Jim O’Rourke ”two sides to every story”

まだ多幸感に包まれている。
凄い夜だった!


二日前から行われていた草月ホールでの
Jim O'Rourke "two sides to every story"
初日は鑑賞。
ストリングカルテットは舞台裏で、
二部、simple songsは観客席で。
思えば全曲知っているコンサートを聴くのは何十年ぶりか。
(普通逆なんでしょうね)
知らない音楽を好きな僕がたまらなく楽しめたのは、
知っている曲が知らない曲のように響くから。
最後のアンコールにはメンバー全てにとってもサプライズだった
ウィルコのグレン・コッチェが飛び入りドラマーで
1曲演奏。ロックンロールだ。
なんというか、すごいエネルギーだ!
終演後、楽屋に顔出してちょっと挨拶、
ダーリンがグレンを紹介してくれて「アルバムに入っているtubaのか!sound beautiful!」っていって感激。
なんか、さくっと早めにお暇しました。


+++


そして二日目はに参加。


メンバーは、坂田明ちかもらち(ダーリングレイb クリスコルサーノds)のトリオに、
ビッグバンド・石橋英子fl 広瀬淳二ts 吉田隆一ss,ts,bs 金子泰子tb 高岡大祐tuba ジョヴァンニ・ディ・ドメニコp
ジム・オルークcond

[Jazz Trio and Big Band]
Akira Sakata"Chikamorachi" Akira Sakata(as,cl,vo,etc) Dirlin Grey(b) Chris Colsano(ds)
Eiko Ishibashi(fl) Junji Hirose(ts) Ryuichi Yoshida(ss,ts,bs) Yasuko Kaneko(tb) Daysuke Takaoka(tuba)
Giovanni di Domenico(p) Jim O'Rourke(cond)


1部はバッドタイミング全曲演奏。
観客席で観ていてハラハラドキドキした。
演奏家のテンションも観衆の興奮も一体化して。


2部、いよいよ。
ステージ前方にちかもらちの三人、
後方にビッグバンドメンバー、間にジムさんがこちらを向いている。
リハの通りバンドは、演奏はサインボードを使った指示による演奏を行い、ちかもらちは全く自由に演奏する。


ボードを使うけどコブラとは全く違う。
目視と調音の集中力に加え演奏し続ける気力も体力も非常に必要なもの。
リハやゲネプロでは冷静だったジムさんの本番中の壮絶な表情。
中身の印象が全く変わってくる。


そしてジムさん越しに見える、ちかもらち!
叫び狂うご本尊(坂田さん)の門前に構える阿吽の巨神、ダーリン・グレイとクリス・コルサーノ!
ジムさんからの指示は絶対見逃すことは出来ない、
でも、その後ろに嫌でも視覚と聴覚を強烈に刺激し続ける
巨神たちの壮絶な演奏に、
座っていながらも体の震えを止めることが出来ない!
なんて、なんて凄いんだ!!!!!!!!
演奏中なのに、思わず叫んでしまう、笑いが止まらなくなる。


実際に、ダーリンとクリスが物凄い貌をして歯を剥き出しにしながら雄叫びをあげて演奏している。
二人とは数年前にベルギーでツアーして凄さはわかっているものの、
まるで目の前で火山が噴火しているような凄まじいエネルギーの勃起にこちらの驚きも喜びも噴出してしまう。
すごい、すごいものの前にいる。


ジムさんの手と指示を観なくてはいけないのに、
その肩越しに見えるクリスのあまりの素晴らしさと美しさに眼が奪われそうになる。
前にいるダーリンは、もはやコントラバスなのか彼自身から音が発振しているのかわからないほどのエネルギー。


ダーリンはついにバックドロップをかますかのように大きくコントラバスを持ち上げてしまった、
そしてトラベル用だったため、後ろの収納蓋が吹っ飛んで落ちてしまった!
ダーリン、気がついてないんじゃないか!
慌ててジムが拾って装着、その間もダーリンは演奏を止めない。
ほどなくして、すとん、という妙な着地感とともに、
音が止んだ。
みんな、えっ、という感じ。


これで終わるんだ?短すぎやしないか?
まださっき始まったばかりじゃないか?
誰も気がついてなかった。
50分近くも演奏していたなんて。
信じられない。


バックステージに戻ると、達久がすごい顔で
「最高だった!」と叫ぶ。
そうだったんだ、きっとそうだと思ってたけど、
あのエネルギーの中にいると、音楽そのものみたいなものだから、
実感は後から来るのかもしれない。
客席で聴いてみたかった、と切に思った。
これが僕の最初の感想です。


+++


充実した楽屋のムードは、よいコンサートの証。
楽しかった!心からそう言える。
今回、広瀬さんはおよそ30年ぶりの草月ホール出演だったそうで、
その時は富樫雅彦バンドでの演奏だったとか。
リハでそれを聞いたジムさん「私そのレコード持ってます!」
なんという奇縁。


終演後はいつもの店で大打ち上げ。
じゃんじゃか飲んで話しして。
この日は山本達久誕生日、ということで大いにお祝いも。
最高のバースデーじゃないか、達久!
帰る前に皆さんと挨拶、
ダーリンとクリスと初日飛び入りしたグレンにCDをプレゼント。
特にクリスとグレンには、歌女で石原雄治と藤巻鉄郎を聴いてもらいたい、
という願いがあったので、渡せてよかった。
世界最高のドラマーたちの元に届けたよ。


ああ、すごい日々だった!


ものすごいエネルギーがあって、その中にいて一つになり、
自分が音楽と音の一部になった。
まだまだこんな気持になることが、あるんだ。
僕が言うなんて、全く柄ではないのはわかっているけど、
一人ひとりの音楽家、人間に長い歴史と様々な繋がりや関わり、
交わりがあって、その時にしかない音楽が生まれる。
他に言葉も無い、
愛なのだと。


初日も昨日も終わってひとり考えると繰り返し。
エネルギー、だ。音楽は。
ものすごいことを学んだと思う。
大きな夜だった。