UKIYO(gio,joao,daysuke)@cafe murmure,bxl

UKIYO:giovanni di domenico(key)daysuke(tuba)joao lobo(ds)


この日のことはうまいこといえないだろうな。


ブリュッセルは朝から大雪。
天気が悪いならいっそ雪になってしまったほうが嬉しい。
この町の晴れた空は好きだが、暗いグレーもくすんだ白もよく似合う。
雪は好きだ。

昼はなんだかんだあちこちを歩き回り手袋も手に入れた。
何せ寒いのだ。
少しだけ昼間をゆっくりし、夜に備える。


ミュルミュルはもうなじみの場所だ、音楽好きが集うカフェ、バー。
一人で歩いて場所までいけるのも嬉しい。
少し久しぶりに会うジョアオとジョバンニとのトリオ。
ジョバンニはフェンダーローズ、一世を風靡したヴィンテージキーボードだ。
驚くほど状態がよい彼の友達で宝もの。
ジョアオは自分のセットを持ってきた、ジョバンニの家がすぐ近くなのにもってきたあたりで
今日の気合がうかがえる。


この日、自分は丸裸だった。
強力な鍵盤はアンプから出る、すさまじい存在感を放つドラムから叩き出される音に対して
自分はただの生身の音だけだった。マイクはない。
皮を剥がれたように剥き出しになった心そのままの状態で無心に吹く。
快楽はあるのかないのかわからない、なぜなら自分自身が快楽そのものになっていたから。
自分では感じられない爆発的な歓喜
安易な回答は得られない、信頼関係が織り成す幾つものレイヤー。
すばらしい時間だった。
 

たくさんの見に来た友人も、もはやリピーターになってきた僕のお客たちも、
ニコと京都ズのライブを見に行ってからはしごで来てくれた人たちも
ここにいることができた俺らもみんなも、幸運でした。
ジョアオのくしゃくしゃの嬉しそうな顔が忘れられない。
彼の恋人のアリシアのはじけるような笑顔と喜び。
かましい店内での演奏、客の熱気が虫眼鏡の太陽光線のように収斂する。
よいライブでした。


ここまで剥き身になるとさすがにふらふらになる。
ビールもうまいが比較的早めに退散。
みんなと抱き合いキスでお別れ、この夜は格別だ。
雪のブリュッセルを踏みしめて帰宅、就寝。