高岡大祐alone日比谷カタンsolo@祖師ヶ谷大蔵ムリウイ

daysuke2006-11-11

高岡大祐tuba
日比谷カタンvo,g


ついにこの日、である。
まあこればっかりのようだろうがそれくらい気合毎回入れてるってこと。
今月は上京ライブはわずかに3日間だけ。
そのかわぎりは僕のソロとして決まっていた日に
先日スイスのローニンの公演でご一緒して感動、
急なお誘いに乗ってくれた日比谷カタンさんをお招きしてのライブ。


比較的ほんわかライブが多いムリウイカタンさん、
良いものかどうか正直迷った。
恐る恐る相談したらムリウイのたけしさんは
「大ちゃんがええいうもんがみたいなあ」ってな感じで
即OK。決まってしまった。


僕が呼びかけたのに順番先にしたのは訳がある。
見たことない人は分からんだろうけど、日比谷カタンの後に演奏する、なんて
愚行以外の何者でもない。


徹底的に爆撃された跡地にどうぞおくつろぎくださいと言う様な
超優良素材の料理を食った後にコンビニグルメでお食事を、とか
星付ホテルのスイートで過ごした後にきたねえサウナの廊下で
トドみたいなおっさんに尻を狙われながら休むような、


なにをどうしてもそうなるに決まってる。
ちゅうわけで俺が先。
なんか意識してしまうんだな。
この日は何も決め事作らずにやるalone。
ローニンからヒントを得たモジュールシステムみたいなのも試す。
恥知らずによく声を出す。
誰のオーダーか分からなくなってしまったハンバーガーの行方を歌にする。
そんなもん。


でだ、次にはカタンさん。
マイク1本、ギターの後ろにあいた穴にマイクをさして、簡易PAへ。
さらっと始まっただけで、空気が変わる。
よくある表現ではあるが、本当に変わるのだ、
黒い光に染め上げられるというか、色調・匂いががらりと変わる。
これこそが音楽の醍醐味だと思える。


目を瞑ると一体全体何人が入れ替わり立ち代り歌っているものやら
醜い小人も長身の麗人も、
しなびた老婆も肥大した赤子も
その大きさも何もかもを変えながら
いったいその声帯と黒い心臓に
何人と何匹のモノドモを飼育しているんだろう。


しかもそいつらは暗闇の中に重い鎖で縛り上げられているので
一瞬声帯を介して開放されるごとに
歓喜の声もて解き放たれた喜びを歌うも束の間
また一瞬にして奥底深い暗がりに何本もの手で引きずりこまれ
次のステージまで鬱々と暮らさねばならない、


かのような、氏の歌。


そしてギター。


そこらのアホガキの嬉しがりが貼っつけたような
ライブハウスのパスにステッカー、黒いガムテープが不細工に
ボディを覆い、背中には大口開けられて
ゴミ捨て場が似合わなくもないジプシーギター


ネックの裏にベビーパウダーが塗りたくられている。
あまりに早すぎて見えない左手が引っかからないために。
右手にはピック、持ってない指は一人ずつ別の小人みたいに踊る。
とにかく右手全体が時間の単位が違う世界の生き物のように
凄まじい幅で歪なメビウスを描くように踊るのだ。
本当に踊っているように見えたのだ。
ギターのホールのあたりを、あれほど広い空間だと認識したことは
いまだかつて僕にはない。


客、スタッフ、唖然。
開いた口がふさがらない、息を忘れる。
たまに口元が大きく動くのは、笑いが止まらなくなるため。
MCも最高、江戸前の粋を感じるのは僕だけではあるまい。


揺り戻され、歌の世界へ。
恐ろしいことに途中で気づいた。
歌が持つ世界が凄すぎて引き込まれ、
恐ろしいまでの映像喚起力に飲み込まれているうちに
あの凄まじい目にも止まらない動きで奏でられるギターを
長々と忘れさせられていることがある。
ふっと後ろ髪を引っ張ったもう一人の僕が良く見ろと耳元で叫ぶと
そこには音の洪水の中に怪物が口ものだけ突き出して狂おしく歌うのに
飲み込まれている聴衆が俯瞰で見える。
これは、恐ろしいことだ。


さらに恐ろしいことに、最後にデュオしましょう、なんて言っちゃった。
ああ言っちゃった言っちゃった。
馬鹿だ、俺は。


彼の演奏が終盤に差し掛かり、
近未来の五反田のイメクラでアキバのニート・ハンドルネームは
イミテーション君がギヨテーヌ嬢を相手にギロチンプレイとともに
愛を叫ぶという、プログレッシブ・グループサウンズ
(俺が言ったんじゃないよ、カタンさんだよ)歌っているときに
うわっははは、面白いねえ、ぎゃははは、



高岡、お前大丈夫か?


もう一人の僕が声をかける、耳元で。
ぞっと不安になる。
この人とやれるのか?やれることあるのか?
自慢じゃあないが年間数百人と共演しどんな逆境も生かしてきた、
演奏前に緊張することなんか1年に1回あるかないか、
なんでもこーい、の度胸だけは一丁前の高岡大祐、人は馬鹿という。
が、不安に。
想像してください。
僕は創造しないといけないのです。


で、やった。
あのスピードで目くるめく即興演奏をするんですよ。
まいる、ーら。
スリル・スピード、絶叫の楽興。
不安がむちゃくちゃに大きかった分だけものすごい楽しかった。
すごい快楽。まずいなあ、これは。
最後になんだか携帯電話の会話が彼の口の中で入れ替わり立ち代り現れて
いや、出てきたとき俺の背後にあったスピーカーから出た声があまりにも
気持ち悪くて俺の音一瞬止まってしまったんだけどさ、
AU by KDDIで終わる即興なんて、考えられますか?
僕、無理。


とにかく面白かった。
いろいろと悩み多き準備段階だったんだが
鳴り止まないムリウイ喝采の場に立ち会えて成功に痺れる。
俺の好きな音楽が紹介され受け入れられるのを見るのは非常な快楽だ。


歓談タイムもまるでステージのよう。
この人、素で相当面白い。
身長はあんまり変わらないのに服装はレディースSサイズと来た。
見掛けも音楽もまるで違うのに、何かが通じる感じ。
分からないけれど。何だろう???
お足を受け取るときには妖怪のような3本指に変身、
片づけでしゃがんだらあまりの身の薄さに異常なコンパクト、
「ずっとしゃがんで生きてきて、立ったら寝てるようなもんで
 寝てるときは死んでいるようなもの」
クールだ。

あまりに楽しい爆裂の夜。
カタンさんらと別れた後は旧友とお気に入りのバーで飲み明かし。
カタンさんのCDを店でかけたら誰も動けなく帰れなくなった。
やはり本物だ。