クルワサン@stekerlapatte BXL

daysuke2008-10-30

クルワサン:daysuke(tuba) pakyan(p,key)greg(sax,genburi)joao(ds)


朝は普通に過ごしてネット作業も。
2ヶ月暮らすのに靴が一足しかなくて、衛生上も気になるので古着屋へ。
前からショーウインドウに目をつけていたスニーカー。
店員は英語まったくダメでそこにいたアフリカンが訳してくれた。
メルシー。
もうサイズ天国の嵐で、迷うが、どうせ安いのと日本では靴なんて買えないので2足。
20ユーロでメレルの新品同様の皮スニーカーと可愛い安全靴が買えた。


夜はstekerlapatteという店へ。
パクヤンと彼女の弟と一緒にゴー。
ちょっと細長い雰囲気のよいレストラン。
演奏会場はその2回にあるところで照明もあり少しキャバレーっぽい。

パクヤンの多くの機材のセッティングなど、今回はいろいろと楽器も違うので
あれやこれや準備をする。


ドラムのジョアオと僕は腹ペコであった。
このおみせのライブは食事つきでそれが飛び切りおいしいと聞いている。
メニューがやってきた。
やっぱりフランス語とフラマン語で書いてあって読めない。
すこしだけ食材の区別がつくくらいだ。
ジョアオが楽しそうに悩んでいるので、アドバイスをもらう。


どれもこれもうまそうでしょうがない。
こちらでは高くて食べられない魚料理も豊富である。
隣の赤字のメニューが気になる、これ何?
グレッグがこれは秋の・・・といったところでぴんときた。
ジビエだ、野生の食材、今が旬のものが多い。


詳しい説明を聞くと小鹿にウサギなどいろいろ、野生のイノシシをチョイス。


わくわくディナータイム。
給仕してくれる女の子、顔が超キュートでかわいいんだけど体つきは相撲取り。
背は普通に低いんだけど、絶対僕より体重あるなあ。
顔はアイドルのよう。気になるなあ。


出てきた皿、思わず見とれる。

薄切り(といっても分厚い)肉、ソースが前面にあり、マッシュポテト、それになにか。
ベルギーでは絶対つけあわせで出てくるフリッツ(揚げ芋)を取り分けていただきます!


なにこれ。


ソースの中からさまざまなハーブが折り重なって香る。
あちらこちらに気を取られていると、ソースの中にまたしても何重にもなった甘みが
口の中を波打つ。
といってもしつこいわけではない。
きれいなつけあわせを食べてわかった、野生のベリー数種と洋ナシ、
この付け合せと同様のものがソースの中に入っている。
洋ナシはオーブンで焼かれていてふにゃっとして香ばしい。


ナイフで切れ目を入れるとうっすらイノシシの血がソースに滲む。
ソースと一緒に食べると、一瞬の野性味が華やかな香りと混じってなんというか。
ものすごいいやらしい食べ物。


まさしく美女と野獣がひとつの皿に乗っている。
まるで山の村を舞台にした御伽噺の絵本を、そのまま食べているみたいだった。


ほかのみんなはおしゃべりしながら食べてたけど、

僕は言葉を失い、ただただ味わうことに集中していた。
こんな料理は食べたことがない。
すばらしいメンバーによる、聞いたことのない音楽を味わうようだ。

マッシュポテトはベルギー独特の味付けである種のスパイスが入っている。
かなりなボリュームだけど、最後になくなるのが惜しいほどだった。


やっぱヨーロッパの肉料理には脱帽。
こんなの日本で絶対食えないよ。
ちょっとここすごいよ、普段でも来たい。
まあ僕が払うには、財布が痛い、
いまの欧州暮らしの僕で、もっとも高価にして贅沢な食事をいただいた。
これだけでも今日のギャラに匹敵する。
(実際飲み物とあわせると、1食がギャラに相当するだろう)


ワインも貰っていたが、酒というより食べ物に酔っ払った。
あはあ。
2階に上がるともうすでにかなり人が入っている。
客席自体はけして広いわけではない。
10時に開演。
すでに客席はぎちぎちで立ち見に床に座り見まで出ている。


最初はソロから。
下手糞な英語と2歳児並のフランス語、ああ雰囲気はこれが一番と大阪弁でまで自己紹介してから
笛tubaをいきなり、んで歌いながら管を繋げて連続演奏。
お客があまりに熱心に見てくれて吸い込まれそうになる。
なるべく笑っている人に気持ちの焦点を合わせ力演。
循環呼吸で吹き伸ばしながら語りでメンバーを呼ぶ。


インプロとメローな曲が交互にやってくる。
事前の打ち合わせまったくなし。
パクヤンが書いた新曲(彼女の家の浮浪者のことらしい)も演奏。
(予断だがこれが昨年ドクタージムとやった「ボインやで〜」にそっくり)
パワフルな演奏と弱音のダイナミクスが心地よい。


1部終わっただけですげえ拍手。
すぐにアンコールさせられそうな勢い。


合間にバーコーナーで喋り捲り飲みまくりのお客さん。
この間にLesistのマルタンが勝手にピアノに座って弾き語る(かなりお下劣)なのも久々に見る。
ひでえ歌をグレッグたちがいさめて2部開始。


ここでグレッグはゲンブリを取り出した。

日曜から一緒に出かけるモロッコのグナワの楽器だ。
太くてやわらかい低音が出る。
今最も興味のあるサウンドのひとつ、グナワの楽器だ。
緩やかな即興演奏から小さなリズムの渦が生まれ、回転して育つように波を起こす。
パクヤンはこのエスノ楽器とやるにあたって、音階を決めてピアノをプリペアド。

鉛筆を特定の音の減にはさんで雑音を混ぜる。
電子音のような生音がランダムに出てくる、素敵だ。
ジョアオはたくさん持ち込んだシンバルを多用してキラキラとしたグルーブを生む。
僕はここぞとばかりにフロントに立ち、うわものもしたものも自由に動かさせてもらう。
歌うように自在にtubaがふける。
ここ1年ずっと思い続けてきたモロッコ音楽への勝手な妄想をここで爆発させる。
違ってもかまわない、誤解でも何か届くはずだ。
音による交歓、大好きなメンバーと。
もうなんか永遠に終わりが来ないんじゃないか、というくらい楽しかった。


興奮が冷めない中すぐに次の展開へ。
またものすごいインナーへいく即興演奏。
ジョアオの聞こえるか聞こえないかくらいの音量の呟きのような音が最高に楽しい。
グレッグ先導のダークな曲へ。フリージャズに一瞬接近するが世代が違うサウンド
しっとりした曲でラストを閉めるが、当然アンコールが収まらず、ハッピーなハードコアをやって〆。


クルワサン、いいバンドになっている。
お互いのことが好きってのは本当によい。
お客は全然帰らずにライブの興奮のそのままバーで歓談、あちこちで嬌声が上がる。

ここでやっとディナーの呪縛から離れ始め、ビールを飲む。
バーテンダーの渋いおっさんは渋い顔のまま接客をしちょっと怖い。
あの演奏好かんかったのかな。
ともかくそこらじゅう友人たちがおり、その間はふらふらと舞いメンバーたちと話。
お客もひっきりなしに話しかけてくるし、よかったと思う人はよかったといって帰るのが普通。
楽しい時間。
ここらでみんなが好きだというレモンのリキュールがおいしかった。


ライブ終えたのが12時過ぎで飲んで歓談して片づけしてなんやかんやしたらもう2時半超えてる。
パクヤンの弟たちと一緒に最後の片づけをして出る。
しかめっ面のバーテンに、ここでやれてうれしかった、ありがとう、というと
フランス語でぶっきらぼうに礼を言われる。
あとでパクヤンに聞いたら、彼、「今夜は最高だったからいつでもまたやってくれ!」
といっていたらしい、わかりにくい感情表現が非常に面白い。
こんなこともあるのがこの町での暮らしを楽しませてくれる。
またやらせて!食わせて!
最高でした。



パクヤンの車でグレッグと僕は送ってもらう。
まだきていたパーティーの誘いは振りほどいて。
お休みの挨拶を交わしシーユー。
いい夜でした。