asian connection@Hoorn

無茶苦茶な夢みたいな日だった。


昼間ふらふら歩いていると近所の大通りが閉鎖されていて大フリマやってる。
これは2年前にも来たことがある町内会のやつだ。
素人大参加イベントで掘り出し物も多い。
すぐにジョヴァンニとパクヤンに電話で召集。
待ち合わせ場所に向かう間に冷やかした古着屋の靴、
特に買うつもりもなかったのに買ってもた。
だって5ユーロで綺麗で立派な革靴、ぴったりだったもんで。

待っているとファンファーレの演奏が聞こえる。
先月の路上パーティーで見たバンドだ。
サクソルンバスがバンドに入ってるのがベルギーらしいとこ。
二人も来たのでぶらぶらと。
向かいから別のブラスサウンドが聞こえる、一聴してルーマニアの本物の音。
最初に見たバンドはルーマニアの曲とかやってるけどまあ偽者。
本物のほうがしょぼい音なのに、勝ってしまっていた。


ジョヴァンニたちは家具を物色、僕はアフリカの太鼓を見つけてしまった。
昔から欲しかった皮ひもが横に張られているンゴマタイプ。
おっさんに聞いてみると、うーフランス語がクリアじゃなくて聴き取れないので
手に値段書いて交渉して10ユーロに値切る。やった!
ぽんぽん叩きながら歩いて遊ぶ。


明日は日曜なのでスーパーに立ち寄り軽く食糧を買い込み
家に戻って準備をして車でまずはクリストフをピックアップ。
元マチュー・ハーの家のあたりで待ち合わせ。
クリストフのことはパクヤンも僕もまだよく知らない、一緒にバンドやり始めたばかり。
いろいろとお互いの話し。
2歳まで韓国にいてベルギーで養子にもらわれクリストフになったとか。
(ベルギーは養子縁組大国だ、余裕のある人たちは気軽に養子もらう)
パクヤンは中国系(両親は香港出身でベルギー生まれ)、クリスが韓国系、
僕は橋の下でもらわれたのだが多分日本人系。
出自が思いっきり違うがこのトリオは即席でエイジアンコネクションと名づけた(俺が)。


今日のライブはパクヤンの友人の誘いでオランダまで。
アムステルダムより先でちょっと遠い、車で3時間。
オランダに入ったとたんに空が重く暗く低い。
ユトレヒトも越えてhoornという田舎町、ホルンって意味だって。


パクヤンの友人、これが思いっきりオランダ発音の名前で覚えられない、ごめん。
まずは彼の家で休憩、やたらと細かい気配り。
家は立派な庭園を囲んだアパートで物凄く綺麗、さすがオランダ。
彼の彼女の息子トムってのが挨拶、これがとんでもなく美少年。
しかもここにいた子猫モモが異様にかわいい、パクヤンがダウン。

ちょっとしたら町の中心部へ、ここは田舎だが都市みたいだ。
アムスを小さく小さくして綺麗にしたような感じ。
中心部への入り口は全部封鎖されている、今日はお祭りだ。
彼が持っている魔法の鍵で開けて車が一台もない中心部を突っ切る。
あちこちに巨大なコンサート会場が設置されていて(これもまたタダだ)大音響。
なんで車が入って来るんだよとぶーたれる人たちをなんとかなだめてバーに到着。
中は雑然としたロックバーという感じ、喧嘩の強そうな50過ぎといった感じのタフガイ・ニコがマスター。
ステージの真横にトイレが丸出しだ。
楽器を運び込んでセッティングしてひと段落したらニコの家へ移動して食事。
ベジタリアンもいるということで(とばっちりみたいなもんだ)クスクスとサラダ。
さすがオランダ、味付けが・・・。


戻ってビール飲んだら開始、客は増えている。
僕はPAを使わせてもらう、客はとてつもなくやかましいしあったほうが良かろう。
酒場のライブは聴かないのがどこもルールらしい。
にゃろ、こちとら客の耳つかむのが仕事だ、待ってろ。
マイクの当て方をいろいろと調節し音量と音質をさまざまにコントロール
比較的ソフトなクリスのドラムとフローするタイプの鍵盤パクヤンなので客キャッチはこっちの仕事。
つくづく長年かけていろんな音楽の現場をやってきたことに感謝する。
とはいえ全部インプロ即興なので何が起こるかはわからない。
ベストを尽くすしかない。尽くした。

1時間数十分のロングワンセット。終わった瞬間に爆発的な反応。
こんなに受けるとは思ってもなかった。
むしゃぶりついてくる客多数、なんなんだこれは。
CD出したら一瞬で全部売れた。嫌がらせのようにごった返すとんでもない人ごみ。
どこにいっても追っかけてくる客たち。周りには久しぶりに見る泥酔者多数。
「今まで見たライブの中でいちばん良かった」を繰り返す人たち。
あんたらライブってみたことあるの?
周りでやってた6つの野外ステージ、全部激ダサいロックやったよね。
アヴァンギャルドなものがすきなんだ、と熱っぽく語る少年とか熱いおっさんとか。
ウィンクが飛び交う酔っ払いの女性たち。


パクヤンとクリスは半ば困惑気味。そりゃこれって即席トリオだし君たちこういうことないだろうけど。
パクヤンがクリスに説明してた、daysukeは即興でする客を捕まえるのがとても得意だ、とか。
これはとてもヨーロッパではないらしい。
たしかにこちらで見た演奏は極上のものでも、お客に届けようとするタイプのものは少ない。
お客は勝手に受け取るもの、ミュージシャンはそれにみんな慣れすぎている。
お客を捕まえなくてもお金もらえるしライブできるもんねここらへんでは。
俺はそうじゃなかった、乞食からライブ始めた人間なので違うんだ、が、
俺のほうがスタンダードだと思ってもいる。どこでも音楽できるもん。


とはいえ、とにかく熱狂的な盛り上がり、このままずるずるいるととても楽しそうだが
帰りも3時間かかるので適当にお暇。ニコに挨拶してジュネヴァを一気にあけ退出。
途中まで道案内してくれたオーガナイザーの彼、勿論彼も大喜びで、
君らは必ずここに戻ってこないといけない!と力説、途中でATMでギャラの立替をしてくれて別れた。
今回の滞在の最後のライブがこれってのは面白い。最高ありがとう。


もうこの時点で2時半くらいで猛烈に眠い。半分くらい気絶しながら助手席に。
途中で深く気絶していると、様子がおかしい。ハイウェイじゃない。
思いっきり道に迷ったようだ。仕方がない。
任せるしかなく何とかハイウェイに戻り一路ベルギーへ。
ブリュッセルに入ったときはもうすでに少し明るく、クリスを彼の家に落として(10時から仕事って)
途中で僕も蹴落としてもらい家へ。雨だよ。しかもついたら6時。気絶寝。