ブリュッセルへ帰る日

さすがに眠い朝に起きる、がこちらにきて早起きには慣れた。
パッキングもすんでいて結構のんびりする。
この部屋の持ち主には結局会えなかったがとても居心地が良かった、感謝。
壁に貼られているポスター類が目に楽しかった。
マルクに置手紙もしていざ出発。

荷物を持ってまずはニコの家へ。
朝寝坊で遅刻魔の彼がまさか起きてはいないだろうなあ、と電話したらすぐに出たので驚き。
聞いたらさっき帰ってきたところらしい、恐るべしカタラン人の夜遊び。
tubaをハードケースに詰めなおしてパッキング完了、駅へ出発する。
昨日拾ったトランクが増えているので少し荷物が重い。
空港へ行くメトロには一度乗り換える、乗り換えポイントまでニコは送ってくれた。
彼はこのままここに年越しまで残るのでここでお別れだ。
今回の旅はクラッピーとの旅だった。ニコには大いに笑わせてもらった。
ここにまで連れてきてくれた、ありがとう。

空港行きのメトロを待つがこれがなかなかやってこない。
最近式っぽい電光掲示板には「後1分」の字が何度も出てくる、もはや笑う。

ここまでカタラン式かあ〜。
時間には余裕があるので安心して移動。
空港に入って結構歩きチェックインへ。

tubaの安全が不安なので荷物をラップでぐるぐる巻きにしてくれる有料サービスを利用する。
どうも荒い店員は英語が不如意で何いってるか少し分からず、お願いすると値段が3倍。
ハードケースにソフトケースつけてぐるぐる巻きにしてもらって、これだと料金が3倍になるらしい。
もうやられた後だし、安全を買ったと思えばそれほど高くはないので払う。
空港内でアミーゴアミーゴって声かけてきて商売するだけはある。


さあこれでチェックインだ、と思っていたら問題発生。
チケットを取ってくれたこちらの人が僕の名前を間違えていて、これだと入れないらしい。
では、といって名前の記載を変更してくれ、といったら60ユーロになります、とのこと。
こちらの生活感覚に慣れているとそんな大金払えてたまるか!な値段。
何とか交渉を往復を繰り返すと、パスポート以外であなたが本人だと示すものがあればよいだろう、と
今回荷物をかなりグレッグの家に置いてきたので手元に何もない。
荷物全部ひっくり返しても何も出ず、もう払おうかと諦めていたら、
ポケットから9日にやったライブのフライヤーが出てきた。
これだ!と思い、これ僕ですよ、といって係りに差し出すと、女性係員はクスリと笑って
あらミュージシャンなのね、シー。
これであっさりOK。やってみるもんだ。


やっと落ち着いて飛行機に乗れた。2時間とちょっとのフライト、機内でパクヤンは爆睡。

僕も少し寝たがほとんど起きていた。
英語表記のある機内雑誌を読みまくる。
いつも海外に長くいると英語のものも読むようになる。


無事空港についてチェックが面倒で間違えてEU人ゲートを通って外に出るとジョヴァンニが車で待っていた。
荷物が多いのでこれは助かる。
久しぶりに会う彼は、パクヤンも久しぶりだしさぞスイートだろう、と思っていたらそうでもなく
なんだかカリカリしている。
久々に会うんでしょ、もっと仲良くしなさい。
ジョヴァンニがナーバスになると結構難しい、普段は超スマートなやつなんだ。


グレッグ邸の近所まで送ってもらってお礼を言って別れる。
久し振りの我が家、グレッグもいて再会を喜ぶ。
さすがに眠いので今日は昼寝するぞ、と思っていたけどネットがあまりできなかったのもあって
それらの作業をしていたらどんどん時間がなくなっていく。
これは無理だ、と昼寝は諦めて仕事専念する。
夕方になるとマチューハーがやってきた。
彼とは不思議な縁でこうやっていつでも会える。
どこかでつながっている兄弟といわれる所以だ。

これから彼のソロCDのリリースに関する話をしに行くのだという。
漫画タンタンの財団の働き者トマがそれを引き受けそうだということ。
さっそく聞かせてくれた。
不思議な短い響きの低音と伸びる高音が鳴るピアノ。
どう聞いても打ち込みのエレクトロなんだが、生ソロ演奏だと。
町の雑談と狂ったマルタンの叫びが交錯しオーケストラにつながる。
ビートボックスなんてものじゃない、口ドラムの生々しさ。
ストリートからこぼれたミュージックコンクレートだ。

これらは2年前にパリで録音したものだという。
なんでリリースしなかったのだと聞くと、誰も引き受けなかったから、とのこと。
こちらの友人たちはこうやってリリースの予定がなくてもよく録音する。
彼はこれにアジアを旅した時のアコーディオン型ノートに書いた絵をつけたいとのこと。
実現すれば渓さんのソロより長いジャケットになるだろう(あれはメビウスだけど)。


著作権は所有しない、音楽はみんなのものだからコピーフリーにするんだと彼はいう。
徹底したアンダーグラウンド・マニフェスティアン、マチューハー。
時に難しい男ではあるけど、彼のことは大好きで、彼の音楽を愛する。
バルセロナから帰ってきた、っていったら、あの町すごいだろう、
みんなコークのやりすぎで、血を吸った蚊まで早く飛ぶんだぜ、と笑う。
あはは、しょうがないなあ。

彼の一緒にアジアに冒険に行くのは、そう遠くない未来だろうと思う。


この後一人になって作業を続け軽く食べたりして時間をすごしていたら
夜の始まりに急に眠くなってとりあえず寝よう、とベッドに入る。
9時台だったと思う、そのまま起きれなかった。