ベルギーセッション@高田馬場プレイス

daysuke2006-10-15

blacklightorchestra
http://blacklightorchestra.org/
ダニエルcl エリックaccord グレッグbs コンタンfl ヤニックds


Les Octobristes
http://lesistes.collectifs.net/accueil.php
マチューvo,accord エリックaccord マルタンds


高岡大祐tuba 深井宣光ts 鈴木新ss さかいれいしうvo


カプルキョから始まったプレイスでのもう3年にも及ぶライブシリーズ。
カンパ制、酒は飲め飲め、みんな巻き込めでいろいろな人を招いて演奏してきた。
今回はその中でもとてつもないスペシャル。
ベルギーから訪れた奴らがやってくる。
はず。


プレイスに行くと店の前に何かが転がっている。
富山のノブだ。
数日後に連日共演するというのに彼らに関する僕の日記を見ていて
居ても立ってもいられなくなって飛んできたとのこと。
嬉しいではないか。


ベルギー連には7時に高田馬場集合と伝えてある。
はたしてどれだけ来るのか・・・。
この日まで馬場の駅に改札が二つあることを知らず焦り走る。
どうやら無事大きいほうの改札を出た模様、走る。
まさかとは思ったが全員来てくれるとは!
結構気まぐれな奴も居るのに、おお、なんてこった!
プレイスまでご案内。


事前に狭いよお、と伝えてあっただがびびらない彼ら。
ポコペンに住んでたんだもんな、平気か。
もうすでに店の半分以上は埋まった。


開演時にはお客さんも同数とちょっとか、満杯。
月頭の伽奈泥庵セッションと同じく組み合わせを決めて司会進行。


1,ヤニックds エリックaccord 高岡tuba
最初はこの3人で幕開け。
演奏スペースを考えるとトリオくらいがベスト。
エリックのアコーディオンと共演するのは初めてだ。
さすがマチューの師匠、安定したテクニック。
そして3人とも「下モノ的感覚」の持ち主。
簡単に言えば裏方なんだが音楽の進行に非常にセンシティブで
構成的な面、ばっちり。
エリックが前に参加したセット同様、こういうバンドみたいだ。


2,マチューaccord,vo コンタンfl ヤニックds
マチューをはじめて見る人に彼を紹介するのはワクワクする。

驚きと喜びの笑顔が見れるから。
どこまでかわからないくらい、彼は即興でも迷いなく歌い始める。
まるであらかじめ決められた何かのようだ。
内省的な彼のaccordとコンタンのフルート、ヤニックは散発的なサウンド
足でミュートしたスネアが歌いそのまま笛吹くドラマーヤニック

後半、コンタンの超絶技巧が炸裂。
いったいこの人はどれだけのことが出来るのだ?
歌口を完全に覆った口から吹き込む息をタンポを叩くタイミングで
打楽器のように演奏する。
2種類の切り裂く風のような音を同時に演奏した!
静かで心地よい緊張感で幕。


3,グレッグbs,ノブts,コンタンfl

ds抜きの管楽器トリオ
今回のセッションも出演者は直前に呼び出しているので出番が分からない。
ノブ、慌てて楽器を用意。
相当緊張している模様。
見た目に立ち位置も美しいバランスの取れた感じ。
しっとりと内省的な美しさに終始。



4,ダニエルcl 鈴木新ss マルタンds
容姿の似た直線的な楽器2本とマルタン
新君は今日はストレートソプラノだ。
新君は迷いなくがんがんリードを取って行く。
ダニエルはクラリネットはビギナーだ、と言いながらも
しっかりした音色で存在感たっぷり。
奇矯さに飛びつかずにじっくり行くのが彼らしい。
マルタンは即興に慣れていないということだが、バンドで見る
繊細なプレーはここにも反映されている。
と思いきや、突然のシャウト!
勢いよく叩きながら唸るマルタン、前から気になってたので
グレッグに、彼は何言ってんの?と聞くと
「フェイク・ロシアン」と一言。
わはは、そのまんまやんけ、楽しいやっちゃ。


ひとまずここで休憩。


5,コンタンvo ヤニックdj,vo
休憩中に二人からリクエストあり。
ヤニックは店においてあったオモチャのDJマシーンを手に取り
コンタンが茶目っ気たっぷりでラップをかます
なんか女を連れてデートであーだこーだ、言ってみるみたい
フランス語、わからーん、のだがなんか間とか声とかおかしくて爆笑。
この二人、何とかというユニットになるらしい。


6、れいしうvo,グレッグbs,エリックaccord、

グレッグの友人ということで昨日渋谷であったばかりのれいしうさん。
どういう演奏家かまったく知らないまま組み合わせ。
しゃべり方とかなんとなくの癖を読んで考えてグレッグとエリック。
やはりれいしうさんはクラシックの声楽のトレーニングを積んだ人だった。
となると初めてで緊張していたとしてもこの取り合わせなら
土台の支えはしっかりするので読みあたり。
生真面目っぽいところから崩れてくるあたりが面白い。


7,鈴木新ss,ノブts,グレッグbs

珍しく三種類揃ったサックストリオ。
またしても新君のリード多し。
グレッグはリズミックにさすがの展開。
ノブ、何を臆しているのか、何度も焚付ける。
だんだんと熾ってきて燃え上がる。


ここら辺で一度ダニエルを探したんだが
いや、本当に探してただけなんだけど突然ダニエルにそっくりな人(としておく)
がヨロヨロと現れたのだ。
顔中にガムテープ張り巡らせて変な顔を描いて
両耳からタバコを生やして
手に笛を持って。
突然のことに一同唖然、すぐに大爆笑。
新君が耳のタバコに火をつけようとするがつくはずはない。
そうするとこの人、耳のタバコを笛に差し込んで吹き飛ばそうとして


失敗。


大爆笑である。
すごい、何にも頼んでないのに、ここまでやるか!
何が怒るかわからない、即興か!
面白いぞ、スコットランド人。
何頼むか忘れたよ・・・。



8,マチューaccord,vo 高岡tuba ヤニックds
自分のわがままセット。
どうもマチューとやるとなるとやる前にいろいろなことを想定してしまう。
相手は天才である。それが理由か。
想定どおりのことをしてしまうことが多いのだ。
なんとこの美声を前に歌ってしまった・・・
するとマチューはアコーディオンの片端を持って下方に
びろーん、と伸ばすだけ伸ばしてしまった。
天才だ。


僕はさらにここでわがままになる。
彼らにそれぞれバンドの持ち曲を1曲ずつやってくれないかとお願い。
キーボードがない、マイクがない、ドラムは簡易は不完全のもの。
これで頼むのは失礼重々承知なんだが、今日しか彼らを見れない人、
これから興味を持ってくれる人に、彼らの魅力の一端を伝えたい。
それだけで頼んだ。


1分おくれ、とダニエルは言う。
なにせ名手エリックですらアコーディオンでBLOの曲は初めてなのだ。
ダニエルはマイク・キーボードなしで挑む。
曲はカンガルーだ。


9,ブラックライトオーケストラ:カンガルー
どうしてミュージシャンは苦境に何かをかけるんだろう。
そこでなぜか羽を伸ばす、その姿がたまらなく、いい。
軽く軽妙なこの曲で、皆が集中してパフォーマンス。
マイクなしの声の問題からか、跳びはねて全身でカンガルーをあらわすダニエル。
短いながらも熱演に拍手。


次はオクトバリストの番だ。
10,オクトバリスト:ハワラ
この曲、アラファトがどうちゃら、と不穏なことを笑顔で言うマチュー。
発音上難しすぎて日本語では表記できない。
拍子の測り方すら分からない、歌とリズムの複雑な関係。
難しい歌と合いの手から開始。
エリック、ごめん鍵盤なくて、手拍子と歌にまわってくれる。
ほぼ全員参加。
リズムが始まるととたんにトランスのようなスピード感発生。
我等の頭上になにやら熱い蒸気のようなものが立ち昇る。
エナジーが曲になる。
途中の構成をマチューが突然変えた、編成を薄くしてソロを目立たせる。
新君の音がなぜかアラビックな感じを帯びる。
最後全員の絶唱で、ハワラ!、と幕。
大拍手。


このまま、やっちゃえ!
10,OCT/BLO,全員:全員突撃!
曲名である、アタックトータル。
高らかに音楽への参加を奏でる名曲。
キーボードのない部分を楽器を持たないものたちが歌ってカバーする。
途中の静かな部分をマチューの指示で引き伸ばしソロを回す。
そのバックは全員のコーラスだ!
この美しいこと。
そしてコーラスがあけ、マチューの静かな美声が登場するあたりは
賛美歌の流れる教会に花道がさっと引かれるような、そんな音楽的情景が
まざまざと浮かんだ。
そして静けさが破れダンサブルな調べがうねる。
エンディング。


大歓声である。
小さな箱であるここにホールクラスの熱狂と歓喜が爆発する。


そのままエピローグとしてコンタンとヤニックのデュオが始まった。
曲はポコペンで見たあの「生音ヘビメタ」
この人たち、擦音が多いせいか楽器音の物まね本当にうまい。
何言ってるか相変わらず分からんのだが、猛烈に面白い。
わーわーわー。


プレイスマスターキョウくんから全員に振舞い酒が来た。
ベトナムのハードリカー。
明日マチューはルーツであるベトナムへ旅立つのだ。
乾杯!


音楽することと人を愛することに満ち溢れていた。
東京連日諸々にハードな生活を送っていた彼らに
少しでも喜んでもらえる状況を作りたかった。
結果、自分も楽しみまくってしまった。
リスニングとしてもダンスとしてもアートとしても
コミュニケーションとしても、エンターテイメントする即興演奏。
自分もポップスの人間なんだなあ、と思う。


「本当に本当だったんですね」
とノブが言う。
彼は僕があちこちに書き散らしていた日記のアジ文章に釣られて
やってきたのだ。
毎日書き飛ばしていた喜びはここに本当にあったと。
体力財力ギリギリだが行かねばと新君は駆けつけてくれた。
本当にありがたいよ。
「クラシックやってると即興できないなんて嘘だ」
その通りだよ、音楽は愛と勇気だ、くさいけどね。


喜びもつかのま、三々五々去っていく。
もしかしたら僕は彼らと会えるのは今年はこれで最後になるかもしれない。
うまく運べば26日に駆けつけれる。
再会を熱く誓い熱く抱擁。
また新しく家族のように兄弟のように友のように。
遠く離れた彼の地に30数年かかって出合えた、大事な友達。


少し残ったメンバーとふらふらの空腹を癒すべく深夜の中華へ。
ここでも会話はダンス。
四川料理に思わずビールを頼む奴らに笑う。
いつまでも楽しい奴ら。
タクシーでお見送り。