UKIYO@cafe lombard

記憶力がやけに悪いのでなんともいわくいいがたいのですが
昨夜のライブはベストライブインマイライフだったと思います。
さてその一日。


今日は天気が悪い、たまに雨が降るブリュッセルらしい空。
日曜なのを思い出して外に出て教会前の市場へ行く。
目当ての八百屋にシャンピニオンがなかった、残念。
しかし大振りなセロリと緑色のカリフラワーを買う。
チーズ屋台でひとしきり悩んで、パルミジャーノレッジャーノ1kg。
種類をどうしようかと思っていたらイタリア人の主人が試食させてくれた。
前からここはお気に入りだ、若いのを買ったらひときわ安かったkg10ユーロ。
昨日がんばった自分にご褒美のつもりだ。

帰ったらトマトとセロリとパクチーを山ほど使ったサラダにチーズを削りまくる。
ロッコのオリーブオイルかけてパンと、昨日のスープの作り残しもいただく。
はーうまい。パルミジャーノ、最も好きな食べ物のひとつ。


夕方に待ち合わせの約束があって出かけるもすっぽかされる、1時間待って電話もしたけど駄目。
まあベルギーの男はたまにこんなもんだ。


夜出かける前にテーブルを見るとグレッグがパスタを作ってくれていた。
ブロッコリーペスカトーレ、これまたパルミジャーノがしこたま入っている。
危険なくらいうまい、これは反則だ。


荷物がほとんどないので気楽なジョヴァンニとの移動。
前日に店のダブルブッキングで一方的にキャンセルされたリベンジライブ。
ジョヴァンニに集中して店員の態度が悪いので彼はすぐ噛み付きそうになるなか


ジョアオが小さな音で演奏にダイブしていく
ジョヴァンニが編む微細な電子音の揺れる絨毯の上で
俺は好き勝手に寝転がったり前回りしたり倒立したり倒れたり
歌ったり寝たり笑ったり驚いたりひっくり返ったり


ウルトラリラックス。


本来僕にとってtubaを吹くというのは快楽だけではない。
自分の身体の一部を振動させて音源とするのだ。
必ず苦痛も伴う。大きい音高い音は特に、痛みといっても良い。
それがない。
痛みを負ってでも良い音を出さなくてはいけない、という気持ちに
この二人はさせない。ただひたすら編んでいく。


カフェライブなので客はエントランスフリー。
日曜の中心街で最初は人もまばら。
店と客は基本的にはライブには無関心、のはずだ。
内容はインプロ、完全に即興演奏。
気がつくと超小音量の部分で、あのうるさいブリュッセルの客席に静寂が。
曲の終わりを待たず、客席からとめどない拍手が訪れる。
はっと見渡せば真剣に見つめ聴き取ろうとするお客で満員。
前列にはまるで試験官のようにずらっと並ぶ友人たちの笑顔。


楽しかった。うまくいえないな。
俺はあの最中に、お客さんになりたかったよ。
客席にいてそこに生まれる未知のものに驚き打たれたかった。
ほとんどそのような気持ちで演奏していた。
自分のやりたいことをやっているというよりは、
ジョアオとジョヴァンニと演奏しているこの世の中に必要なことを
必要なことだけをただひたすらやっていたような気がする。
自我からの解放はひとつのテーマだ。

終わった後に多くの見知らぬ人たちが話しかけてきた。
驚いたことにたくさんの知らないミュージシャンが見に来てくれていたらしい。
イスラエルから来た青年、2年前のボリショイズをみた女性、
こないだの路上フェスで知り合ったマジシャンやダンサーも。
知り合ったばかりのサックス奏者ヤンや地中海周辺コミュニティの人たち。


以前参加していたバンドのボスがよく言ってたなあ、俺は一番のお客だって。よくわかる。
演奏の後に、今外で車に轢かれてもいい、といった人も。


ここにとんでもなく大切なバンドがあります、UKIYO。
ジョヴァンニはちょっととんでもない案を持ってるみたいで実現したら俺は笑うよ。
今回の滞在中にまだこのバンドのライブはある、幸せだ。