BOLSHOIZ@La Filature BXL

daysuke2007-10-11

最早毎日の音楽漬けが濃いので生活関係はかなり割愛。


しかし電話で、直接で「場所が分からない」という問い合わせがやってくる。
なんで?BXLの住所は京都みたいなもんで道さえ分かれば簡単なのに
地元民ですら迷っているとは?


ヤニックの車で現地へ、といっても同じサンジル地区内で
坂を下りるだけだからあっという間。
ここだ、というところで降りたけどこれがまた全然分からない。
普通に民家しかないところなのだが一人の青年が扉を開けてくれた。
彼の名はバンジャマン、変な感じのする名前だが英名だとベンジャミンだ。
笑顔の彼があけてくれたところは天井の高いアトリエ風の建物で手作りの
ミックスルームが宙に取り付けられ機材も生半可なライブハウスより充実している。
ドラマーでバンドマンでもある彼が音楽とともに暮らすために作った新しい場所
La Filature http://www.myspace.com/lafilature
もう大抵の場所では驚かないぞ、とベルギーでは思っていたが驚いた、というより非常に感心した。

音楽が好きってことはCDを買うことでも情報に詳しくなることでもない。
本当に音楽を大切にしてそれとともに居たい、そして何をするか、だ。
ここの音楽好きは、本当にハンパ無い情熱を当たり前のように実現する。
欧州中を車内ライブ企画しまわり生活まで内包するブンブンバスしかり。
この感覚を知っただけでも、非常に貴重なことだ。


かわいい猫が二匹いる。
黒いほうが脚立に乗っているときに挨拶のキス。


感心しているうちに思わず家にベースアンプのヘッドを忘れてしまっていたことに気がついて
歩いて取りに帰ることに。
近所だとこういうことが楽だ。


戻ってセッティング。
天井が高いのでかなり響くのでラウドはきつい。
今日はヤニックも耳栓着用で参加。
耳の調子はえらく悪いらしい。
グレッグもやってきて参加すること決定。


そういえばこの場所はベルギーで初めて見る禁煙の場所だ。
バンジャマンの意向らしい、とても助かる。
というわけで9割以上を占めるベルジャンの喫煙家はドアの外で吸わなくてはいけない。
おかげで店内はすっからかんだ。


急に決まったしかもまだ知られていないこの場所に大勢のお客さんが集まってきた。
マイスペースなどで自分でも情報を流しているが、
本当にこれは不思議。ネットだけじゃ絶対にない。


今回は時間の都合もあって1ステージぶっ通しに決定。
最近の傾向もあって最初からボリショイズの楽曲をぶっとばしてやって間にインプロを挟んで
最後にまた一度やったボリショイズの曲をreplayして終了というプログラム。
なにせ我らはないのだ、楽曲が。足りない。
しかしやる気とエネルギーはある。
今日はドラムなしのヤニックのシンセの音が少々でかい。
自分の音で耳傷めてるんじゃないだろうかとも思うが・・・。
ワタンベのがむしゃらビート、うなる異常低音ギターはデグルチーニ
自分はといえばblowbass、アンプ増幅されたtubaを循環呼吸で吹き倒す。
どちらかといえば繊細なテクニックの連続を強いられるのだがバンドはボリショイズ、
凶暴さも持ち合わせないといけない、なぜならパンクバンド。
途中でグレッグも入り狂気のフリーキーテナーが炸裂。
これで勢いが増してどんどんいく。
最初は戸惑いがちなお客も気がつけばガンガン踊り狂っている。


どかんどかんで終了。
アンコールの声も大きいが時間の都合もあるし実はあんまりアンコールされるのは好きではない。
本物ならいいのだがただ単にもっとやれ楽しませろ、という感じならやらない。
今日はまあ複合的に終了。
ミクさんとクリストフの子供たちはソファーで天使のように寝ている。
夜が弱いというのに僕らを見に着たくて来てくれていた。
子供も、本当に音楽が好きなんだ。


終わった後にバンジャマンがご飯を用意してくれた。
三日前にメールで「何が食べたい?飲みたい?」と音楽のことを何も言わないでくれたのは
僕らの音楽を信頼してくれたからであり、真心からだ。
「飲むのはウェストマル、食べるのは何でも!」と答えた。
出てきたのは、え、これだけ、と驚くくらいシンプルな皿。

白身魚のソテーに白米。
味付けは極シンプルに塩味だけ。
ずっこけかけるが、すでにここで暮らしてある程度たっているので僕らは知っている。
この町でこんな見事なフィレがいったいいくらくらいするかを。
僕は自炊魔だがこんな魚は買ったことないし買えない。
日本から来た我らに何を食べてもらおうか考えた挙句のこの皿だろう。
ちょっと胸が詰まる思い。本当に感謝。
誰かが食べる前には「ボナペティ!(召し上がれ!)」という習慣があるフランス系社会。
本当においしく頂いた。
食事後に一度家に戻って機材積み下ろし。
もう一度会場に戻ることにした。



外に出るとオレンジ色の街灯に照らされたBXLの町並みは霧でけむっていた。
静かで美しい風景、ティエリが「冬がやってくるなあ」と嘯く。

室内に戻るとなんだかよく分からない客たちがドラムなどを乗っ取ってセッションをしている。
なんか見たことのあるラッパ吹きが入るなあと思ったらマチューのバンドに昔いた人だ。
みんながいう変人らしいが大人しいので気にならない。
少し中尾カンジさんに似ている。


しかしバンジャマンは大弱りで、近隣の迷惑にならないように
注意するがまったく止める気配はない。
なんで怒らないの、と聞くと、別にそんなに悪い内容じゃないから、とのこと。
や。優しすぎる、この男。
しかし困り果てているので、そんなの簡単だよ、と乗り出す俺。
ドラム叩いて調子に乗っているやつのまん前にいって無言でドラムを解体して取り上げる。
呆然としている間にスティックも取り上げてやった。
ね、簡単でしょ?というと、ぽかんとした顔が大爆笑のバンジャマン。
今日だけでこいつのことが大好きになった。


ぼーっとしているとファンだという酔っ払いの女が話しかけて来るがなんか苦手。
そのうち禁煙のこの場所で煙草吸い始めた。
こういうのは本当に嫌いで止めろといって取り上げようとするとにやにやと甘えた顔で逃げる。
こういう手合いは本当にろくなもんじゃない。
殴っても良いがこの気分の良い状態を失いたくないので即退散。
帰りはメンバーとミクさんと酒飲み番長ティエリと。
オレンジ色に煙る静かな深夜はたまらなく美しい。
帰る前にいつもの400種類ビールがあるバーへ。
スナックでフリッツ買い込んで楽しく飲酒。
ここのオヤジももうすでに僕らのことは覚えている。


家に帰ってから少しだけワインを振舞って飲む。
結構朝方か。
「こんな時間までdaysukeが起きて飲んでいるなんて!」と喜ぶティエリ。
損な彼が突然僕の野菜料理が食べたい、と言い出した。
実は大の野菜嫌いで「週に一度は食べるさ」と憮然としている彼が僕の野菜しか入ってないのを食べたいとは!
お互いに普段しないことを少しだけ交換する、この感じがとてもいい。
気持ちよく就寝。