ホームレコーディング/istライブ

起きたら朝6時半くらいだった。
相当寝たことになる。
バルセロナで気がつかないうちにそれだけ体力を使っていたということだろう。
なんだかあの町はカロリーが高かった。


このまま寝るという感じでもなかったのでおきてすぐにネット作業を始める。
3月に来日するジョヴァンニの日本ツアーだ。

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3月14日からクラッピーミニバンドのドラマーで本業ピアニストのジョヴァンニが
来日する。
http://www.myspace.com/giovannididomenico
こちらに来て、クラッピーミニバンドのライブお客に彼ピアニスト、というとかなり驚かれる。
そのくらいいいドラム叩くし、音楽センスばっちり。
ドラマーが嫉妬するくらいいいドラマーだが、ドラムの練習経験ゼロだという。


こちらで僕は素晴らしいドラマーを何人も得たが、彼は引けを取っていない。
そんな彼の、もっとすごいピアノ、そしてドラムまで聴けてしまうライブツアーを今企画中。
日本と日本食を愛する彼と旅ができるのはとても嬉しい。


見たい人いますか?
声かけてください。
日本中、行こうと思います。
細かいことは話しましょう。
音楽を好きな人、連絡お待ちしてます。


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昼間にグレッグとホームレコーディング。

ロッコにも持っていったモバイルレコーディングシステム、部屋にて。
彼と一緒に長くすごし演奏し旅しお互い大きな影響を与え合った。
彼の持つ大きなハートと体から発せられるエネルギーはときに
僕を植物にして太陽になってた。
僕はありったけの音楽と気持ちを伝え続けた。
そしたら彼は常に心のそこから即興演奏を求めるようになった。

毎朝お父さんの作業を手伝わなくてはいけない多忙な彼と僕は
同じ家に住んでいるのになかなかゆっくりすごす時間がない。
何かのとき、二人ともつかれきっていて何もできないときに
「daysukeと即興演奏したい、録音がしたい」と強く言った。
やっと見つかったタイミングがぎりぎりのこのときだけ。


ドアに立ち入り禁止の張り紙をしてノイマンのマイクを立ててpc録音。
彼はバリサクとアルト、小物もいっぱい並べて。
僕はtubaと笛など。
音量のことも演奏の内容も何も気にしない。
人とやると気負って何かやらねばと思う気持ちももうない。
ただただ演奏を楽しんだ。
終わったあとの嬉しい顔が二つ並ぶ。
こないだ話しててデュオやるときの名前はもう決めてある。
ファルハーン・ブラザーズ
幸せな兄弟
ありがとうグレッグ。

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夜のライブはグレッグとマチューと三人だと聞いていたはずなのだが
グレッグは一人新しいドラマーを連れてきた。
クリストフという在ベルギー韓国人で見かけは普通にアジア人。
三人で車乗り込んで人民の家へ。
中にはすでに狂ったようにピアノを弾くマチューがいて雑然と準備。
さらにエリックとギターのマニュがやってきた。うわ、知らなかった。
これはマチューのバンドistの最近のメンバー揃ってるじゃないか。
さらに遠くリエージュから駆けつけて奇人ヤネックがやってきた。
おお、これはドラマーをリプレイスしたマチューバンド完全版メンバー。


これに比べたらやはり日本には音楽の客はいないことになってしまうではないか。
サウンドチェックがクリスの曲勉強の時間をかねている、彼大変そう。

ちょっとしたら太っちょのおっさんが「マンジェー!」といい裏で賄が出た。

チキン焼いたの、ジャガイモときのこの煮込み、ドレッシングがおいしい芽のサラダ。
ビールとおいしくいただいて準備完了。
告知ほとんどしてないから客は来ないかもなあ、と聞いていたが
少ないね、といっても4,50人が詰め寄せている。


編成はマチューがアコーディオンボーカル、拡張は遠隔無線のベトナムスピーカー。
エリックはアンプつないでノードシンセ、マニュはギターででかいフェンダーアンプ。
グレッグはゲンブリをアンプにつないでバリサクとテナー。
クリスはコンパクトなドラムセット、ヤネックはカルカバとダラブッカなど。
僕はtubaと笛で武装した。


以前マチューのバンドはドラムとキーボードとアコボーカルのトリオだった。
ツアー中はサポートで僕も良く入った。
グレッグとヤネックが参加してゲンブリとカルカバが加わりトランスになり
マニュが参加してサイケロックになっていた。
もとある楽曲はさらにメロディのリピートを強化していた。
曲の強度と即興度がともにあがっている。
譲り合うことなくぶつかり合い自分のスペースを作る。
自分の形が全体の隙間になり、全体を構成する。


クリスはヤネックのカルカバをガイドに喰らい付きばっちりトランスしてた。
ともすれば埋めすぎのマニュは塗りつぶすように弾きまくるがそれに皆は負けない。
クールなエリックがマチューの合図をまったく相手にせず鍵盤の下まで頭をのめる。
グレッグは分厚いビートと縦横無尽なサックスを行き来する
僕は異様な重低音が重なるこのバンドの低音や誰もいない天井のほうの高音を
思いっきり吹かせてもらった。

マチュー、アジテーションで暴動を促す天使の狂った声。
バンド世界中の旅やアジア一人旅で、彼のエネルギーは明らかにはちきれている。
これは、すごいことだ。


客、客だ。
懐かしい友達たちも駆けつけてくれた、最近のではなく、悪い道中をともにしたみんなも。
トランスを旨とするベルギスタンのメンバーがたまらず前にかけ出て踊り狂う。
歌うやつ飛ぶやつへこたれるやつのカオス。
バンドと客の暴力的なまでの熱気がハウリングを起こしている。
1ステージ1時間15分、その2セット。


夜12時、苦情で前回10時でストップしたこの会場でアンコールは鳴り止まず。
またもばきばきにやりまくる。

モメンのフレッドがたまらない甘い笑顔で駆け寄ってくる。
忙しくて家からまったく出ることができないはずの彼がどうやって、と思ったら、
どうしても、どうしても、と言葉を詰まらせて、ありがとうといいに来たかったんだ、という。
うまくいえない、すまん、でもとにかくいつもいつもdaysukeの音楽に感謝しているんだ、と。
うちを家だと思ってくれ、俺たちを家族だと思ってくれ、と。
そんなときもいつもどこか申し訳なさそうな顔をする彼に、またしても言葉は要らない。
ありがとう。



マチューが観衆に向かって、これが今回のdaysukeの最後のライブだと告げる。
大きな拍手が僕らを包む。
今回得たすべてを放出したライブだったと思う。
はじめてみた人が、いったいどうやってこんなライブをやったんだ、と聞くが
このメンバーではまったくの初めてで、自分たちにも分からない、としかいいようがない。
グレッグとフレッドと、音楽と愛情さ、と大きく笑う。


いいライブやったときのここでの観衆のエネルギーは病み付きになる。
英語しゃべれないおばさんが、どうしても感謝がいいたいとわめく。
帰るときに目が合った人は全員が、本当に全員が、良いライブをありがとう、と笑顔を見す。
今回はラストライブとあって、いったい何人が再会を誓っただろうか。
帰る日にちを40回くらい聞かれた。
次に来る予定を告げると、では来年の5月に必ず会おう、と言って去っていく。

自分のしたことが自分の意図をずっと大きく越えて、人を喜ばせることの嬉しさ。
これがこの町での演奏の醍醐味であり、僕にとっての生きる喜びだ。

マチューは、この先大きな計画を練っている。
2年後におそらくとんでもないことが起こる。
そのときに、日本のみんなに彼を見せることができるはずだ。
扇動する堕天使の歌声が響くのを、心待ちにしよう。

帰る間際に最後に残ったガトーショコラをグレッグとクリスとマドレーンの三人で食べた。
世界一おいしいこのチョコケーキが、この夜格別においしかった。