出発の日

朝7時前に起きる。
準備は済んでいるので最後のチェックをして、時間があったので台所の片づけをしておく。
グレッグの寝室からまずクーズが起きてきて僕を空港まで贈るための車を取りにいっている。
カンビオというシステムでわざわざ借りてきてくれるのだ。
グレッグがまだ寝ぼけている状態で起きてきた。
何時までパーティーやってたんだい、ときくとわからないけどたぶん5時半くらい、という。
さすがだ、ブリュッセリアン!


お茶を入れているとパクヤンとジョヴァンニがやってきた。
これまたすごい寝ぼけ顔だ。パクヤンの寝癖がすごい。


寝巻きに上着を羽織って出て着てくれたらしい。
グレッグは親戚をたたき起こしに一度外に出て行く。
クーズとグレッグは朝食を片手に帰ってきた。
クロワッサンとモロッコスイーツ。
この二つとも当分おさらばだ。
帰ってきたらすぐこれをやるんだ、とクロワッサンをパクヤンとグレッグに掲げる。
グレッグに自作の笛をプレゼントした。


いよいよ空港へ向かう。
ジョヴァンニとパクヤンとお別れを。
君らのおかげで今回の旅があったよ。
本当に本当にありがとう。
さりがたきをさる、しかない。


車で空港へはあっという間。
一度車を止めてクーズは用事のために去っていった。
ありがとうクーズ、4月に日本で会おうよ。
グレッグに手荷物を見てもらい僕はチェックイン。
これがなかなか進まず、ついた時点で「タクシーでアムスに行ってくれないかな?」
といわれる。それは嫌だ。
交渉してそれは何とかなったが、今度は荷物。
かなり減らしたのにオーバーでまた法外な値段を言ってくる。
ちょっとなら払うつもりでいたが超短期で日本ベルギー往復できそうな額は払えない。
この係員が固いのでしょうがなく荷物から次にやってくるまで使わないものを急いで減らし
グレッグに持って帰ってもらうことにした。
今度は隣の係員ですんなりスルー。
飛行機に乗るときはいつもストレスがあって安らがない。


これでものすごい気がせいて悲しい気分が吹き飛んだ。
見るとクーズが帰ってきて、お別れをもう一度言いに来た、という。
なんていいやつなんだ。
最後のお別れのゲートの前で本当に最後のお別れだ。
グレッグが僕の肩をつかみ、この先の僕に幸運と健康とよい旅があるようにと祈ってくれる。
英語だけど、これはバラカだ、グナワの祝福。
こんなときにもいつでもどこでも人に対する思いを忘れない優しい巨人。
さようなら。次は日本で。
君のおかげで今回の旅はいまだなかったくらい、豊かなものになったよ。
ありがとう。


抱きあい別れ姿が見えなくなるまで手を振る、いつものこと。
しかしいつもこの時間は切なく、大切だ。


後はいつもと同じ。
飛行機に乗りスキポールで乗り換えて帰るだけ。
何も面白いことはない。
飛行機の中では映画を見まくる。
期待もしていなかったバットマンの最新作が良かった。
ジョーカーは何も信じていない。
まるで形あるものに未練を失っていく僕みたいだと思った。