ベルリンからブリュッセルへ
さすがに昼前に起きる。
ごそごそ起きてきた皆と昼過ぎの朝食。
夜はやっていなかったまたしてもトルコ軽食屋。
ここはこざっぱりしていて労働者向けっぽい。
皆が欧州朝食を頼む中僕はトマトと卵とパプリカの炒め物。
またしてもうまい、パン2枚ついて紅茶もついて3,5ユーロは立派だ。
ゆっくりみんなで昨日までのことを話ししながら食べる。
どうしてこう変なやつ多いんだろうねえ、という話してたら
「こういうごちゃごちゃした大都会にいると、自分のことを小さく感じてしまうんじゃないかな、
だから自分を本来以上に大きく見せていかないと、自分を保てなくなるんじゃない？」
とニコがいってた。
そのときの雰囲気をとてもよく覚えている。
気持ちよい仲間たちと、心地よい朝食の時間に。
戻ったら早速撤収、エルスのリハ場所へ。
待ち合わせて積み下ろし。もう慣れたものだ。
ここでエルスとお別れ。ベルリンでの収穫は彼女と過ごせたこと。
感情の起伏が激しい激情家で暖かい、思い込み激しくて即行動。
ちょっと日本のあやちゃんを思い出すなあ。
彼女と友人になれたことがよかった。
少し残念なことに僕らは今日のライブを自分たちでキャンセルした。
tachelesでもう一回、ということだったが、宣伝はゼロで客は来ない。
この二日の足跡でもう少しは来るだろうけど、やることに見合わない。
昨日から話し続けた結果のキャンセル。
それだったら、ベルリンのミュージシャンたちと交流を持ったり音楽を聴きに行きたい、
といってみたが、皆の心はすでにブリュッセルへ。
ここでは単純な多数決はない。納得いくまで話し合ってから全員の行動を決める。
ありがとう、エルス、さようなら。欧州は狭い、すぐに会えるね。
ベルリンから車で脱出するのに一苦労。僕はパクヤンとジョヴァンニと同乗、
二人は物事を決定する基準が非常に違うので、これが結構大変。
なんとかベルリンを脱出し、アウトバーンへ。一路ドイツを西にベルギーへ。
2,3回休憩して食事など。僕は朝飯のトルコ屋で買っておいたパンなどを食べる。
今回かなり節約しなければいけないので準備しておいたが、皆が少しずつ皿を分けてくれる。
ちょうど10時間ほどでブリュッセルに到着。
帰ってきたらわれらのブリュッセル・サンジルは
「まるで村のようだね」と誰か。
全員がsweet home sweetといったのは、微笑んだ。
ベルリンにはまだ興味がある。
今度はもっと良い状況でいこう。
今回の僕らのベルリン行はタフだった。
でも、この仲間たちで行って、ほんとよかったよ。
僕らはいいチームだね、って、やっぱみんな言ってた。
親父が書いた本にあったようなことを思い出す。
旅を終えて、私たちは良い家族となって帰ってきた、といってた。
旅自身よりも多くのことを、こうやって仲間たちと得るというのは、とても豊かな気持ちになれる。
車の中で思ったんだが、
こちらの仲間たちは、お互いを良く助ける。
物や金の貸し借りは気軽で頻繁だ。
細かい割り勘とかはしない。あるやつがまとめて払う。
実は金がないから一緒に食べにいけないんだ、なんてことは許されない。
必ず引っ張って連れて行かれて、温かい食事にありついてしまう。
楽器がなければ楽器を、運ぶ車がなければ車を、まるでこともなげに貸しあう。
寝床も仕事も、心配させてくれない。
簡単に助ける、ということは、簡単に助けを受けるということでもある。
ちょっと助けて、とすぐに人に頼む環境がある。
日本にいると、自立した（もしくは自律した）人間であることが、すごく良いことのように
喧伝されている気もする（気のせいかもしれない）。
人にすぐ助けを求めるのは、甘え、といわれそうだ。
うまくいえないけど、助け合うところに、こちらで甘さを感じない。
誰かに助けてもらうと、もちろんとても助かる。
しかし、誰かを助けると、とても気持ちが良い。
方向や感覚は違っても、どちらも持ちよくなることは、とてもよくはないかな。
僕は誰かに力を貸すのが、根本的に好きみたいだ。
いや、うまくいえないな、この感じ。
お互いを尊重しているからこそ、相手を助けたときに味わう、甘み。
これが、僕の愛するこの界隈独特の音楽にも通じているのかもしれない。
僕は旅がことさら好きなんじゃない、というと驚かれる。
ずっと旅ばかりしているから。
でもそれは必要なんであって、好きだからじゃない。
旅の中で発見があることよりも、自分の中にある気がつかなかった何かや、
知らなかった感覚を新しく自分に持てるようになれるという点では、
旅は素晴らしくなりえると思う。
ああ、面白かった。
みんなで笑ったり怒ったり、たくさんした。
演奏は、渾身でとても楽しかった。
やりたい音楽が自分の中でたくさん聴こえた。
さあて、寝るか。
さすがブリュッセル、また雨だよ。
