バルセロナへCrappyMiniBand + Daysuke@BOCANORD (BCN)

目覚ましで目が覚める。
今日はスペインに出発する日だ。
昨日の続きで身支度をする
5日間のたびで荷物は最小限に減らしたい。
ソフトケースの中に最低限の衣類を詰め、pcなどは手持ちのかばんに詰める。
ただでさえハードケースでtuba移動するのは大変で、機材を預ける心配のストレスも大きい。
負担は最低に。
パクヤンちで待ち合わせてMIDI駅へ徒歩で。
彼女は今回黒いグランドトイピアノを諦めたので少し身軽だ。
思ったより時間が余っているので駅のカフェでコーヒー飲んでゆっくり。
狙った電車に乗ると予定通り12にジャストに到着した。


チケットもないのにチェックインができるというのは不思議だが楽だ。
ハードケースにソフトケースをくっつけて防護、幸いにも手運びで持っていってくれるらしい。
ちょっと安心だ。
ニコとリン、そしてニコの友達でバルセロナから来ていたラウルと初対面。
羊のような柔和な目をしたひげもじゃの男だ。
無事チェックインをしてラウルは買ったサンドイッチが腐っていたようで返品、
ニコはトイギターを手持ちなので空港の中で弾きまくり歌いまくる。
あはは楽しい、どこでも演奏するっていいよなあ。

ボーディング待ちしているとなぜか身障者と同じく最優先された。
持ち込み荷物がまあまああるのでこれは好都合、どういう裏技だ?
5列シートの小型飛行機で一路バルセロナへ。
ヨーロッパ人は身分証だけでも自由に行き来ができるらしい。
住む国も選べて、これはかなりうらやましい。ヨーロッパの籍が欲しくなるよ。
隣ではリンとパクヤンがipodを聞いている。
リンが面白い、聞いている最中ライブしてるのかっていうくらい、音楽に入り込んでいる。
こういう聞き方する人にこそ、ipod持って欲しい。
後ろのフランス語しゃべるアフリカ人の若者数人がうるさい。
黙ると死ぬ、てくらいの勢いで話しまくってる。
うるさいけどまあ楽しそうだからいいか。
日本人はこれに比べると異様に会話しない民族だ。
そこそここちらでしゃべるし、日本だとうるさがられる僕も、こちらだと無口の部類に入る。
2時間ほどのフライトで無事到着。


南国らしい木の姿、太陽が照っていてあったかい。
30年ぶりにバルセロナに帰ってきた。
父と母とヒッチハイクや道で買ったオンボロ中古車乗り継いでヨーロッパを一年回ったとき
僕は4歳から5歳だった。
まさかミュージシャンになんて戻ってくるなんて誰も思っていなかった。
リンとラウルは行動が一緒でここでいったんお別れ。
こういうちょっとした別離のときにも抱き合いキスをする挨拶はこちらのもの。
人を大事にする気持ちが好意にすぐ現れるのは、心地よい。

ニコは持ってきちゃいけない区域までカートでやってきて持ち捨て。
駅についたらニコのカードで三人ともゲートをくぐる。
1度乗りかえて線をかえて移動。
最寄り駅で降りたら荷物転がして徒歩で、ニコのお父さんの家に到着。
ひげを生やした立派なお父さんに挨拶。
3階立てエレベータと2フロアにあるテラスつきの立派な一軒家だ。
腹ペコなのでパンを買ってきて軽く食事。
いきなりビールとワインが出てくる、そしてチーズ、ハム、トマトなど。
パンにニンニクとトマトをこすり付けてオリーブオイルをたらして食べる典型邸なカタランの食事パンデトマト。
懐かしい記憶がよみがえってくる。
ハムもチーズもベルギーとはまた違いおいしい、ここは肉の王国だ。
田舎のものだというソーセージも焼いてくれてほうばる、これもうまい。
寝不足の移動後でちょいと疲れも出て、ここはスペイン、時間は遅いと昼寝をする前に
家を探検する。
間取りは細長いがきれいで新しい家だ。
家具修理工房や書斎などもついて本当に立派。
ニコの部屋はピアノがあり謎の拾ってきた弦楽器やレコードなど面白いものがいっぱい。
ワーグナーエチュードを弾いて二人が遊んでいる。

僕は書斎で軽く休む前に偶然無線を拾ってネットしてからごろん。
あっという間に出発の時間。
お父さんの車に乗せてもらって移動、結構近い。
場所はカルチュラルセンター、だということで若者がたむろっている丘の上の大きな建物。
グラフィティも派手だ。
荷物を積み込み準備しているとリンたちがやってきた。
また新しい仲間、ウリはドラマーでジョヴァンニの不在をカバーしてくれる。
皆からとてもよいドラマーだと聞いていたので楽しみだ。
ラウルもウリもブリュッセルの人たちとはまた違ったかなり強い個性の持ち主らしい。


ライルのメイン楽器はフェンダーローズのベースキーボードで、僕が無知なせいか初見。
こういう単機能的な楽器には非常に弱い。

ウリは普通のドラムセット、ゾノールだ、いいの使ってるなあ。
比較的広いステージにセットしていると前方左手に空中ブランコが設置されていて練習している。
ジャグラーも何人かいるようだ。
サウンドエンジニア二人はいかつい気のよい兄ちゃんたちで気さくだ。
片方は英語が少し苦手なようだがコミュニケーションは上々。
音のバランスが難しくてチェックはなかなか大変。
僕は久々にマイク使用、しかしtubaとカヴァルだけなので非常に楽。アコースティック万歳だ。
隣のバーでビールもらってくつろいでいたりもする。
階上ではカポエイラのような華麗さで踊るヒップホップダンサーたち。





そうこうしていると開演時間の10時をとっくに越えているのだが全員のんびりしたもので、客の姿もほとんどない。
スペインへようこそ、と笑顔のウリだ。
いったいどれだけ押しただろうか、気がつけば満席満員立ち見パンパンのお客さん。すげえ。
今日はジャグラーたちのショーと僕らクラッピーミニバンドが交互に演奏するフリーキャバレエというイベント。
20分、10分、10分、40分の演奏時間の合間には何かショーがあるらしい。
まずは僕らで演奏。曲と即興を織り交ぜて。
リハでもいい手ごたえだったがウリのドラムはかなりハードヒッターでしかも即興のダイナミクスも大きい。
今回の旅、僕は本当にドラマーに恵まれている。
エリック、ジョアオ、ジョヴァンニ、そしてウリ。
ドラマーに焚きつけられる部分が大事なのは管楽器の宿命だ。
ただノーリハーサルで曲の入り際は僕がキューを出すからいいものの、エンディングをよく知らないのが
裏目に出て(当たり前)終わり方が不安定でそれはともかくフェードアウト系の終わりが多くなるのが辛い。
明日はリハしよう。


合間はあのジャグラーたちが空中ブランコ棍棒投げロープのぼりなどいろいろと多彩な芸をする。




昨年エレクトリックサーカスというアンダーグラウンドの移動サーカスと共演したことを思い出す。
演奏はバリエーションに富んできてなかなか面白い。
ラウルのアプローチは他の人がすることなかったユニークな空間の埋め方をするし
ウリのパワードラムでハードコアなイケイケになる面がいつもより多く強烈。
オフマイクで馬鹿音量ソロでロック魂を見せまくるのもやってもた。
お客さんの反応は食い入るように見て大拍手、静かに見られることにここヨーロッパでなれていなくて
受けていないのではないかと思ってしまうがそうでもないらしい。
カタラン人は結構保守的だと聞いている。


エンディングの微妙さを除けばよい感じのものだったと思う。
最後の歌曲のニコのトイギターのチューニングがめちゃくちゃでかなり笑う。
さすがオンボロ、クラッピーの名前がつくだけはある。



終わったら比較的早く片付けをして隣のバースペースに移動してビールとピザ。
初めてのぎこちなさがあったにしろ楽しいライブだった、ラウルとウリと明日からもできるのが嬉しい。
ニコは久々の地元で友達ががんがんやってくる。
カタラン人ってスペイン人とちょっと顔も違う気がするなあ。
饒舌で愉快な男たちがどんどん集まる。
しかしこういう公共の若者施設でがんがん遅くまで酒飲んで歌って踊って騒ぐのも面白い。
こういう余裕がないと、何かと面白くないよな。
会場を出る前にエンジニアの兄ちゃんに挨拶、むちゃくちゃ楽しんだとのこと。
明日のライブも見に行くよ、仕事もいいけど楽しみに行くのが一番、とは嬉しい。


タクシーを拾いまずはニコ父邸で荷物を分け、ニコの近所の友達で僕とパクヤンを泊めてくれるマルクの家へ徒歩で移動。
このあたりガリ(ル)シアは古い住宅地でセントラルとは違い昔の風景が残っているという。
並木はオレンジで、苦いのでジャムを作るんだそうだ。
似たような建物が続くなかのマルクの家は3階。
シェアで別室に女性がいるそうでもう寝ているので静かに。
誰も使うことのないベッドが二つあるのでそこを使わせてもらう。
パクヤンは部屋まである。
アパートの感じが強く懐かしい気持ちにさせられる。
荷物を置いて部屋の説明を聞いたらまた出かけてバーへ。
パーティーを少し遠いので中止、明日出演する場所でもあり下見を兼ねる。
静かな町の中を通ってたどり着くと中は爆音で音楽がかかっておりけむい空気のなか大盛り上がり。
2時半過ぎているのでやはりみんな元気だ。
カタラン名物のビールで乾杯。ラベルにジャズフェスサポートの告知あり。
ここでかかっている音楽、これがダサい、さっきセンターのバーでかかっていた音楽もかなりダサい。
この国の音楽センスに少しダウトスイッチが入る。
30分ほど飲んでいると閉店の時間らしくコップを渡されビンを取り上げられ音楽が止まり照明が明るくなりお開き。

寒い表に出てからもニコと友達連中は話し込み、こちらはパクヤンとアジア会議。

彼女は中国人だがベルギー生まれ育ちで中身は完全にヨーロッパ人だ。
文化の齟齬と理解の波を繰り返す長話だけでもかなり時間が過ぎていく。
しっかしこっちの男どももよくしゃべるなあ〜。
かなり遅い時間になってやっとマルクと三人で戻る。

静かに入ってちょっとしたらさすがに就寝。