リハ、エリックのライブ鑑賞

おお、雨が降ってない!久々の曇りだ!
全然うれしくない・・・。
もういいんです、ベルギーの天気は。
期待するだけ無駄、っていう代名詞にします。


そういえば「女心と秋の空」っていったら怪訝な顔されたな。
そりゃそうだ、こんな女、嫌だ。男だって嫌だ。


ここのところビールづいてるんですが、
とにかく今回の滞在ではそれほど飲んでない。
いい休肝日続きです。
もったいない!といわれますが、もうそんな気持ちもなく。
日本だと高いけど、ここだとへたすりゃ水より安いもん。


よそで書いたが、大阪だと毎日のように食ってた魚も、
大好きな日本酒もここでは飲まない。
実は結構いいのが飲み食いは出来るんだけど、もちろん高い。
なんでここまできて和食を食う?
なんで日本でベルギービール飲むの?
流行?旬?ファック、旬ってのは終わりがあることだ。
16世紀からのものづくりを引き継いでいるようなベルジャンビアをそんな扱いできるか。
そういう腐った情報が身の回りにないというだけで、
こちらにいると心穏やかです。


午前10時からトランスフォーメーションのリハ。
やっぱ民俗民族音楽を素でやることの抵抗感があり、それを言う。
グレッグがっくし。しかしいいたいこといっておかないと良いバンドにはならん。
昼食はまた巨大タジンで。
みんなで食ってビール飲んで、リハ再開。
 

いろいろと思うところあるが、ハディとオリヴィエの打楽器のコンビは楽しい。
ハディはモロッコ人で基本はジェンベ奏者、カルカバもダルブッカもなんでもござれ。
リズムに歌があるというか、なにかがまったく違う、素晴らしい奏者。
ブラックアフリカ系のジェンベ奏者と違うのは、やはりモロッコのリズムが染み付いているからか
ものすごい特殊なうねりと粘り。
オリヴィエは今回から参加、たぶんベルジャン、マリの両面太鼓と指輪で叩くベルが基本。
いろいろとアイデアを持っていて二人でどんどんリズムを発展させていく。
説得力あるなあ。
とりあえずナチュラルで複雑で割り切れないリズムの組み合わせは楽しい。


なんだかんだいったが、なんか面白く出来そう。
ただいくつかの曲が難しい、いまだに体の中に入ってこない。
2曲くらい拍の頭がどこかも、実はさだかではないのがある。
というか数えないでも演奏は出来るのだが、演奏しながらアレンジしていくので
元に戻れないときがヤバイ。
エチオピアの昔の曲なんて、メロディーは何年かかっても覚えれそうにない。
これらの何がなんだか分からん曲が、なかなか面白い。


さあて、夜は「類まれなる錬金術師」と称されるエリックティールマンスの特別ライブを鑑賞。
やっぱライブ見るのはいいですよ。
友達のライブばっかり見に行ってちゃだめよね。


9時開演ってもまあそのまま始まることはなかろうと、9時10分に会場へ。
入り口には久々に会うヴィオレーヌがいた。ありがたいことにエリックの招待を受けていた。
8ユーロはこちらにしては高額なほうだ。
中に入ると映像が投影されていて、ここでやるかかと待っているとオーナー・フランツの叫びで2階へ移動。


前から何度も書いているがベルギーの最高峰ドラマー、eric thielmans
彼のプロジェクトのライブ、いまブリュッセルで行われている映像フェスの関連イベント。
場所は馴染みのアトリエクラウス。家から歩いて5分。


映像担当の女性と、アメリカ人のファニーなサックス奏者nadaとトリオ。
客はトリオを背にしてすでに絵がかかれた壁に向かって座る。
絵は、良くここらにある路上の描き殴りに近い、ストリートドローイング。
そこにぼんやりと人の顔が投影される。
ミュージシャンが見えない、どんな音がするか視覚的に予想が出来ない。
その音を聴いているほうが、ずっと視覚的イメージが沸いた。ほとんど幻覚。


ナダはおそらくいろんなものをサックスのマッピで吹いているんだろうという音。
欧州テクニシャンのようにテクニックで行かない「歌う」味わいで行くのが非常に味。
エリックは、もうなんともいえませんがな、言葉では。
とてつもないテクニックとタッチセンス(これが本当にすごい)を持っているのだが
すべてのテクニックを捨て切って感覚でいっているような。
いわゆろ音響志向を持つような高慢さもなく、かといってイノセンスに逃げるわけでもない。
何かが慎重。クールだ。
たぶん即興好きにもジャズ好きにも、拒む人はいるだろう音。
しかし、なんかたまらんのよ。


この人の1stソロアルバム「a snare is bell」は衝撃。
現代において45回転アナログヴァイナル片面のみ、
ノーエディットノーミックスによるスネアひとつと肉体のみのソロ。
教会の壁に乱反射する音が、人間のコーラスに聞こえる絶句もの。



40分のライブがあっという間だった。15分くらいにしか感じなかった。
終わったらバーで歓談。
酒飲まないナダがドリンクチケットを丸ごとくれた。
ここの酒は良いのだ。
moinetteとequinoxを1杯ずつ。ブロンドとダーク、たしかともにブリュッセルメイド。
equinoxにずしんとやられた。


感じの良い男に声をかけられる。
ジャスパーはエリックのマネージャーになった男。
なんだか非常に話しやすい。日本のこと、エリックのこと、たくさん話す。
最近周りがフランス語ばかりで会話に飢えていたのだなあ、3時間くらい話しまくってた。
でもあれよ、僕の英語力って、最低やで。
日本人がきいてもひどいというと思う。
でも、話することは、あるのよ。


ナダもエリックもなんだか僕にとことん優しい。
不思議だ、こんなマエストロたちがなぜ俺などにかまうのだろう。
と思うが、なにか、があるんだ。


ナダもエリックもものすごくいい顔してるんだ。
人間はそのすべてが顔に表れる。
変な話、いい顔しているなあと思う男たちは、
俺が女だったら絶対惚れるなあ、という顔。
まあ男でも惚れますが。


良いことも悪いことも、飲み込んで、かつきれいな顔をしていれる人たちが好きだ。
きれいなだけはつまらない。汚い顔は論外。
俺は自分の顔をとても好きではないが、手入れなんぞしたくない。
人目を気にして着飾る連中と同じくなるなんて、まっぴらごめんだ。
そんなやつらは、彼らみたいにいい顔にはなれない。


さておき、


うれしいことに金曜には彼らと同じ場所で共演することになった。
うれしい。
覚えている、
あの言葉、初めてエリックに会ったときに、クラブオーナーが彼に馬鹿なこと言ったとき
「くそったれ、金が何だ集客が何だ、俺を呼んで何を言ってるんだ、
何のために音楽やってると思ってるんだ、自由のためだろうが」
この一言が、今に至る関係を築くことになった。


いい夜だった。
うまい酒といい音楽、楽しい出会い。
感謝感激。