ブリュッセルを出発する日

daysuke2007-11-01

いよいよ帰宅の日。
早くに起床して最後の荷物まとめ。
不要物を処分し使えるものを分けたりする。
自分の音源関係は全部あげた。
最後の挨拶をこの家の住人たちと交わす。
ビッグスマイルでいつも暖かい気分にさせてくれた、リユニオン出身のデルフィン、
こだわり屋で快楽主義、辣腕サウンドエンジニアのイヴォーン。
大酒飲みでアンダーグラウンド音楽大好き、デグルチーニの良き飲み仲間ティエリ。
いつも来てくれて本当にありがとう、といったら「だって愛してんるだもの」というリディ。
そしていつも優しくクレバーで、しかしとてつもなく物をなくす、我らがすばらしき鍵盤奏者エリック。
一生忘れないこの滞在を支えてくれたここの住人たちに大きな感謝を。


通訳で関わり始めてくれてその後友人としていつも僕らと居てくれたミクさんとクリストフも。
二人の息子さんのアントワーヌとカエデも来てくれた。
ミクさんはお土産に塩の華ハニーマスタードをくれた。
このご家庭のことで忘れられないのはやはり、クリストフが話してくれたこと。
僕たちがここにきて、彼らの家に音楽がやってきた、といってくれた。
こんなに嬉しいことは無い。
カエデは家にあるものでドラムセットを作って練習しているらしい。
考えて無理して音楽を伝えようとしなくても、音楽は勝手に芽を生やし紡がれていく。
彼らの喜びがそのまま僕らの喜びだ。
ひときわの感謝を。


レジスの車に積み込んで皆に最後の別れを。
いや、これは最後ではない、これがはじまりなんだよ、と皆がいう。
僕も本当にそう思う。
ここでの生活は音楽と愛情に満ちているものだった。
ただの優しさではない、豊かな、あふれる様な愛情に。
笑顔で旅の別れを告げる。


と、思ったら。


カエデ君、僕の手にすがり付いて号泣。
たのむよ、泣かないで、ほんとに泣きたいのはこっちのほうなんだよ。
いつでもここの子供たちは素直な天使だ。
君が僕の気持ちの代わりに泣いてくれた、ありがとう。
すぐ帰ってくるからね、と言って手を振り切る。


いつまでもきりが無い別れを。
レジスの車がフルスピードで振り切ってくれる。
今日はベルギーは先祖参りの日らしい。
僕は今回の旅の間に祖母を亡くした。
楽家の極悪な不義理で別れにも際していない。
帰ったら、時間を見つけて訪れよう。
今生の別れは全てじゃない。
自分が生きていれば自分の中にその人はいる。


裏技で駐車場使わないところに車をとめる。
凄く早く着いたけどこれには訳がある。
毎度のことながら、荷物が馬鹿みたいにあるのだ。
計るのもイヤになるくらい。
tubaとケースだけで20kg近くになる、これは預け荷物の限界値だ。
「君だけアンフェアだよ」というレジス。
tuba吹きになる宿命はこんなところでものしかかってくる。
お土産だって買えない位にギリギリだけど、それでもとんでもない量になった。
エフェクターは外装が鉄で出来ているので無茶苦茶重い。これは機内に持ち込む。
機内持ち込みを根性で馬鹿みたいに詰め込んでも10kgオーバー。
にこっと笑って何とかならない?と係りの女性に。
無理なら悲しい顔して汗まみれに(これは自然とこうなった)、すねたり笑ったり。
レジスはこの空港の元職員、芸術家を助けないでどうする、みたいに交渉重ねて、
やっとこさ半分だけ負けてもらった。
それでも150ユーロ追徴金。痛い。
まあ実際には●●キロという、とんでもない総重量を誤魔化しやりくりしているのでこれくらいはしょうがないか。
次に来る時は日常荷物なんて絶対持ってこない。全部こっちで買うぞ。


それにしても時間があるのでレジスとお昼でも、と。
一番近いピザ屋に入る。わあーチェーン店。これがベルギー最後の食事かあ。
でもね、今回出来た大事な友達と、これならいいさ。
もんのすごくあぶらっこいピザだな、こりゃ。わはは。
近日にあるという絵画のコンペティションに応募するというレジス。
それにwinしたら、そのお金で日本に行きたい、という。
いつでも待ってる。
君の絵がこの空港を彩る日を願っているよ。


結構時間に余裕を見たんだけどあっという間に過ぎてく。
最後のゲート前の別れ。
何度も抱き合う。
ここにジムとマチューがいなくてよかった。
ジムはたぶん寝坊、マチューは忙しいだろう。
彼らが居たら、本気でお互いの別れは辛くなる。
皆にキスを送ってくれ、レジス。


とうとうゲートをくぐり搭乗口へ。
荷物が多くてここでもごたごた。
マスタードは半液体で100gまでしか持ち込めない、といわれる。
じゃあこの取って置きのハニーマスタード、40gここに置いていくよ、といったら
今回だけだよ、と通してくれた。粋な計らいだ。


アムステルダムスキポール空港までは小型機で小一時間。
シートベルトしていない時間のほうが短く感じる短いフライト。
乗り換え時間も慌しくスキポールで乗り換え、今度はジェット。
こんなにたくさんの日本人を見たのは久しぶりだ。
ここからノンストップ、まったく寝ないで5本連続映画を見続ける。
頭の中はアクションで一杯になる。
思い出す余韻に浸り過ぎないように。