ライブ、突然のキャンセルinバルセロナ

昨日早めに寝たので比較的朝は早く起きれた。
マルクとパクヤンの目覚めを待つ。
マルクはなかなか部屋から出てこずでどうやら仕事をしていたみたい。
昼1時待ち合わせでニコと食事に行く約束だけど、おなかが減りすぎているので
ほんの少しだけ朝食を食べる。
しかしバルセロナのハムとチーズはとことんうまい。


三人そろってまずはマルクのアトリエへ歩く。

マルクはシャワー浴びて髭をそってこざっぱりしている。
聞くと今日はチャットで知り合った女の子とブラインドデート、らしくて決めている。
生身の女にもぜんぜん苦労しないこの世界でさらにいくか、このやろう!


まず彼のアトリエによって彼の作業待ち。
ここには絵本がたくさんあるのでぜんぜん飽きない。

そのうちマルクが目を閉じろ!というのでパクヤンと二人で目を瞑ると
僕らの手に1冊ずつ絵本が渡されていた。
僕らが二人とも買おうと思っていたものだ、払おうとするがそんなのは無駄。
値段だって安いしここで友達たちと出版しているって知ってる、でもそれをこうやってくれることが嬉

しい。
中を見ると英語もあるので分かりやすくて嬉しい。
非常に親しみやすくしかも高い志で作られているのがわかる。
なにより手描きなのがいい、日本に帰るとCGばかりを見ることになる。


マルクの用事が終わったらレストランへ。
ニコがお勧めのカタラン料理店だ。
全部が歩いてすぐの場所っていうのがとてもよい。
古くてきれいなお店で好感触。
オーダーはニコのお勧めそのままでいく。
パクヤン、ニコ、マルク、マルクの出版仲間であるリキとパウと僕。


ニコの好みなのでひたすら肉になるのは分かっているけど地元飯が食いたい。
パクヤンは野菜ばかりなのでこちらでいうと前菜みたいなものばかり、少しおすそ分けもらう。
炭火で焼いた匂いが香ばしいアーティーショーは昨日より美味。
僕の皿はニコと同じもので骨付き牛肉を焼いたもの。
焼き方も彼のお勧めでめちゃくちゃなレアでお願いしている。
あまりレアにすると温度が下がりやすい、しかしこれがいいそうでいただきます。
かつて食べたことがないほど生焼け肉、味は、スイート、としかいいようがない。
南米各地の牛食文化国がスペイン語圏であることを思い出した。上手だなあ。
芋もパンデトマトもどれもうまい。
マヨネーズは辛さを感じるほどのニンニクが入っているのが名物。



みんなで楽しい食事だ。
しかもなんだか知らないけどニコが頼むとみんながオイオイという顔をしたワインが出てきた。
ものすごく安くて酔っ払いやすくて肉に良く合うらしい。
カタラン人がよく喧嘩するのはこれのせいだという。


なぜかこの店は働いている人たちがカタラン人ではなくスペイン人で、ニコはこれがすごく変だという


ここにいる間、スペインにいるという感じよりバルセロナ、カタランにいるという気持ちが強い。
これは僕にとって嬉しいことだ。
デザートにチーズに蜂蜜をかけた甘くておいしいものを食べる頃には満腹だ。
リキはシートペーパーの脂の染みを使って絵を描いてプレゼントしてくれた。

こういう小さなことが、僕はとても大好きだ。
もう満腹でのみまくりで食いまくりでふらふらである。
昼寝がしたい、というところでお勘定。
こんだけ豪勢に飲みまくり食いまくった割にはやはり安い。
素晴らしいランチだった。

ランチ後はマルクたちとお別れ。
ものすごい世話になったマルク。
誰かにカタランで気軽に人を泊めてくれるということは例外だといわれた。
彼はもてなし好きのブリュッセル人もかくや、という親愛をこめて僕らをもてなしてくれた。
バルセロナに来た大きな収穫のひとつは彼と会えたことだ。


ありがとうマルク。


パクヤンと家に戻り、ニコ低へ。
二人が休憩している間にネット作業など。
ここで結構長い時間をすごしているうちにショックなニュースが。
今夜のライブ、キャンセル!
ライブの1時間前にキャンセルは辛い。
どうも連絡がうまくいっていなくて店主はキャンセルされたものと思ったらしい。
どうしようもない、かなりがっくりする。
予定が消えたのでぶらぶらしてそこらでチョコレートつけて食べるチュリトス食べる。


僕らを見に来たお客もきているようなのでとりあえず店に行ってみる。


ラ・ネナ、と日本語でも書かれたこの場所はチョコレートカフェ。
禁煙で酒がない、というここらでは珍しいスタイル。
しょうがないのでチョコレートを注文。
バニラアイスクリームが入ったホットチョコは確かに絶品だが、
ライブがなくなるとこんなに落ち込むのかと自分でも不思議なくらい滅入った。
ここにいることすらどうでもよい、楽しめない。


音楽に飢えてきた。
ちょうどウリがどこかでライブをしているという、他の人に聞くが行く気はないみたいで
道を聞いてパクヤンと二人で行くことにする。
ここからがまたちょっとうんざりで、みんな自分の道の教え方が正しいと信じ込んで
特にニコは話をまったく進ませようとしない。
結局パクヤンが、この人のことを信用するからニコ黙って、というしかなかった。
これもここらしい話だ。


+++

少し歩いていて皮のトランクが落ちているのを発見する。
ゴミで捨てているようだがきれいだしまだ使える。
ちょうど帰りのかばんが必要だったのでこれ幸いと拾っていく。


パクヤンと道を歩いていたときにいろいろまた話していた。
ライブがキャンセルになってかなりしょぼくれていて、
ああ、演奏がしたい、音楽が聞きたい、飢えていた。
知らない場所だろうが足を伸ばしてウリのライブを見るために迷っていた。

寒い路上で倒れるようになっている人を見て、ああ、冬の東京でこんな風に
なってたことがあったよ、誰も泊めてはくれず金もなく、ただ毎日ライブがあって
野宿同然の生活をしなくてはいけないときもあった、というと
パクヤンは「daysukeはボヘミアンだ」といった。
僕ら日本人はただ印象だけでこの言葉を使う、僕は真の意味を知らないので聞いてみた。
自分が信じ行うもののために、死ぬ人、死ねる人だ、という。
そうかもしれない、僕は知らない。
ただいまやっていることは命をかけるに値することだし、とても楽しい。

もうこれは旅ではなくなってきた。
少なくともブリュッセルを中心とした暮らしと人間関係は。
心地よく気持ちよく、この手で触れ抱きしめ、この足で荷を運び、嘘のない友を作り
誰にも知られないところでも喜びを生み出し、
いつも音楽とともにあり、笑い泣いて生きていこう。

誰がなにをしようと、音楽への愛情だけは奪うことも消え去ることも
買い取ることも売り渡すこともない。
いくら振りまいても失うことはなく、豊かになっていくだろう。
音楽以外のすべてを失っても、音楽さえあれば何度でも生み出しなおせる。
文無しでも、ものすごく、リッチな気分だ。


+++

電車降りて地図の通りに行こうとすると地図は少し間違っていて迷う。
なんとか道すがら聞いたりして正しい道を発見し歩いていく。
たどり着いたバーは奥に深く分かりにくい。
一番奥でウリたちが演奏している。

チェロ、コントラバス、ドラム、ギター、ポエトリー。
全体的にジャズっぽいが、日本の偽者スタンダード臭さはなくていい感じだ。
あのパワフルドラマーのウリが非常にソフトな演奏をしているのも印象的。
2,3曲聴いて軽い拍手があってブレイク、と思ったらこれで終わりだという。
なんというあっさりした客だ!驚いた。


ウリと乾杯して話す。

この後例のパウロから誘われているので一緒に行かないか、というと
彼は店のドラム借りていたのですぐに車で出れるというので出かける。
住所を聞いて雨の中、捜し歩いて着くと外は冷たいが中は暖かい空間で
10人ほどの人たちがディナーパーティーの最中だった。


主はサーシャ(男)というロシア系イスラエル人でライブ見に来てくれていたから顔に見覚えあり。
もちろんあのボーダーTシャツ男パウロも満面の笑顔でいる。
実は腹ペコなので、と思ったらパクヤンにも食べれる全ベジー、いただきます。
かなりおいしい、ワインもがんがんあけられておいしいたのしい。
本日のチョコレート摂取量は完全にオーバーしていたと思われる。


パウロはパクヤンと話し込んでいて、僕はウリと話をした。
バルセロナの音楽シーンのことやそれにまつわるお金のことなど。
どこだって楽な話なんてないけど、ヨーロッパにいるとミュージシャンはミュージシャンでいることに
なにより喜びを感じていることを全身で表す。
僕だってそうだ、だから欧州で僕は居心地が良いのかもしれない。
どんどん会話は盛り上がるのだが、ウリも僕らも眠そうで早めに退散。
この町では夕食は11時くらいで宵っ張り。
みんなにお礼を言って帰ることにする。


ウリの真っ赤な車で送ってもらい無事にグラシア地区に到着。
もうここらの道は分かるので問題はない。
ウリ、ありがとう。また新しい仲間にあえた。
またの再会を誓う。そう遠くはないだろう。


帰ったらパッキングもそこそこに早寝。