オフ/モロカンパーティー/ライブ鑑賞

昼間は泊まっているグレッグ邸にてモロッコランチパーティー
朝から買出しに、今日はBIOショップではなく
こちらによくあるalimentationという八百屋とか小間物屋をかねている商店で買い物。
ロッコ料理を作るときはモロッコ人の店で買う、とグレッグ。


オリーブとかその店で漬けていて量り売り、驚くほど安い。
野菜やハーブやいろいろも大量にかいたして、会計したら日本のでオリーブだけ
買うより安かった。
ほんと泣くほど安い。
ルックス最高な肉屋で鶏と羊も仕入れて完璧。


主な調理はグレッグに任せてあとは野菜を切り込んだりする。
今日の主なお客はクルワサン、この新しいバンドのメンバーで食事を囲もう、
というのはグレッグの案だ。
ほかにもお呼ばれ御客さんが数人参加で結構大人数に。
ロッコのスパイス煮込み料理タジンが三つとモロッコサラダ。
タジンは鶏肉と漬けレモンとオリーブのタジンと、
サツマイモとゴールデンレーズンと羊のタジン、
パクヤン用にベジタリアンタジンも。
さらだはトマト、たまねぎにコリアンダーがたっぷり。
いただきます!


ああああーーーうまい!!
あっつあつのタジンをモロッコパンでつまんで食べる。
なんていうおいしさ。
サツマイモのふかふかさと羊の香りの不思議なマッチング。
ちょっと食べてみたらベジーも深いお味、ズッキーニとジャガイモがたまらん。
ロッコ直送グレッグ秘蔵のスパイスがめちゃくちゃヤバイ。
これだけは日本には絶対無い味だ。


なにより大好きな友達、この新しいバンドのメンバーとの幸せな食卓。
もう食べれないよ〜と叫びながら一番長く食べているジョアオ。
ベルギーで一番やせっぽちの彼がもりもりとまらない。
みんなでミントティーをエンディングで。


あのマラケシュの幸せな食卓を思い出した。
みんなが笑っている、隣の人にパンを与え、ひとつの大きな皿にみんなで手を入れる。
一回一回が一生に刻まれる喜びの食事。
やっぱりどこでも大丈夫だ。
好きな人たちと普通にまっすぐいれば、どこでも望むものはそこにある。
失うことのない無限の楽しみだ。


ライブがあって遠出しなくてはいけないジョアオが後ろ髪ひかれてる。
グレッグが何度も最後のお茶だから、といって引き止める。
コレもモロッコ流なんだ。
僕はジョアオのことはほとんど知らない。
ついこないだ知り合って一緒に音を出して仲を紡いでいった。
もうこれから彼なしで演奏する人生が考えられないくらい好きだ。
こんな出会いがあるとは、自分の人生はなんと幸運なんだろうと思う。

皆が分かれていく夕べ。
ブリュッセルに昼は短くなった。
久々のコインランドリーで洗濯。
なんか人気がなくて不気味、いる間に4回も入って話しかけてくる
うっさんくさいアジア系の若い男もすごく不気味だった。


+++


夜10時に始まるライブを見に行く。
駅がわかりにくくて迷っていると同じトラムに乗る男が連れて行ってくれた。
初対面で少し警戒していたが親切さんでよかった、シュクラン。


ついたらもう始まっていたライブ。
クラッピーミニバンドで一緒のリンがボーカル、キーボードはこないだエリック邸パーティに
べろべろで乱入しては華麗なプレイを見せたヨゼフ、
メシアニストで有名だというバリサクに、ドラムこないだ共演したエリックシールマン。


エリックのドラムに釘付け。
もうたまらんかっこいい。動き一つ一つかすごい、繊細さというよりは
まさかりとなたで細かいところまで美しい線まで彫刻していくかのようだ。
ヨゼフは赤いフェンダーローズの上にラップトップやエフェクトも積んで一人レイヤー。
リンはジャズボーカルのようだがエフェクトによるループボイスが浮遊する。
バリサク氏もエフェクト・アンプ使用だ。
うーむ、深みのある音楽だ。
そのなかたった一人完全アコースティックのエリックの音がめちゃくちゃ立っている。
自分もこの可能性を追求したくて生音だけにしているんだ。


しかし


このバー、めちゃくちゃうるさい。
ここももちろんノーチャージライブ、セントラルが近くて大宴会。
聞いている人は1割強くらいか。
僕らは真ん前で囲むようにして音に入り込んでるのだ。
想像してほしい、4月の新宿の心斎橋の大学生新入生歓迎コンパを同時開催している
養老の滝及びつぼ八で、すばらしい即興演奏が行われているのを。
ほんまそんなかんじ。
演奏できるミュージシャン、音に入り込める少数の客に感心する。


1部が終わって話しかけると、2部はやらない、という。
さすがにこのうるささの中ではこれ以上は無理だと。
空気も激悪で普通に会話することすら満足にいかないこの騒音だもんな。
おしいなあ。これもベルギーの一面だ。


夜0時を越えたのでヤニックを呼び出す。
彼に頭をくっつけて友人たちで円陣を組み、歌う歌は
ハッピーバースデー。
おめでとう、我がベルギーの親友よ。
33歳になりました、と彼は日本語で言う。
これからもジジイになるまで音楽に狂って愛して、楽しもう。

僕らミュージシャンは、祝福するために生きているのだから。


帰りの夜道、何かはじめて悲しい気持ちになった。
悲しいとは少し違うな、いやな気持ちに今日の昼に触れてしまったんだ。
この旅が始まって以来、愛情に囲まれており、
強欲や人間のタフさ加減に翻弄されることはあっても
こんな気持ちになることはなかった。
それは人だ。
ちゃんと話を聞いてくれない人と話すのは気持ちがささくれ立つ。
日本でずっとあったことだ。
人の話を信じない、自分の価値観だけで生きている日本人と話すと、辛い。
以前は暴力で排除していたがもうそれはない。
どうしてよいかわからずこの夜は一人夜中寝る寸前まで表をほっつき歩いた。
疲れ果てて頭が回らなくなってからベッドにダイブした。


日本での生活の不安はただひとつ、これだけだ。
普通でまっとうで真剣なコミュニケーション。
これさえあれば、苦労しないのだが。
帰ったらみんな、どうか頼みます。
これがないと生きていけない。