GYRO+鬼怒無月@早稲田sabaco

高岡大祐blowbass 沼直也ds 
guest鬼怒無月g


blowbassとはアンプリファイドしたtubaのことで
その演奏スタイルも指す
僕が名付けた。
吹かれる・低音。
僕の演奏はtubaじゃないんだ、ってこと。
それを形作ったバンドがGYROだ。
スズキイチロウgと高岡と沼のトリオ。
2003年に結成し2年の活動の後停止。
dsの沼氏とのデュオに誰かを入れる形で
いろいろな試行錯誤をしていたが
このたびデュオ名をGYROに変更。
そして第1弾はゲストに稀代のテクニシャン
鬼怒無月氏をお迎えしてsabacoで。


ここのところのベルギー勢の世話連絡に忙殺されて遅刻してしまう。
鬼怒さんとはお初だというのに。
店に下りるともう熱い演奏が繰り広げられている。
何も言わずにそのままセットして参加。
挨拶より先に音で会話。
鬼怒さんの音はとてもクリーンで熱くなっても聞きやすい。
見るとセッティングは古い真空管のアンプこそ使っているが
べダル類は誰でも使っている簡素なものだった。
このへんもさすが、である。


音を出し終えてからやっと会話。
鬼怒さんと沼さんはつーかーで
僕と沼さんは切れない腐れ縁。
面白いことになりそうだ。


15分押し程度で開演。
鬼怒さんの音からスタート。
演奏は良く知っているが一緒にやるのは今回が初めて
しかも即興なのでどういうアンサンブルになるのかお互い予想がつかない。
無理に合わせたりしない。
全員横を見ないで疾走する。
極限のスピードに来ると視野というものは狭くなる。
横を見ている暇はない。
必死で前へ向かう、そのスピードは拮抗している。


うわ、鬼怒さん、はやいなあ。
しかも苦悶の全力じゃなくって余裕の全速だ。
こちとら口唇と舌と肺と、まあ全身から
やめてほしいです、とSOSが入る。
俺は無視する。


比較的短いセットを2ステージで合わせて4回。
100m走のスピードでマラソンしながら詰め将棋をするような演奏。
体力的にはどこまでも深くダイブするような無酸素運動
この演奏のタイプは、まさしくGYROだった。
お客も息をつく暇さえない、
演奏側は命を削る。
寿命の縮まるような知力勝負でもある。


面白い。
すごい汗を体と脳の両方にかいた。


久しぶりに事務的なことやお世話のことを忘れて
音楽に没頭できる時間が幸せだった。
出来れば音楽以外のことはしたくないのだ。
身も心もすっきりした夜。