cirque electrique@RTT BXL BE
起きたら真っ暗の部屋。
パーティーの後に楽器部屋に寝に来たんだっけ。
もう独り誰かが寝ているのでそおっと出て行く。
7時半過ぎ、まだブリュッセルの朝は暗い。
一階のリビングにはたくさんの人がつぶれて寝ている。
外に出ると明るいのはケーキ屋とパン屋。
駅に向いはじめて早朝のメトロに乗る。
日本なら混んでいるこの時間も空いている。
寝不足でちょっと気持ち悪い。
帰ると誰かが起きていてお休みの挨拶をして寝たのは8時過ぎ。
もう一度起きるとお昼過ぎだった。
エリック邸の皆がキッチンに居る、8時に寝たことをいうともう一度寝ろといわれるが
もうすでに元気なので起きてみんなと談笑。
今日は遅い入りなのでゆっくり過ごせる。
今日はなんだかこの家に人の出入りが多い。
数人がフランスからとまりに来ているようだ。
夕方にエリックとメトロ使ってRTTへ。
この町の公共交通手段は地元民でも分かりにくい。
思いつきで作っていったからだ、と人はいう。
この会場はどの駅からも遠いので少し徒歩で。
寒空が気持ちよい、冬も結構好きだ。
今日は長年のおぼろげな夢、サーカスとの共演が叶う。
この町に居るといろんなことが叶う。
コンクリートの床にぶっとい鋼鉄のねじを打ち込んでまで建てられたテントの気合。
サーカステントの中では性別も年齢も関係ない。
こないだも日記に書いたけどシルクエレクトリックは超アンダーグラウンドな存在。
夜を遊ぶパーティーピープルの地底祭。
In road we trust!
の掛け声は力強い。
すでにマチューらが打ち合わせをしている。
相変わらずのベルギー進行でぐだぐだなのは目に見えている。
場当たりなしの即興ぶっつけ本番でサーカスとバンドがジョイントすることに。
先月にも共演したback 2 normalのメンバーたちとも再会。
サロンオーケストラのような編成の即興の要素もあるオケ。
僕はtubaソロでロープ使いの女の子とデュオ共演するということを聞く。
挨拶するとお互い何が出来るかわからないのでちょっと引き気味。
そりゃそうだよな。
直前まで音チェックなどをする。
PAはあまり設備良くなく音環境に万全を求めるのは諦めた。
それよりも、楽しもう。
キーボード2台分をまとめたアンプのどまん前ってのがきついけど。
開始直前にあまりの空腹に負けてマチューとスナックへ出かける。
会場の表にあるRTTの周りはかなり寂しい場所で夜はあまりよくないとか。
前にいったことのある店でドゥルムを注文。
ソフトタコスの大きいのみたいなので野菜と肉とフライドポテトをくるくる巻いてくれる。
ボリューム満点でおいしい、安い。
帰ってB2Nのリーダーミヒャエルに「ベルギーのくそジャンクフードだけどどう?」
といわれる、この質問、この国で多数。
僕は別にジャンクフードだとは思わないなあ、といつも。
日本のジャンクフードは本物のジャンクでケミカルまみれで最悪なんだ、といっても理解されない。
食べるだけで体に危険が及ぶ食い物が蔓延している。
日本食はヘルシーだ、と頭から信じてそれ以外の意見を聞こうとしない欧州人はなにか逃避している
ように感じられる。
ともあれ腹ごしらえしたらすぐにスタートだ。
最初はマチュー率いるオクトバリスト、これに参加。
サーカスに響き渡るマチューの声、ぴったりだ。
最初に出てきた演目は綱渡り。
鉄のパイプを三角に組み合わせただけのものを立てて、その間に張ったワイヤーの上で踊る。
高さこそ無いものの凄いスリリング。
バンドが曲を演奏している時はサーカス団員は即興でそこに参加。
即興演奏のときはそのまま全部が即興に。
こんなのなかなかない。
演奏していない時にオモチャのカメラで映像を撮ってみた。
雰囲気だけでもどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=hGS53wV-yfo
大きな綱渡りも空中ブランコも、今回の演目の中には無かったけど(普段はやってるそう)
危険度の高低ではなく、サーカスは見てる僕らをとことんハラハラさせ楽しませる。
手抜きなんてなしの演技に大歓声と大拍手。
バンドでの演奏から抜けた僕に回ってきた出番。
天井から垂らされた太いロープを自在に操り空を駆け上がるかのような女の子。
この子との完全即興デュオ。
ドラムロールのようにミニマルに終わらない音を循環呼吸で。
彼女は信じられないようなスピードで魔法のようにロープの上下を行ったり来たり。
空を飛ぶ勢いに息で加勢する。
反応して吹いていたんでは遅い。
感応することだ。
ダンサーと演奏してきた経験がここで活かされる。
突如急転落下してくる彼女を呼んで音量スライドアップ&ストップ。
きっちりいけた4分間。
最後のオクトバリストのステージでは出演者、観客めしゃくしゃになってステージに上がり
踊り狂っていた。
こんなの台本に無い、そりゃそうか。
サーカスがディスコに変身。
マチューの歌声が響きエリックのピアノが切り裂きマルタンは咆哮しdaysukeは吹いた。
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終演後隣のキャバレーテントへ。
フランスからマヌーシュ弦楽団が生音でご機嫌に演奏。
例のロープ使いの彼女がやってきた。
即興で何かをやるって生まれて初めてで、緊張したけど心の底から楽しんだ、という。
僕だって、どきどきしました、ありがとう、とベルギー式挨拶のキス。
マヌーシュギタリストも最高の賛辞を送ってくれた。
番長ジムはDJをしてご機嫌に「ボインボイン!」と叫んでいる。
「oh daysuke! I miss you!」と何度も繰り返して僕を抱きしめる彼。
たった二日間会えなかっただけで、彼は寂しくてたまらない、という。
炎のジャグリングで参加してくれた我らがオリヴィエにも挨拶。
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ベルギスタンのジェレミーはここに住んでいて家を見せてくれた。
いつかここに来たときに写真に納まっていた黄色いバス。
あれが彼の家。ここ、というのはRTTというぼろいアートビルの裏庭。
これ動くの?ときくと、
「勿論!でもいま運転席はキッチンだからどけなきゃね」という彼。
勿論風呂ない水はタンク。なんとバスの中に薪ストーブまである。
彼の話。
「今年の1月まで4年間アパートに住んでたんだ
でも部屋の中ってせまっ苦しくて。
その前は何年もツィガニー(ジプシー)バンを友達と買ってそれに乗って旅して暮らしてた。
その生活が忘れられなくて元に戻ったよ。
晴れたら外の庭は全部俺のもの。太陽の下がつがつ食って飲んで。
寒い日と雨の日はバスの中。
でも外にはいつでも広い場所があるって最高の生活」
現在30歳の彼は15年間同じ友達とバンドをやっている。
その友人マニュ以外のベーシストとは演奏したことが無い、と。
ベルギスタンではtubaを吹いていたマニュ。
そうやっていつも一緒に居るんだなあ。
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ここで沢山あったノマドたち
ノマド(nomade)とは「遊牧民」「放浪者」の意で、「定住民」(sedentaire)と対立する概念。
いつでもどこでもいけるように、身を軽くとらわれず。
自らの体を住処とし踊って歌って旅をして暮らす。
旅をして僕も出会った。
多分僕も一生定住することなくふらふらと身軽にでもしっかり自分の体を住処として
多くの旅人とあっていく。
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終わったあとの余談ですが。
この後帰る前にエリックが
あのロープ使いの子が言ってたよ、と前置いて
「あんなtuba吹きは見たことも聞いたことも無い
彼と一緒になったら私、ずっとあの素晴らしいデュオが出来るのよね!」
チャンスだ、いけいけ!とけしかけるエリック先生。
でも僕は親友ジムにビバラ!と抱きつかれてボイン!ボイン!というのを耳にするのみ。
サーカス娘の恋、邯鄲の夢。
帰る前にマヌーシュバンドの人たちが何かくれた。
卵に小さなラベルが張ってある。
よく見るとこのバンドの告知。
驚き目を白黒させているとエリックが
「僕の知る限りこの世でもっともクールなフライヤーだよ」
メンバーたちと腹を抱えて笑った。
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家に帰ったらポケットpcが僕に変なことをいう。
「時間が変わりました」
気がついたら夏時間が終わっていた。
時計の針を1時間元に戻す。
初めて経験する不思議。
やった、1時間多く寝れるぞ!というのはエリック。
僕はこの地に夏に来て冬まで過ごしている。
深夜に就寝。