子供鉅人‘クレアム

daysuke2007-09-08

耳栓していたら全然起きれなかった。
予定より少し寝坊して起床。

軽く朝食を済ませて出発の準備。
昨日深夜知ったのだが今日ここを引き払わないといけないのだ。
広いとはいえない場所にちょっと苦手な集団生活であったが、なぜかこのLa Zoneは気に入っていた。
是非ここにはボリショイズで帰ってきたい。
 


掃除や片付けなどをして出発。
これが結構、やはりグダグダと遅れ段取り悪い。
デグルチーニはマチューとともにブリュッセルへ帰る。
この数日前に判明したのだが何かのブッキングミスで9日のはずの予定が
今日に急遽ずれていたためにマチューは我らを残して帰ることになったのだ。
アーメッドが来てくれて荷物を彼の車でクレアムへ。

子供鉅人は徒歩でクレアムへ。今日は劇の公演なのだ。


クレアムに着く前にアーメッドの住む近所を見せてくれた。
なんだかとてつもない長大な階段の脇の石造りの中世の迷宮、
という感じの場所、こんな風景は見たことがない、入り組んだ狭い道と階段で出来ている。
この奥が家なんだ、というところで引き返してクレアムへ。


クレアムではベリーダンスのワークショップをやっていて、
奥で準備など。僕はネットを借りて作業。
ひさしぶりに落ち着いて作業できる時間だ。


クレアムメンバーの入り時間にあわせて最後のリハーサルの準備を進める。
ここらへんでなにか変な感じが。
開演一時間前のこの時初めて分かったのだが、今日は有料であるらしい。
聞いてなかったぞ・・・マチュー。
クレアムとしては我らに箱を貸すだけ、後の面倒は我らで見なくてはいけない。
受付の準備、お釣の用意、それら諸々の雑事をゲネプロと平衡してやらなくては!
もはやいい加減にして欲しい状況だが、まずは解決しないといけない。
みんなの小銭を集めて、チャージの設定だけさっぱり分からない(クレアムスタッフも知らない)ので
これだけ電話でマチューに聞くと5ユーロとの事(高い!)げっ。
もうしょうがないのでこういうことがとても苦手そうなマルタンと初対面の女性に任せて
我らはゲネプロへ。


ダンスワークショップをしているフロアにテーブルと椅子が並べられて即席のバーに。
そこでお客は歓談している。
開演時刻を結構すぎてからバタバタと慌てて開演へ。
マー君とフロアへ出て僕がファンファーレを吹いて彼が口上。
(ちなみにこのファンファーレは関西の競馬のものにしてみた)
お客を誘導して客席へ。
客席は満杯であふれた人で立ち見も出る状況。


最初は出演者が着物を着て舞う、そこでちょっと日本音階でtuba独奏。
みな着物を脱いでクレアムのヴァンソン(旦那役)に脱いだ着物をかぶせて全員退場、
カンジが独り残されて白い紙の上で舞う。
そこにヴァンソンとアランがやってきて彼にペイントしていく。
筆が触れるたびに変化するカンジの動きを音で同じく筆のようにつけていく。
乗りに乗り冴えていくこのシーンは思いもかけない演奏になった。


紙がカップルに巻き取られるコメディーシーン(無音)を挟んでクレアムメンバー三人と
楽器を使って即興で会話。
最後にアランのアコーディオンで持続音の継続により全体合奏。
バブちゃんが二人羽織で出てきてロリータとフラメンコのシーンへつなぎ退場。
白い幕の後ろで影絵芝居のシーンへ。ここも無音。
幕が取り去られると影絵であった家がダンボールハウスになって登場。
皆がこの中へ入り、家が歩き出して屋根が開いて、皆が顔を出してオーラス。
最後に何度も繰り返されるアンコール、カーテンコールの手拍子に合わせてマーチを吹いて退場。


淡々と書くとこういう感じなのだが、この間、客はもうどっかんどっかんに盛り上がっていて
正直ここまでビビッドに受けるとは思っていなくて、感動した。
馬鹿受け、といっても良いくらいだ。
 


終わった後は片付けをしてバーでビールを一杯。
ビールは1,5ユーロ平均、ORVALは特別で2,5ユーロ。
ウーガルテンORVALを1杯ずつ。
公演用の値段でも庶民感覚で150円と250円といったところ、
我らは高いと感じたフィーですら500円程度だから、考えたら安い。
それで気軽に皆が来てくれて感じが良いのなら文句ない。
ギャラだって悪くない、100%バックは当たり前なのだ。
会場は飲物で儲ける。


ここにも知った顔は多く、皆勤賞のお客までいる。
毎日会っている人までいるぞ、それも偶然。
クレアムスタッフのアランにこのチャンスをくれて本当にありがとう、というと
それはこちらも同じだ、と言われる。
またの機会をぜひ持ちたい、本当に。


皆に挨拶をして帰るときはこちらはアーメッドの車で。
僕は単身彼のうちに行くのだ。
なんでも近所でピリピリという音楽祭をやっているから遊びにいこうとのこと。
すぐそこっていうけど、オランダとの国境近くまできてしまったではないか。
お城っぽい場所の周辺にここらにしてはたくさんの車と人。
一つの会場を目指して向かう。
入り口付近の屋台は友達らしい、腹ペコなのでケフタ(挽肉を焼いたの)のサンドイッチを
買って食べる。野性的な味でうまい。
なんだか入り口でぐたぐたともめて、でも彼が何とかして中に入る。
ブルースフェスだ、中では白人トリオ、ウォッシュタブベース、ベードラ踏んでギター弾くボーカル、
ハーモニカが演奏しているが、あまりに音が悪くてちょっとで外に出る。
カラードは僕らだけで少しだけ場違いだ。
もう一つの会場を覗くとセキュリティとかどえらい雰囲気悪くてすぐに退散。
聞こえてくる音はなんだか聴いたことのある有名っぽいポップスだったがお互い興味なし。


ドライブ中に車内に流れるグナワの特選音楽が物凄く心地よい。
途中でリエージュ一番の夜景の見えるところで案内してくれた。

彼のうちの近くで駐車して大荷物を一緒にひいひいいいながら石の階段を登って彼の家へ。
3階建ての細長い、素敵な家だ。
さっそく彼の音源を聞かせてもらう。
彼は伝統的なグナワだけでなく、自作のオリジナルやアラブの詩のフランス語での詠唱、
ジャズマンやブルースマンとの共演など、物凄く幅広い。
これぞ個人的グナワディフュージョン、か。
疲れてはいるものの、音楽に引き込まれる。
写真も多数見せてもらう、彼の父上はモロッコでのグナワの最重要人物だったようで
映画や本にまでなっている、凄い。
マイルスデイビスが見に来たとか、ランディウエストンとはマブダチだったようだ。
彼自身、パットメセニーやアーチーシェップ、ジョニーコープランドと親交があるし
なんだか凄いぞ。
とにかく彼の音源にやられまくる。凄い。


階下に下りて落ち着いたら、コーラとナッツをやりながら静かに生音で
彼の父の遺品だという古いゲンブリで演奏をしてくれる。

瞑想のような、非常に深い時間。貴重だ。
ひとしきりやってもらって、寝床へ。
彼の子供が来た時の部屋だそうだ。今回は子供部屋に縁がある。
ぐっすりと深く眠らせてもらう。