船上ライブ@リエージュlegia

daysuke2007-09-09

朝方に蚊に刺されたようで一度目がさめる。
5年前にドイツで蚊に移されたウイルスで敗血症になって危うく足を切断しかけたことがあるので
こちらでの虫はどうも苦手だ。


アーメッドの用意してくれる朝食を一緒に頂く。
コーヒーとオレンジジュース、熱々のパンとハムとチーズ数種。
ロッコ人とはいえオーソドックスなヨーロピアンスタイルのブレックファースト。
(そういえばブレックファーストの語源は断食の古い由来後である「fast」を「break」する
 すなわち断食を止める、というラマダンの風習からきている、はず)
どうも彼の会話でわかったのだが、この3階建ての家は全部彼が独りで造ったらしい。
驚くべきことに最初は壁しかなく青空が見えていたというここに天井をつけ階段をつけ
水周りを完備しトイレやシャワーをつけて、スタジオまで作ってここまでしたという。
今も造成は進めていて、中にあるキッチンを外に作り直しているのだという。

造りかけのキッチンを見ると本当に何も無いところに造っていて驚く。
そのまま彼が次に手をつけるという庭園の予定地を見せてもらう。
ちょっとした高台にあるここから木々の向こうにリエージュの町が見える。
ミントやバラ、カボチャや野菜などが植えられていて、テラスが予定されている場所もある。
なんか、うらやましい生活だ。


彼が普段から仕事が忙しくてたまらん、と言っているのは、自分の家を造る作業のことのようで
なるほど、世界各地で招かれて演奏している彼ならば生活はそれで成り立つだろうし
大変だ、とはいうものの、楽しそうだ。
(しかも家を建てるのは2軒目らしい)


音楽も生活も自分の手でやりたいという意思が垣間見える。


作業を手伝おうかとも思うのだが、どうも独り分しか作業場がなくてそれも木材の鉋かけ、
力仕事もなくて我輩役立たず。
子供部屋に戻って売り物の作成などpc作業にいそしむ。
そういえばこないだの金曜日の公演で酔っ払いが売り物にビールぶっ掛けたおかげで
脆弱な売り物がパーになったのだ。


作業終えて、いい加減時間だよなあ、でも作業中断してくるまで送ってもらうのも悪いし
しかし自分で場所が分からない会場で困ったもんだ、と思っていたらあっさりと車で送ってくれることに。
ベルギーでは概して人の面倒見はとてもよい、あまり礼を沢山いうと嫌がられる。
礼儀正しくしなさい、という強迫観念にも近い教育がある我が国なのだが
こういう自然でさりげなく、恩着せがましくない世話見は育っていないなあ。


もうそろそろ地理も覚えてきたリエージュ、島と呼ばれる地区を越えて向こう側の川沿いに
行くと噂どおり船が出てきた。

今日の会場であるla legiaは船の中らしい。

船長でPAマンのザビエルが作業していて、中ではすでにブラックライトオーケストラの面々が
セッティング済でリハーサル中。
挨拶をしてそのままリハーサルに入る。
サウンドチェックもかねているのだがPA席はどうもかなたの向こうにあるようでなかなかうまくいかない。
ときおりとてつもなくでかいノイズが乗って耳を痛めつける。
これがかなりきつい。
自分の音のではよく分からない、と思ったらモニタースピーカーはかなり後方にあるのであった。
まあそれなりに時間もなく気がつけば開始予告時間になっているが5時という設定は早いので
1時間以上押すことが確定した時点で食事の準備をしてもらう。
(この間子供鉅人はずっと準備などしている)
食事はヤネックが主に作ってくれたらしい、思いっきりニンニクがきいたアラビアータ風パスタ。
ペンネですりおろしたチーズが別皿に山盛り一杯。
1人前のボリュームがとても多い、僕としては嬉しい。
小食はつまらない。
食べきれないというなっちゃんの分を貰ってゆっくり食べる。
僕は物凄く食べるのが遅い。
その間に数人は山盛りをお代わり、グレッグにいたっては3杯も食ってた。
「餓鬼みたいだろう」と覚えた手の言葉で返される。


船倉部分の半分はステージ上になっており半分はバースペースで観衆の場所。
もはや見慣れたリエージュのパーティーピープルが続々集まってくる。
そういえばダニエルやコンタンにも「リエージュ、どう?」と聞かれる。
ここはブリュッセルっ子から言えば異界、かなり変な場所らしい。
パーティー好きが多い、それも度をこした、というのが定説。
元来はドラッグの類の規制が厳しかった時代に、規制のゆるいオランダ国境近いこの町に
たくさんのミュージシャンやアーティストがそれらをもとめてやってきたらしい。
今では欧州全土がほとんどソフトドラッグ解禁状態で関係なく、少し寂れた、というものの
ドンチェリーやチェットベイカーも住んでいたと聞くと、ほうほうと思う。
残された人々は独自に狂っているのだ。
私見だが、ワローニア一番の都市であるここの人たちは、よい意味でお人よしでマイペースだが
客観性にはまったく欠ける。
自分のやり方が受け入れられない時に非常な抵抗に会う。
このあたりは評価が分かれるところだろう。
僕は自分のやり方を押し付けるのも押し付けられるのも嫌いなのでこの地では少々の苦労もあった。
自分が几帳面なのだと思う。


さて1時間25分ほどを押しての開演。
なにせ舞台監督がいないので進行など誰も把握していない。
こちらで勝手に考えてやっている次第。
最初に白いスクリーンをはってそこで子供鉅人のパフォーマンス、口上などを経て
我がソロに移行する。
ここでいきなり聞いていた段取りと違って、しょうがなく無様な登場をするしかなかった。
まあ仕方がない、そのまま出て行って、仕切りがあって音響上やりにくいと思ったので
客席部分へ少し歩み出て生音で演奏する。ごっついタバコくさい。
会う人の95%近くが喫煙者のこちらではどうしようもない。
循環呼吸にはよくないんだよな、しかしここはまあパフォーマンスの要素が強い演奏なので
必要でやると。
切り込み的に考えていたので10分ちょっとで切り上げて約束どおり子供鉅人に受け渡しをしようとしたら
全然準備が出来ていない。
なんでや、15分くらいと50分くらいを取り間違えていたらしい。
あわてて準備を急がせる。
このパフォーマンスもそれほど長くなく、そのままブラックライトに受け渡す。
プログラムを貰っていないので呼ばれた時に参加できるようにヤニックの後ろのほうで待機。
呼び出されては演奏をする。
もはや昨年にやった曲をうろ覚えで必死こいて思い出しての演奏。
ちょっと間違えたごめん。


全体で1時間半弱くらいで終了。
まだ外はほんのり明るいくらいの時間。
とたんにヤネックらが何か話しに飛び込んできた。
どうやら短いと言っているらしい、しかし約束の時間もなく何の説明もしないほうも問題、
小休止の後にブラックライトの面々が続けてやるということに、その後は僕主導で
セッションをやってもよいということだが様子を見ることに。
もはや随分とテンションが下がった状態で続くコンサート。
気がつけばお客さんもかなり帰っている模様。
マー君は何故か上半身裸になってステージ後方の控え室からチラ見で小芝居をしている。
ダニエルのソロに移行してその独特な世界が展開される。
ピアノの弾き語りで、そういえば彼は英国人でフランス語は完璧なんだがこの地で
英語で活動しているという変り種。
リエージュは物凄い英語通じない地方なんでどうなんだろう。


僕はこのあたりで手持ち無沙汰で船の周りをうろうろしたりバーの部分に行って
そこら辺の人に奢ってもらっていたりするだけ。
取った変な写真はこれ

ウーガルテンの生が船内でも飲めるというのが素晴らしい。

ずるずると片付けに流れ込んで次へ行くことに。
次の場所というのが、なんだかアーメッドが子供鉅人に勧めてくれた場所で
ショーパブらしい、そこでアーメッドと落ち合うことに。
市街中心部の小道の場所に通訳もやってくれた(ただしフランス語から英語)ヘイゼルという女性に
案内してもらってそこにつくと・・・。
思いっきりビザールなとんでもないおかまバー。
表に張ってある写真は、もうこれは凄いデの字の凄いブスばかり。
かなり、きつい。
 
会員制ぽくって扉に小窓がある。
非常にやな予感。
入ってみるとみんな目が別世界だし、カウンターの上の壁一面にはローマ風の絵画、ただし
全裸の肉感的な男女が乱交しているというもの。
ここで一番にあわないこと夥しいヘイゼルに、ここってどうなの?と聞くと
トランスベスタイト」という言葉が聞こえる。
古い自分の辞書を頭の中から掘り起こして開くと「服装倒錯者」というのが出てくる。
あ、そうか、こっちではもう「倒錯者」なのだ、女装や白塗りなども特徴的な子供鉅人の演劇は
それっぽく見られていたのかもしれない。
一応、説明しておいて、やるかやらないか協議、の結果、やらないことに。


まあ場違いな感じははなはだしい。帰る前にトイレだけチェックしておいた。
こちらには珍しい個室のドアの下が開いていて誰が入っているか分かるもの、
あ、そうですか・・・。


すごすご退散、中はミラー張りの綺麗なクラブ風でやってみるだけなら面白いかもしれない。
個人的にはまあ苦手だ、変態バーだからというよりも、お邪魔な感じが。
言うなれば本番OKの裏風俗に女の子が興味本位で来たみたいな感じか。
とにかく帰った。
アーメッドはなんでやらないのか、ちょっと訝しがっていた。
このまま帰るのもなんだなあ、と思っていたらアーメッドがブルースセッション覗きに行かないか
誘ってくれたのでみんなで着いていくことに。
すぐそこだった場所は街角のバーでたくさんの賑わい、アンプ類が持ち込まれていて
弦楽器中心のセッションのようだ。

とりあえずビールを頼んで鑑賞。ヴァイオリンが二人いてどちらもアンプ付なのが独特。
ドラマーはいない、白髪で禿蓬髪のジャンピエールというアーメッドの友人に紹介される。
いつでも入って良い、ということでジョージアオンマイマインドやってる時に飛び入り乱入。
まあ日本でもどこでもそうだがtuba持って入ると、音楽的ゴマメがやってきたみたいな目線。
まあ冴えない楽器の代表格だからな、これが武器になる。
最初は渋いスローから、ぶんぶん飛ばさせていただく。
おいしいところは全部いただきます。
まあ受けてそのまま次の曲だが、バイオリンのおっちゃんの一人が凄いスピードで挑んできて
それにどんどんついていくと他の人たちがどんどんこぼれていく。
もはやドフリーだ。こんな人もいるから飛び入りは面白い。


ひとしきりやると人が入れ替わってきた。
なんでもこうやってどんどん次の人に代わっていく方式らしい。
若者ヴォーカルでスティービーとかやってる。
そういえばこの地でアメリカ音楽的なことをやっている人を初めて見た。
バーにも喜んでもらえたようでビールご馳走になる。


表ではヘイゼルとマー君たちが喋っているので会話に参加。
ヘイゼルはなんだか教師っぽいね、といったらダンサーでアレクサンダーテクニークの先生でもあるらしい。
自分たちの生活や色々な比較論など。
この人はスコットランド人らしいので英語が綺麗で分かりやすい。
彼女とアーメッドはクレイジーパーティーピープル多いリエージュで非常に信頼感がある。


セッションは続いているがそこそこの時間に退散。
町には何故かポリスが多い。
どこにいてもこういう人たちは同じ匂いがする。
ちょっと腹ペコのアーメッドと僕は彼の手料理をご馳走になる。
羊らしいソーセージとクスクスにかけるような煮込み。
クミンが効いていて優しい味が美味しい。アラブのパンに合う。
で、もうふらふらなのですぐに就寝。