video session@maison de purple

朝はいろいろと飛び回り、昼にはリハ、6日にパリに行くブラックライトオーケストラの新曲。
難しいが何とかなりそうだ。


その後にはまえにかいた素晴らしいシャンソン歌手カリムのリハ。

おそろく美しく強い目を持つ歌い手とわが友エリックと。
僕の出す音すべてを感じ味わおうかとするかのようなものすごい強い受容。
たった一曲のリハにライブと変わらない情熱と技術をつぎ込んで歌う彼に感動。
前にはじめてみて大好きだった曲をやれて幸せ。


睡眠時間が2時間しかないので頭をぜんぜん使えない、
複雑な構成とリズムを持つ曲をもちろん楽譜なしで覚えまくっていく。
なぜそんなに早く覚えれるんだ、ときかれるがわからない、
たぶんいま頭をまるで使ってないからだよ、というと
カリムは、君には星から力が降りてきているんだ、と真顔で言われた。
曲も演奏もテンションも、めちゃくちゃいい。
リハが終わって外に出て、思わず寒空に小躍りした。
まだこんな出会いが、まだまだここには転がっているんだ。


リハのテンションが低いのが嫌いだ。
高ければよいのではない、音楽への愛情はリハだろうが本番だろうが変わらないはずだ。
一緒に演奏する喜びがあれば、こんなに幸せな気持ちになる。


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閑話休題


しかしなぜこんなに無関心な客ばかりが来るのに、バーやカフェはライブをするのだろうか?
前々から不思議だったのでグレッグに聞いてみた。
そしたら
アドヴァタイズメント
だって。
ということはちんどん屋と一緒なのか?


店の宣伝のために、こんなクオリティの高いミュージシャンたちのインプロを
やらせまくるのか???
店だって無関心な場合が多いし、客はノーチャージで我らには
ギャラも飯も酒も出る。
本当に不思議なシステムだ。
これの功罪は大きいと思う。
ミュージシャンは客に関心を払わず、客は音楽に金を払わない。
しかしそこに素晴らしい音楽があることもある。
ぼくはそんなアンダーグラウンドといわれる場所で暮らしている。



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これからライブ。
日本のチャンバラのDVDを無声にしてその前でエレクトロハードコアインプロ、
するらしい。
誰一人として一緒にやったことがないメンバー。
そういうコンセプトものはつまらないものになってこけること多いから、気をつけろよと
よく知らないサックス吹きに忠告をしておいた。
しかし未知の世界へ行く。


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さっきタイの内戦をかいくぐってきたマチューと今回はじめてあった。
ベトナム、タイを独りで1ヵ月半巡り、独力でさまざまなことを切り開いてきたようだ。
デジカメなんていらない、彼の話力とあの素晴らしい絵があれば。
夢のような世界が開けてくる。
俺らは夢の中の世界を生きるんだ。
それで生きていく。


車でトワンが迎えに来る。
楽器ひとつで乗り込んでセントラルへ。
ションベン小僧のすぐ近所なのですごい渋滞。
しかしこんなもんみにくるために来る観光客は相当の馬鹿だな。


会場はmaison de purple、直訳すると人民の家。
同じ名前の場所は探すと無数にあるらしく、社会的な意味合いのある会場、とか。
家のすぐ近所にあると思っていたらそこは違うといわれた。
新しく店を作り直したら。まったく人民の家、ではなくて高いただのおされカフェに
なってしまって怒った人たちが、別の場所に人民の家を作り直したとのこと。


入ってみるとなるほど、近所のそれとは違い、なんとなく柄が悪い。
身体検査するとそのままいろいろとしょっぴかれそうな顔してる人が多い。
今日の共演はほとんど初対面ばかり、
サックスのトワンは少し知ってるだけ、ギターのトイクはどっかで見たことがある、
(すごい顔してるのですぐわかる)エレクトロニクスのイゴールは長身で墨入り、
ドラムのフランクはドイツ人っぽい。


とくに友人もいないのでふらふらと展示を見てすごす。
アジアの貧民屈やテロの現場の写真。
完全に布で顔を隠してまさかりをもってこちらにたたずむものが印象的。


今日はコンセプトありで、何か日本のDVDを無声でかけながら即興演奏。
そういうヨーロッパ人のコンセプトくさいのは、たいてい失敗するからやめたら、
と一度は牽制しておいたが、まあやることに。


プレイヤーの使い方がイマイチわからずしょうがないからぶっつけでやることに。
会場はあふれんばかりのすごい人垣。
いきなりサムライたちの戦闘シーン。
切腹の2枚目からかけたからなあ、あっという間にクライマックスで腹切って無常終わり、
すぐに必殺仕掛人に切りかけて演奏続行。
エレキやってるイゴール、ありもんのエフェクター組み合わせてるだけの
こちらの人にありがちな部屋で遊んでるだけみたいな人でかなり不用品。
トワンは各種サックス・バスクラなど使用、まあ普通。
フランクはロック上がりということが良くわかる、まあ普通。
トワンだけが少し情景の進行と何かかかわりがあるような演奏をしていた。
全体的に演奏と映像のかかわりが希薄、こういうのもこちらにはよくある。
しかし煙い、とにかく換気という言葉がない国なので空気が悪すぎるうえに
出演者ほとんどが吸いながら演奏するので苦しい。
映像任せによく休ませてもらった。
トワンはサックスが光る。


まあ悪くはなかったと思う。
面白かったか、といわれて、あんたらが日本人とぜんぜん違うから面白かったという。
客は馬鹿受け大興奮。
店の店主(あきらかにやばそうなおっさん)に親愛の情を示す3回キス挨拶を受ける。
去年パリへの珍道中をともにしたオリビエがきてくれた。
あいかわらずジャグリングで飛び回っているらしい。
彼に会えたのはとても嬉しかった


なかなか面白い場所なんだけど、なんかおしいな。
酔っ払いやなんかほかのもんが好きなのが良く集う。
俺は音楽好きが好きだ、目の色が違うからすぐわかる。
どうもここはお薬臭い臭いがする。
この国でもコカインはかなり出回っていて問題らしい。
ソフトなものはそこら中にあるようだが、俺は酒でも酔うのはあまり好きではなくて
酒は味が好きで、自分の見失ったり意識変容する薬物などに必要を感じない。
ロッコにいってる間、酒も何もないあのクリアな時間はとてもよかった。
酒は、友人たちとの良い時間をすごすためのものだ、自分にとっては。


この日は滞在中でも最も忙しかった日。
トワンが別のセッションに行くというのでそれに合わせて車で送ってもらう。
この人を含めて、俺は今日の夜あった人とはこれから友達にはなれないな。
忘れられない言葉がある、
誰かがトワンは前にエリックの家に住んでたっていってたけど、といったら
「それは違う、人を信じるな」と聞き間違えようのない強さで彼は言った。
俺は人を信じるよ。ただそういうこと言う人のことは信じがたいな。


かえって二日ぶりにやっとシャワーを浴びれる幸せ。
温かいものを口にして寝床であっという間に撃沈。