maiist@atlier claus

さすがに少し遅くおきる。
ごそごそといろいろとするのんびりした朝。


夕方早めにまず荷物を持って移動の準備。
今晩からジョヴァンニとパクヤンのうちに泊まるのだ。
手荷物をまとめると両手に持ち上げられるだけしかない。
こんなに荷物の少ない海外は初めてだ。
トートバッグ2つとゴミ袋に入った衣類。
とおりを歩くと完全にコインランドリーに行くだけのジモティ



みくさんちから彼らの家は歩いてすぐそこ。
このサンジル地区はこんな風にとても便利でここから動く気がしない。


彼らの家にはよく遊びに来ていて、昨年は引越しの手伝いもした、勝って知ったる人の家。
奥にあるスタジオスペースを一室与えてくれた。
表通りはこの町の中心の道で、非常に便利なところ。
裏は集合住宅の中庭のようになっている。

のんびりしていると二人がなにやらしている。
ピアネット、という楽器の修理だ。
ホーナー社の70年代の知られざる名機、いわゆるフェンダーローズコピーらしいが
信じられないくらい薄い!
低音の出が悪いということで修理している、中をのぞくと機構がものすごくユニーク。
鍵盤を押すとその先にある鉄棒についているゴムのようなパーツが
鉄の板にくっつく、ゴムはべとべとしていて鉄板にくっついてそれが離れるときに
発音するのだ。

stickey keeyboard!なんて面白い。
かわいい見かけで重厚で素晴らしい音。
中古で非常に安いらしい。


時間が来たらパクヤンは車を取ってきて積み込み。
ここから歩いてもすぐの場所だがいろいろと機材があるので。
アトリエクラウズはおとといマチューが展示をしていた場所の向かい。
オーナーのフランツは昨年も世話してくれたナイスガイ。
会うなり彼は電話中だったのに僕を抱きしめ「oh famous tubisut!」と僕を抱きしめる。
ちなみに有名なんかじゃないよ、ただこの街にずっといるからね。

会場のあちこちが準備で忙しい。
今日はマチューのistという来日もしたバンドの進化系。
このバンドは毎月バンド名が変わって今月はmaistだ。
may(5月)の人、ってこと。
今日のメンバーはマチュー、グレッグ(ゲンブリとbs)パクヤン(key)クリストフ(ds)
ヤネック(key,per)それに僕だ。
なんともアジア人が多い編成になってきた。
マチューはベトナム系、パクヤンは中国系、クリストフは韓国系で、僕はたぶん日本人だ。
ベルジャンはヤネックとグレッグのみ。


サウンドチェックと平行に曲のリハ。
なんと今日はほぼ全曲新曲でメンバーのほとんどがそれを知らない。
楽譜なんて勿論ないしマチューのくち伝え。
規制の音楽のフォームとかなり違うか彼の曲は覚えるのにも苦労する。
かなり長時間のリハ、空腹もあって結構ふらふら。


おわるなりケータリングのサンドイッチを頬張っているとレストランを用意しているとのこと。
みんなで移動、どこかと思えばみくさんの家の目の前のレストランだ。
みんながここはいいぜえ、という。

お任せディナーはステーキのプレートだった。
ここは安くて量が多いと皆絶賛。味はまずまず。
赤ワインと肉はいい相性だ。
エスプレッソももらって僕は早めに出て会場へ戻る。


パリから来ているブラスバンド、こちら風にいうとファンファーレのライブがスタート。
http://www.myspace.com/leschevals
トランペット、トロンボーン、テナー、バリトン、スーザホン、ギター、大太鼓と小太鼓。
ファンキーな曲やジャズのり、そこにアフリカやモロッコがちらちら見える。


やっぱヨーロッパやなあ、楽器みんなうまいし、アメリカに犯されてる感じがしない。
ベルギスタンといい、こういうバンド見ると日本の身近のホーン入りバンドに辟易する。
下手でオリジナルなセンスを感じさせない。
うん、ここのボントロは若い頃の村田陽一さんのように力強く少々強引なくらいの
持っていき方が最高。鳴りのよさと確かなテクニック、そしてそれ以上に行こうとするのが良い。
このバンドの売りはメンバー全員が演奏用の貝を持ちかえるところ。
曲によって変わるキーにばっちりあった貝で見事なアンサンブル。
リズミックでまるでピグミーの合唱のような場面も。
ファンキーやジャズよりのものよりもこっちのほうが面白い、と皆の意見合致。


次は階上の僕ら。
ものすごい数のお客さんが詰め掛ける。
マチューのテンションは高く曲の覚えはあやふやでテンポは早くなり翻弄される。
しかし音楽にはその人のエネルギーが如実に出るよな。
やばい構成とかになってもマチューが一声発せば吹っ飛ばされる。
やぐらにのぼり天井の扇風機に向かって歌いまくるマチュー。


グレッグのゲンブリがうねり、ヤネックのキーボードが意外にもうねうねとかっこよい。
リハ時よりステージ上の音は聞こえにくくて自分のtubaは皆無だったが客席は良好とのこと。
最初は座っていた前列の客たちが自主的に立ち上がり勝手に踊るのがナイス。
アンコールもこなして終了。

終わった後にカウンターに酒もらいに行くと凄い行列、というか押し寄せ。
いろいろな顔と再会する。
とにかく喉が渇いているので白ビールと好物シュフをいっぺんに。
白ビールは意外に重くて一気飲みしようと思ったけど出来ず、
その後に重めでさわやかな味のシュフを飲む。
さすが生でフレッシュ。
(生だからいい、とかはない、ボトリングと経年変化もベルジャンビアの特徴だ)


吹き抜けステージでは最後のバンドの演奏。
ギターベース二人ともボーカル取る、なんか変だなあと思ったら
ドラムがいなくてはいけなそうなサウンドなのにいないのだ。
そこがちょっと間抜けで悪くない。
しかし、まあ普通。客は盛り上がってた。


そういえばこんなことがあったな。
ライブ前に搬入、会場の前に荷物を積んでいると一台の車が止まった。
中から赤ん坊連れの黒人男性がやってきて、今日はコンサートか、と。
どんな音楽をやるんだ?といわれ、まあジャズやるやつからモロッコグナワ、
トランスや何たら混ぜた、とかいってたら、
「見に来るよ」とのこと。
そして彼は実際にやってきた。
こんなこと、やっぱり日本ではなかなかないよな。
ジャンルとかじゃなくて、音楽そのものに興味を持って知らない人がやってくる。
僕的にはこれは理想だ。


階段でファンファーレのスーザ奏者に出会い挨拶。
お互いの演奏を楽しんだことをは話す、彼の名はステファン。
パリに来たらいつでも家に泊まりにきてくれ、という。
これもなかなかないことだなあ。


ふらふらと回遊していたら、元istのスーパー変人ラッパ吹きYOがいた。
神出鬼没の飛び入り男。ロックにあわせてくねくね踊っている。
ほんとおかしなやつで、憎めない。


なんだかんだして撤収。
帰る前に最後のドリンクに一杯もらう。
ベルギー独特の自然発酵ビール・グーゼ。
非常にすっぱくて不思議な味。
ジョヴァンニが意味分かる?と名前を聞いてくる。
MORT SUBITE、えーとモルトはイタリア語と一緒だから、と思ってたら
「突然死」サドンデス、だって。

パクヤンの車ですぐそこの家に戻り、片付け。
ほどなくてして僕は一足先に就寝。