eric,nada,craig,daysuke@atelier claus

今朝も朝からマテ。

正式なポットがどうしても大きすぎるので空き瓶で代用。
これで十分。
グレッグに楽器修理持ち込み代行を頼んでいた女性が朝もはよから引き取りに来た。
グレッグのパパがまた鷹揚な笑顔とともにやってきた。
ここでこぼれ話アリ
いや、こぼれたてたら、今頃死んでる。
日記に書いた昨日の恐怖の高所作業。
後日談アリ。


助手できていたポーランド人のおいちゃんマレックはグレッグのパパのサポートを
長年続けている働き者。文句ひとつ言わず朝早くから夜遅くまで超人の手伝いをしてきた。


しかし、昨日の作業はさすがに恐怖だったらしい。
彼らは絶対にやぐらの上に上らなかった。あんなものに上がるの狂気の沙汰だと。
僕とグレッグ父子が必死で作業している間ずっと「アタンシオン!」と叫び続けていた。


昨晩は家に帰ってからも引き続く恐怖のあまり、一睡もすることで出来なかったらしい。
やってる僕らはたまに笑いながら(ひきつってたけど)やってたけど
はたからみてりゃ、とんでもない状況だったんだなあ、やっぱ。


朝早く、にこやかな笑顔でやってきたパパ、
「おお、君の体、壊れてない?」だって。
お父さん、あなたもう60でしょう(見た目より若かった)
しかも片足がこの50年もないんでしょ?
僕はあなたがもしバランス崩したら、と思って、いつも片手を身構えてたのよ〜ん。
だって、足場がないとこまでいっちゃうんだもの、パパ。
確かに見ているだけで、凍りついた。
うわ、思い出してきた。


グレッグいわく「今まで手伝った作業の中でもっとも危険だった」とのこと。
あのデカイ鉄枠以外の部品をすべて調達し運び、組み上げる片足パパ。
やっぱ超人です。
こんなこと、何十年もしているんだってさ。
これがまた、笑顔が最高なんだ。


+++


そういえばこの作業で裂けたズボンの代わりを買いに行かなくてはいけない。
食料の買い物もかねて出かける。運が良いことに雨はやんでいた。
(書いてないけどここの天気は基本的に雨だと思ってください)
なじみの古着屋のあたりを巡ると結構閉まっている。
ええと今日は金曜か、そういえばこのあたりはアラブ系の商店が多い。
何か関係があるんかな?こないだ極普通のきれいな格好の頭巾かぶった若いお嬢さん(たぶん学生)
がスーパーの前で友達としゃべくりながら物乞いしてたなあ。
数少ない空いている店でめぼしは着ける。できれば非常に安く抑えたい。
明日以降に空いている店にも期待。なにせもう1本しかないのだ。


夕方からは家にいてなんだかんだ。
途中ギョームがやってくる。
なんだか心配なやつだ。
グレッグは食事の準備をしているが僕はライブ前に食事に誘われているんでパス。
イカ墨ねりこんであるボロネーズパスタはうまそうなのだけれども。


8時の待ち合わせにアトリエクラウスにいったら、スタッフ以外はまだ誰もいなかった。
ちょっと上で水を飲んでウォームアップ。
今日の即興演奏の前にアップをしたものかどうか考えていた。
口の状態を最高の状態にするとコントロールはきくのだが、それまでだ。
予想外の音は出にくくなるし、コントロールできたところで何?と思う。
ものすごい微音のロングトーンにとどめておく。


そのうちエリック、ナダがやってきたので急いで食事へ。
PAの女性やエリックの友人たちも交えて(と思ったら出演者やDJでもあった)。
はじめていくここらにありがちな欧州料理屋。
予約されていた席に座って、何があるかたずねる。
肉は一通り、白身魚もお勧めだということだ。
僕はなんとなく食べたかった鶏を選択、みんなは牛ステーキなどいろいろ。

ボリュームすごい。この僕でもポテトは食べ残した。
エリックもナダも英語がちょっと流暢過ぎてついていくのに結構大変。
しかしリラックスした会話で非常に心地よい。
ちょこちょこと来年の日本ツアーの話もする。
酒は飲まなかったものの、きっちりエスプレッソで〆て終了。
あわてて会場に戻る。
(全員の食事は会場持ちだ)


開演予告時間から30分過ぎてもまだ人はまばらで開始は余裕。
結局始まったのは1時間近く押した10時ころだった。
最初は僕のソロから。スポットライトの当たった椅子の下で生音。
この会場の響きを生かした超高音と低音の微音。
次はギターのクレイグとエリックのデュオ。

クレイグはロック系演奏家らしい感じがした(後で調べたら有名ロックバンドDEUSの元ギタリストだった)
アンプは両サイドにひとつずつ。
リハのときとは違って結構いい感じ。ロックっぽいことやられると僕は飽きることがある。
この次はナダと僕のデュオ、という話だったんだが、途中で階上からナダがサックス吹きながら
ステージに上がってきた。うーんやるなあ、掟破りですか。
そのままトリオを少し見て僕も入る。約束無茶苦茶。
ギターが結構でかいのでやれることは限られているがいろいろと。
久々の風船も。

エリックの音は非常に気持ちが良い。しかも見ていても気持ちが良い。
思わず、これはトランスだ!とか思う。いわゆるテクノのでも民族音楽のでもないけど。
あの完全な集中と覚醒っぷりはなんだ。のめりこんで熱くなっているのでもなく
醒めた目線で計算して狙っているのでもない。野生動物のような覚醒状態。
やはり、すごい魅力だ。
あっという間に1時間が過ぎて終了。


次は階上で二日前に見たインスタレーションライブ。
勝手は分かっていたので座布団を上着でくるんで枕にして寝転ぶ。
音に集中。演奏の素材は前回と似た組み合わせになっているのが分かるが、
出てくる順番がまったく違う。
今回はちょうどエリックの巨大なバスドラムの前に寝転んだので
その低音の響きが非常に気持ちよかった。またしてもあっという間に終わった感じ。


階下に降りてビールタイム。
もうここのビールはあらかた飲んだのだが、飲んでないストロングなやつを頼む。
全部アルティザナル、職人ビールといわれる芸術品だ。
しかもブリュッセルで作っているものばかり。贅沢。
出演者はもちろん無料で飲めるが、払っても2,5ユーロ。安いなあ。


この日は集中力を過剰に使ったからか、それとも昨日の高所作業の疲れが出たのか、
体が重くて重くて仕方がなかった。小さなかばんひとつ持っても重いと感じる。
友人であまりに集中すると知恵熱が出るドラマーがいるが、僕は頭がわるいせいか体に来る。
ここに職人ビールのすごさがさらにずしんと。


くらくらだがエリックたちとの会話は非常に楽しい。
ブリュッセルのミュージシャンたちは非常に小さなコミュニティで仲良くやっていて、
少しだけ大阪の感じに似ているかもしれない。
実はここ出身のエリックはアントワープに移って長い。
きちんと仕事をするならアントワープ、といわれたこともある。
彼らからは何か強い個人的な心情や哲学のようなものを感じる。
どうもなにか秘密がありそうでならない。あくまで自然なのだが。


膨大な機材の積み下ろしを手伝って、エリックの友人のDJを聞いているとこの選曲というか、すごい。
ocoraのブルンディの大好きなレコードやピグミー、東南アジア、邦楽などと欧州のテクノやシンセものなどを同時がけしたり、違う国の音楽を同時がけしているのだが、まるで共演しているような
素晴らしいセレクト。たまらんたのしい。いちいち何の曲か聴いてしまう。
しかしもう疲れピークで挨拶も済ませて帰ろうとすると、何とかかったのはローランドカークの溢れ出る涙!
あんた超能力者か!当然戻ってひとしきり踊ってから退出。
へろへろのふらふらだが、幸せだ。
うれしいことに日曜のライブにも誘われた。これはとてもうれしい。
やっぱここにきてよかったと思った夜。