出発

朝7時、起きてシャワーを浴び準備、寝たのは3時半か4時だからグレッグもまだ寝ているが
起こせといってたのでおこして別れの挨拶。
いつものようにお互いの不在の間の幸せを願う呪文のような、モロッコの祝福そっくり。
またしても楽器は彼の家に置いていく。


ジョヴァンニとパクヤンの家のベルを押したら目の前に彼らがいた。
南駅まで歩いて一緒に。切符はクレジットで買うのが早いということでお世話になる。
余裕の時間、ホームでうだうだ。パクヤンは半分寝ぼけている。


ここでジョヴァンニが言ったことを俺は忘れないだろう。
通勤ラッシュで降りてくる面々の顔色は一様に冴えない。
「なんて顔しているんだ彼ら」とジョヴァンニ。
「でも彼らは働きに行くのよ、私たちだって働いているわ」とパクヤン。
ジョヴァンニは言う、「そうじゃない、パクヤン、俺たちは音楽をしている、
生きていることと幸せであることを人々に示し続けている、違うんだ」
どうにもこうにも彼が言った言葉をうまく再現できない。しかしこれを旅の最後に聴けて良かった。
僕たちは僕たちが幸せであることを伝えるために、音楽をしている。
最高の気持ちだ。

空港行きの列車が来る。
今回最後のハグとキスを大きく。
日本にいるみんなに私たちから大きなハグとキスを届けて、とパクヤンが言う。
僕が旅をしている理由のひとつかもしれない、愛する人たちの間に何かを届ける。
形のないものにしか興味がもてない。
ありがとう、他に言葉はないよ。
なに、すぐ会えるさ、と笑う二人。
11月に、僕はここに帰ってくる。
さようなら。


電車に乗り、空港で手続き。生まれて初めて荷物トラブルなしのチェックイン。
トランジットのコペンハーゲンは物価高くて手が出ない、
あらかじめお弁当にBIOのおいしい天然パンとハムとチーズをもってきてて食べる。
成田行きは日本人がたくさんいる。映画をたくさん見ていつもどおり一睡もせずに東京へ。