BOILERZ+谷本仰+黒田征太郎@小倉旦過市場

いよいよ旦過市場での演奏の日。
ちょっと早めに出て探索。


小さめだけどなんだか地元の鶴橋市場に似ている。
目に映る食材の珍しさにきょろきょろと忙しくなる。
小倉に来たらマストの鯖や鰯のぬか炊き、五島列島の鯖使用のばってら、小倉名物おでんなど
を買い込んでビール片手に市場の無料休憩所で、昼休みのおばちゃんたちの隙間で小さな宴会。
いちいち滅茶苦茶うまい。これだから九州の生活はたまらない。


時間あたりに市場の中心にある大學堂というスペースへ。
ここは旦過市場北九州市立大学の共同スペース、休憩所らしい。

古い小民家のようなつくり、やはりどこかポコペンのような感じ。
若い人たちがいろいろと設置している。
仰さんはアンプ持ち込みなだけで僕らは基本的に生音だ。


そうこうしているうちに黒田征太郎さんがやってきた。
ほんとにきたわ、というのが本音。
だってこないだふらりと僕らのライブに遊びに来て初対面で「今度一緒に絵を描かせて」って言って、
嬉しかったけどどうやろう、と思ったら、来た来た。


何の打ち合わせもなくいきなり四人での演奏が始まる。
仰さんの皮ぎりはアコースティック。こちらは無理に音量を下げることはない。
PAとかたまにおかしいやん、ドラムよりヴォーカルの方が音量大きいとか、そんなはずない。
各楽器の基本的音量というのは違うものだ。
たまにボイラーズをやっているとtubaの音のバランスが小さい
というけども、当たり前だ、逆に言ったらドラムみたいな大音量に真っ向から演奏するには
tubaくらい大きな音のする楽器でないと僕は演奏できない。


話を戻そう。まずは4時からの1部。
演奏は言葉に出来ないけど、演奏中に目に入るものが物凄くカラフルに感じらられた。
市場の風景、人の顔、不思議な感覚だ。
端っこには小さな机にかじりついて、まるで「うぉー」という声でも聞こえてきそうな表情で
ワタンベも顔負けに全身をバタバタと動かしながら黒田さんが絵を描いている。
ライブペインティング、という感じが全然しない。一緒に演奏しているかのようだ。
信じられないような速度で次々と花の絵を描きまくっていく。
そこにあるものすべてに自分が乗せられるような、音の波の感覚。


6時からの2部はさらなることになった。
詳細な音の記憶なんてこんなライブの中にはありえない。
ただエネルギーがまずそこでぐるぐると渦巻く感じ、そしたら黒田さんの絵も変わった。
最初の一枚にかかった時間と手の動きが違う、まるであの渦そのままのようにぐるぐると、
2部の絵は鳥だった。
そろそろお店を閉める市場の人たちもいたようでお客がどっと増えている。
年配の人たちの笑顔には全身貫かれるような嬉しさだった。
僕ら、自分の出来ることしかできない、みんなの知っている曲をやるようなサービスも出来ない。
ただここにいる心の喜びの赴くままに、今までの人生で得たすべてをぶつけることしか出来ない。
自分にとって音楽というのは、そういうことだ。これが全自分だ。
つくづく幸せに思う。

大歓声の終了。
長く続く拍手。
目に入るものがきらきらと輝いて見える。
みんなありがとう。


ここから早速宴会の準備、この大學堂で学生さんたちや地元の人たちのおもてなし。
市場中から差し入れの品が届く。うわあ。とんでもない量と質。
ここはうまいものだらけの旦過市場、凄いことになっていることを想像してください。
そして酒の嵐、それも相当なスペシャル。生涯忘れられない味。
女子大生四人組のバヌアツ共和国の歌と踊りロドニゴに大爆笑。
黒田さんの話が面白すぎる。
大阪じゃ勿論、美術の世界で知らぬものなしの黒田征太郎さんだが、いろんな人に会ってきたが
こんな人初めてだよ。
この元気さで御年70才。こんな風に年を重ねたい、と思う。

そういえばこの日この夜で昨年の事故からちょうど一年。
多くの人に心配をかけ、九死に一生を得て、今がある。
あれで死んでしまっていたら、あれからこの一年間にあった素晴らしい出来事や心の動きに出会えなかったかと
思うと恐ろしい気持ちになる。
最近初めて、このまま長生きするのもいいなあ、と思うようになってきた。
僕はやっと黒田さんの半分よりちょっと越えたところだ。
こんなに楽しそうにあと35年以上を生きていけるのなら、たまらないだろうな。


しかし宴会は底なし沼の様相に発展。
とうに市場の中は我らだけ。320kgあったという絶品マグロのアラ鍋のあとにチャンポンも食べた。
無限の宴会になんとかかんとかピリオド。
後は徒歩で寝床へダイブ。