超初級講座アプリ、入れておいてよかった。
数と質問くらいは出来た。
やっと教えてもらうとそれが間違っていて全然つかん。
電話のクレジットはきれかけでアウト。焦る。
何とか記憶をたどり寄せて到着。今度からはもっと確実に。

入ろうとすると入り口がやはり開かない。ブザーを押して店員を呼ぶ。
エリックたちはまだセッティング中で何とかセーフ。
スタッフは好意的だ。
ナダと僕のためにマイクも立ててくれるがPAはなくエリックのアンプに突っ込む。
ほどなくして開始。



あー、もうわけわからんこのカルテット。
ナダは浪々と歌うように出自不明の美しいメロディーを吹くし
(こういう風に吹く人はむしろ日本人に多い、ベルギー人サックスは複雑で細かい)
エリックは何が起こってもどこ吹く風、やばいくらいにマイペース。
で、クレイグ、ベルギーで一番有名なロックバンドの元ギタリスト、
いってることもやってることもこの人が一番わけ分からん。
別にわけの分からんプレイをしているのではない。
ハードコアに轟音鳴らしたかと思えばギターを自動演奏状態にして休むし、
ロックに決めてるなあ、と思ったら急にウクレレでアホアホで牧歌的なの弾くし。
顔怖いし。
つかみ所なさ過ぎるぞ、あんたら。
2部は全員の音量も上がってこのくらいのエナジーのほうが一体感があってよい。
(必ずしもあるほうがよいわけではないけど)。
2部の最後の決めたような終わり方は良かったと思う。


気持ちよく終了。
ラムをがつっともらい、オルヴァルで洗い流す。贅沢。

荷物を奥のコリドーに置かせてもらって食事に行く。
このへんはアジア料理屋が多くてみなでタイ料理屋へ。
フランス語と英語のメニューを見るが、図が思い浮かばん!
タイ語の音がほしくなる。
と思ったらみんなコースにするのでそれに倣う。トムヤムクン欲しいし。
最初はスープ、次に第一の皿僕は鳥の串焼き、第二の皿牛肉ココナッツカレー。
悪くはないけどボリュームが少ない。パンチに欠けるマイルドさ。
これくらいが欧州人にはちょうどよいのだろう。クレイグのガールフレンドらしく女性は
辛い辛すぎると残していたが、分けてもらったら日本のマーボードーフほども辛くない。
ああ、船橋のジェーンに行きたい。
それでも珈琲やお茶も飲んでゆっくりのんびりしてひとり25ユーロ、今回でもちろん一番高い食事だが
それほど割高感はない。ひとりじゃ絶対来ないけど。


食事の最中には来年からの予定などもたくさん話す。
これから彼らとはいろいろなことをしそうだ。
店に戻り荷物の積み出しをして(店は通常通りのスノッブ全開な店に戻っていた)
車に積み込み、別れの挨拶をして僕は一人さらに街を歩く。
近所のroskamという店でジャズライブをやっているんだ。
知らないバンドだけど地元のバンドだし近いしこの店でいいライブしたことあるし。

店内の人ごみを掻き分けビール(トリプル・カルメリット)頼んで飲んでいると
おろし忘れた背中のtubaが少し重くなる。なんだ?
髪を切ったジョアオが笑ってた。挨拶。
ライブどうだった?
いやあへんてこでグレイトだったよ、
そうかあ、エリックはマイフェイヴァリットで行きたかったけど、
携帯なくして車壊れて身動きが取れなかったんだ、とのこと。


しばしライブ鑑賞。サックスとベース、ドラムのトリオ。
もちろんのようにうまい。なんだけど燃えないんだよなあ。
なんだかこういう「典型的なベルギーのジャズバンド」の姿が見えてきた。
楽曲はかなり複雑、メロディーラインは半音階と跳躍進行で難解(というか歌えない)、
ベースとドラムは迷宮のように絡み合うアクセントだけがびしっと合うんだが、
ベースはノーグルーブでいかにも「エレクトリック・ベース・ギター」である。
アコースティックだからいいものの、これがエレキだったら退屈なフュージョン
ジョアオも同意見。
なぜかこのタイプのバンドが多い理由は後で分かったのだが、ある有名なジャズバンドがこのスタイルで成功して
みんなそのフォロワーになってしまったらしい。なるほど、あれだ。


途中ですっかり飽きたので一番後ろの席に行くと、われ等がブリュッセルラテン精鋭部隊の
ノロアゴウスト、遅れてジョルディとダニエレもやってきて合流。
乾杯して英語の会話ですっかり盛り上がる。
しかし誰も待ち合わせなんてしてなかったでしょ?
皆が音楽のある場所に自然に集まってくる、好きな音楽、興味のある音楽がある場に集まるから
友人になっていく。この感じ、素敵だ。
エリックたちとの英語の会話は僕の語学力の限界を超える時が多くてちょっと大変なのだが、
語学力の問題ではなく、なぜか彼らとのコミュニケーションはもう少し楽だ、
これはいい悪いではない。質の問題。
退屈な音楽の悪口飛ばして(それでも彼らは紳士的だ)音楽への情熱と愛を真っ向から話し合う。
隙間にはかわいい女の子のこと、良いパーティー、日々の暮らし、信条と隣接する今の立ち居地など
どんどんと展開していく会話はまさにインプロ。
本当に皆良く話すよ。


そして皆好きなときにやってきて好きなときに去っていく。
つきあいがあるから、とかくだらないことは言わない。
一緒に居る時間を愛し、また次を楽しむ。
この感じ、これと音楽があるからここらの暮らしはたまらない。

僕もライブの疲れと酔いのタイミング計ってひとりで退出。
友人たち皆に挨拶。すぐ会おうな、というのを忘れずに。
たくさんの音楽と、友人たち。
帰り道は終電も終わっていたけどtuba担いで徒歩30分強、楽しくて仕方がなかった。