ゲントでセッション

daysuke2007-10-29

日常のことはゆっくりと。
昼間にラフィラチュウに行ってバンジャマンに会いに行く。
too much nice guy、めちゃくちゃええやつ。
こないだのボリショイズのライブをDVDにしてくれたのだ。
それの受け取りに。
月曜マーケットで飛び切りのガトーショコラを奮発して買っていく。
中国茶を飲みながら音楽歓談。
これもまたたまらなくいい話ばかり。
自宅をライブハウスに改造し世界中のオルタナティブシ−ンの交わる場所にしたい、と
夢を語る彼に拍手を。
日本のバンド、紹介するよ。
チョコケーキはここの猫にまで好評。

さすがベルギーはチョコ王国、猫までごひいきとは。


夕方に我が家になっているエリック邸にマチューが来る約束なのだがいっこうに来ない。
彼に時間の約束を確約するのは無駄な話だ。
イルカに地上を歩けといっているようなものだ(もしかしたら出来るかもしれない)
最初は怒っていたけどもう止めた。


やっぱり電話が来て家に来てくれという。
機材荷物各種もってメトロに乗るのははっきり言って面倒なんだが仕方がない。
今日は彼に加えてジムとレジスの4人、レジスの車でゲントに行くことになっている。
マチューの家に行くと案の定特に動けないという理由は無くて数時間の待ち時間が待っている。
突然男友達がやってきてガールフレンドは少し不機嫌な模様。
雨が降ってるけど腹減ってきたのでレジスを誘って外に出かける。
ベルジャンは傘をささない。
もう御馴染みになっているスナックという、アラブ系の人たちがよく運営している
サンドイッチ、ピタなどを売っている店を探す。
立ち話しているモロッコ人に聞くと近所より少し先に歩いたところのほうがうまいよ、とのこと。
ちょっと道を聞いただけで美味しいほうを教えてくれるメンタリティの楽しい。
こういうの好きだ。


びしょぬれになって件の店に到着。
広くて綺麗なお店、客は少ない。
レジスは必要ない、といってアイスティ(こちら特有の炭酸入り)。
僕は腹ペコなのでサンドイッチ、見慣れない肉があるので聞いてみるとレバーだという。
色々言ったけどこれは初めてなので頼む。
サラダは全部、フリッツは別皿で、ソースはハリッサというアラブの激辛を。
出てきたディッシュはもちろんボリュームたっぷり。
味付けされたレバーが山盛りでとても美味しい。
今まで食べたスナックで一番、ありがとう、通行人。


戻ってぼちぼちすると出発の時間。
レジスの油圧式シトロエンで出発。
ぼーっとしてたらあっという間についてしまったゲント。
2年前にtime festivalという祭に渋さ知らズで出演したときに来たことがある。
たった1泊だったが、非状に美しいという記憶。
ついたときは夜。


エロ映画館ABCに向いにあるNEGOCITOというカフェへ。
少し古びた赤い内装がラテンな感じで渋い。
無愛想だが働き者のラテン系の親父もいい。
マチューのトリオはここはアウェイのようで少しちんまりしている。
僕はなんだか心が浮き立ってくる。
知らないところは何かがいい。
このライブはマチューの息子の母親である女優のルラが紹介してくれた。
非常に強力な推薦だったらしい。


いい面構えした男前に話しかけるとやっぱりミュージシャンだった、
ギタリストのフィリップ。
つづいて日本人が想像する典型的パバロッティ的イタリア人のジョバンニはドラマー。
遅れてやってきたトランペッターのバートが今日のリーダーのよう。
みんなやたらに明るい。
話している言葉はフランダース地方特有のフラミッシュ、オランダの方言系だ。
バートの友人が南アフリカから帰ってきたばかりという。
おみやげにサッカー応援用のプラスチックのトランペット。
バート持参の変なもの、一見プラスティックの薄片を数十m巻いたもののようだが、
中心を引っ張り出すとディジュリドゥのようなかたちになる。
それを吹いたり風船をくっつけて吹いたりする。
僕もtubaに風船つけて吹いたりする。
なんだかこの人には同じ匂いがする。
あとからゼゲルというサックス吹きもやってきた。


話をしているとバーとを見たことがあることが判明。
昨年フラットアースソサエティというベルギーのビッグバンドの大阪公演、
こっそりデグルチーニと二人で見に行ったんだっけ。
わおー、と喜び合う。


夜の10時を軽く超えてから開演。
店の奥にドラムと結構大きいギターアンプPAも古いけど大きいのがあって
それホーン用にマイクがたてられる。
僕は持込のマイクがあるのでそれをクリップオン。


練習なしで初見の簡単な楽譜が10曲ほど配られている。
それをバートの主導で演奏。
とはいえ始まるタイミングと終わるタイミングくらいで中身はフリーそのもの。
ジョバンニとフィリップはなれているようでほとんど曲を無視してるかのような勢いで
熱く激しく演奏している。しかしぴったりしてる。
バートはなんだか凄い吹きっぷりなのだが五月蝿くなくて音色も重視。
タフネスもばっちりですばらしい。
曲もアフリカのファンファーレとか自作の変わったファンキーな曲とかやっていて面白い。
いつもそうなのかそうでないのか分からないがなんだか凄い勢いだ。
ゼゲルは少し押され気味だ。
こちらはblowbassばりにローから攻めるところから特殊奏法の微弱なものまで何でも使える。
なにをやってもいけそうな感じ。


休憩時間、いきなりの盛り上がり。
これ、凄い面白いやんか、って皆で手をたたきあう。
やったやった、今日はいい日だ、飲もうぜ飲もう。
ジョバンニが皆にグラッパを配る。一気飲み。
まだ楽譜は続くのだが大丈夫か俺、大丈夫だ俺。
アルコールよりも内在するエネルギーのほうが熱い。


2部はお互いを知ってからのあとで更なる多彩なステージに。
もうほんとに何でもありで、いけるところではバートと合唱も始まり
踊って歌ってさあ大変。
ハッピーフリーハードコア。
なにせみんな技術は卓越している、持続力はあるし、強い。
強いっていい。


やんややんやで終了。
ビールもうまい。
このバーはチリ人コミュニティのバーらしく親父にベルギーではたまにとんでもないワインをつかまされる、
あんたのお勧めが飲みたい、といって頂く。
南米の香り、赤。
メンバーとの親睦も深まる、千の言葉より一つの音が伝わる場合がある。
なんだか全体的にラテンのノリノリな夜。


面白いのマチューのトリオも一緒で
彼ら実はかなり文無しに近かったみたいで、最初は少し金を貸してた。
店から大きなナプキンを借りてやおら三人で絵を描きはじめた。
鉛筆画で見る見る埋まっていく。
それを通りすがりの女性が、まあ素敵ね、譲っていただけないかしら?
商談成立、10杯分くらいのビールとラザニアになるのだ。


レジスは46時中絵を描いている男だし、ジムは絵が認められてベルギーに来た本物の絵描き。
マチューは音楽同様絵も凄いのだ。
しかし、こんなことってある?
どっかの国の「芸術を大切に、身近に」なんて戯言はここでは通じない。
いいものは欲しくなる、それだけ。
皆が愉快な夜だ。


帰る前に店の親父はいつでも来いと綺麗な店のカードをくれた。
共演メンバーとは再演を誓った。
またしてもひろがった、膨らんだ。
事実、今回の渡欧中のセッションの中では段違いに内容もよいものだった。
技術はあるけどだらだらといつまでもやってるジャムセッションが多い中で
個々の力を発揮しつつ惹起しつつ高まるのは珍しい。
非常に嬉しかった。


うつらうつら車に揺られていると道に迷っていることだけは分かる。
マチューの先導だ、しかたがない。
着いたところは真っ暗な川辺。
進入禁止のブロックの前に車を置いて荷物を持って歩く。
月夜は盛り、最高の静けさ、水面に移る星空。
岸辺には船が沢山停留している。
今日の宿はルラが所有するボートなのだ。
どこまで歩くか、と思っていたら大きくも小さくも無い船にたどり着いた。
こんな夜中にルラは待っていてくれて腹をすかした僕らのために夜食を用意してくれていた。
もう4時近いのだ。
とてつもなく美しい女優が、ロウソクの明かりと赤ワイン。

たまらないもてなし。
この夜はさすがに皆疲れも出て眠ることに。
この船の中にはそこらじゅうに寝床がある。
ありがたいベッドの上ですぐに就寝。