高岡大祐+ワタンベ+佐々木彩子@池袋バレルハウス

daysuke2008-02-20

高岡大祐tuba+ワタンベds=BOILERZ
佐々木彩子vo,p


凄い一日。
まずは遅い昼食を三人でとる。
最近お気に入りの池袋の中国料理店。
東北地方の田舎料理メインで絶妙な味加減と凄いボリューム。
これはたまらんのです。

初めてきた二人も感嘆の声を上げる。
これがまた嬉しい。


店に入りさあサウンドチェック、と思った時にトラブル発生。
久々のピストン不調、まったく動かず。
ぎゃああああ、と店員Bちゃんのチャリを借りて池袋の楽器店を廻ってパーツなど買い集める。
駄目な時はもうまったく駄目だろうなあ、と覚悟を決めて洗浄とパーツ交換、オイルなどを
丁寧にやるとなんとか動いてくれた。ほっとする。
これで随分時間をとってしまった、軽くリハ、というかもはや気合わせのような時間。
しかしもうこれでいいじゃんか、というような感じが充満する。


程なく開演時間。
ここに来るまでに気合は十分で、我ら天王寺区民二人は長旅を経て練り上げてきたものが
最後にとんでもない形で開花することとなったライブの始まり。
今まではゲストは後でお呼びしていたが、今日はいきなりトリオで。
僕はチャンと共演経験あるので知っている曲は知っているがワタンベは完全初めて。
しかし野生動物の食事のような研ぎ澄まされた無駄のない感覚で何の遅れもなく
楽曲に喰らいついていくワタンベ、集中力の乗りも抜群だ。
チャンの楽曲は毎度まったく違う形でその場で生き物のように変化していく。
彼女と共演する時に僕は、何かを絞り込むかのように演奏をする。
何も無理をするところはない。素直に喜びに従うだけ。


2部の最初にはチャンとワタンベのデュオ。
名曲ささげ、勿論これも初めてのワタンベはいきなり遠くはなれてそばにいるかのように
素手でドラムを叩き続けた。
平和好きが唱えるタワゴトの大地ではない、地の匂い。
土と豆の歌。素晴らしい。



その後にやっと我らのデュオを。
ここで一計があった、昨夜遅くに思いついた。
気使いの側面が良くも悪くもある我らお互いの中からそれをたたき出すために
演奏の最初、ワタンベはドラムたたきながら、僕は出来る限りの力を振りしぼって
大声で叫び続けるところからはじめる。
頭蓋の片隅に残るかもしれない、思考をたたき出す。
考えるな、考える奴はダサい。
反省する音楽家なんか見たいか?
自分の中に残るスイーツを余すところなくたたき出す。
大声出しすぎて完全に真っ白になった頭で4つ数えて
大声以上の演奏を叩き出す。
体が大きく伸びたり縮んだりする。
捩れ曲がり歪みそれでも折れないのは
自分の目の前に、アホな馬の鼻面にぶら下げられたニンジンを追うかのごとく
幻のスピードで逃げていく音楽に向って突進。


足が絡まる
息が絶える
腕が上がらぬ
目も開かぬ
地面に叩きつけられる直前の
眼に押し寄せる地面から
目をそらさないスピードで


絶望的な歓喜の声を発狂したかのように叫び続けながら
熱い雄牛の鼻息
肉食獣の生臭い息のする顎
噛み千切られる骨の音
飲み込むときのごくんという喉
食い殺した満足感のげっぷ


そんな感じの音楽でした。
わけわからないですね、後で文にしても。
これは自分で終演後書いたメモを引用したもの。


走れないスピードで走り続けるこけつまろびつ
スネアの一音の中にある速さ。
どうにもこうにもとまらない。
いつものように1曲終わるごとにとめどなく吹き出る蒸気のような滝の汗。
そうだ、この日に我らは名前を改めた。
BOILERZ(FROM BOLSHOIZ)
電気の少し前の時代、圧縮された力の解放とピストン運動で動くような。
煮えたぎり変な匂いのする音楽。
喜びっぱなしのケダモノみたいになった二人。


ここに再びチャンを入れ、もうなにやったかこのあたりで頭吹っ飛んでる。
自作の曲までやった気がする。


はい、もう文章ではまるで分かりませんですね。
とにかく爆発するような歓喜
凝縮されて質量を増大しながら潰れていくような切ない愛情が
同居するような、なんやようわからん、
嬉しい音楽でした。


ワタンベとの旅の終着点がここ、バレルハウスでよかった。
それを受け止めるのが佐々木彩子でよかった。
ライブはステージに立つものだけで作るのではない、ということが
立脚、証明された。
助け合うのではない、切り刻むように切磋しじりじりと互いの力に引きずり上げられる。
誰のおかげでもない、そんときのもの。
俺は絶対に音楽を、仲良しの道具なんかにしないぞ。


++++++


ともあれ


我ら二人の初めての旅は、正式にはこれにて幕。
ワタンベには感謝だらけだ。


旅のtuba吹きになって10年あまり
はじめて大阪から東京に一緒に旅することにした男。
連日のハードなまったく休みなしの旅程にも文句一つ言わず。
いつも音楽を最上のものにするために尽くしてくれた。
俺に向けて、とはちゃうよ、音楽に向けて、やで。


そういえば人と長旅してて言い争いも喧嘩もしなかったのも
初めてかもしれない。
以前俺はそれくらいどうしよもないクズであったのだが
少しはマシな音楽家になれたのだろうか。


ともに釜の飯を食い杯を交わし
一緒に命削りながら音楽をつくることを越える喜びは
そうそう、ないと思う。
音楽の快楽自体が
ありとあらゆる社会的な快楽を超えることが出来る上に
これだもの。
たまりません。


この10日間の旅、全てに感謝を。
俺らはそれに謙虚になりながらもギラギラと
獲物を狙う蒸気の怪物と化し、隙あらば食い殺す覚悟で
音楽して生きたいと思いますわ。


思うにこの夜は
おそらく自分の覚えている限りで最も良いライブの一つだったと思う。
見に来た人、天才です。