坂田明トリオ(本田珠也ds高岡大祐tuba)東北ツアー、バール・フィリップス、などなど

日記ご無沙汰してました。
先月は音源新作2作品リリース、連日のライブもさることながら、坂田さんに誘われて(個人的には)初めての東北へ、そしてコントラバスの伝説的巨匠と言われたバール・フィリップスとの共演など得難い体験が続きました。
坂田さんとの釜石、盛岡、一ノ関での演奏は自分たちでの信じがたいようなヒートアップ。
最後のベイシーでは三人ともこれはなんなのだ!というような演奏で、興奮しました。
こういうことはめったにありません。

釜石から盛岡までの車移動の間三陸海岸の今をつぶさに見続け言葉を失う。



盛岡の次の日は一人東京に戻り、バールさんと齋藤徹さんと天田透さんと低音記念日、田園調布いずるばにて。
77歳(このツアー中に78歳になられました)バールさん、もちろん高齢なんだけどなんというかすっとしていて自然なさまは立ち振舞も演奏も。笑顔の素敵な人。
多くの人が言うようにユーモア溢れる人でもありました。
今回のツアーにとことん尽力された徹さんのおかげでの来日。
素晴らしい場所に素晴らしい演奏。
まさかあんなことになるとは!のバールさんと僕のデュオ。
戻った一ノ関では上にも書きましたが熱烈だったのは演奏だけでなく地元の方々のおもてなしも。
噂にしおう一ノ関ベイシー(ベーシー)そしてマスターの菅原さん。
ちょっとビビっていたんですが、終始笑顔で快活な素敵な方でした。
伝統にどうこう、いうわけはなくて、ただいろいろな意味であまりによそ者な自分、
しかしできることは自分のままに演奏することだけで「まあ嫌われてもいいや」という腹づもりで臨む。
坂田さんが「中途半端なことはいたしません」といって始まっただけあって、この夜の演奏は何かを越えたものでした。
かつてカウント・ベイシーが訪れエルヴィン・ジョーンズも演奏した古いジャズの名店、
そこに我らはアコースティックハードコアノイズトリオでした。
マスター中心にお客さん大盛り上がり。
ほんと、中途半端、はいけないのです。
その後も歓待はそれはもう、という感じで。
「tuba面白いなあ〜」としきりに言われた夜でした。

岩手からの帰りに思い切って埼玉深谷エッグファームのバール・フィリップス、小杉武久高橋悠治コンサートまで足を伸ばしました。

まず

場所に感激、おもいっきり田舎です。そして美しい小さなホール。
個人的にバールさんと高橋悠治さんのデュオ状態のところで滅多にない、とてつもないものを感じました。
言葉になりません。
次の日もオフだったのでまた深谷へ、日が明るいうちに来るとまた格別。

この日は弦311、齋藤徹さんを中心としたコントラバスアンサンブル5人とバールさん。
バールさんの素晴らしい音とプレイ、個人的に親しい瀬尾高志のサウンドのキレと華、徹さんの大きな音楽、皆の違いを楽しむコンサート。
終演後の食事も楽しい時間でした。
バールさんが帰る前日に徹さんのご自宅で送別会ということでライブ前に顔出し。

ゆっくりのんびりバールさんたちとテーブルを囲んで談笑、美味しい飲食にも陶然と。
バールさんの特別なベースの収納時には皆がどよめきました。



なんとこの楽器はネックが取り外せて収納ができるのです。
お互いに大きな楽器の移動の苦労は身にしみてわかっています。
今現在徹さんが使っている銘器・通称ライオンヘッドは元はバールさんのもので前回の来日時に同じ作者の楽器を交換されたそうです。
徹さんはその銘器に昔ながらのガット弦(羊の腸)を張り現代的と言うよりは古代的というようなセッティングで普段演奏されていますが、
今回のバールさんの楽器は小ぶりで現代的、スティール弦でありとあらゆるところが違いました。
コントラバス素人の僕が聴いても、全く異なる楽器のようで、さらに恐ろしく自然体の演奏から産まれる音は、その奏法と楽器が相まって何か「新しい楽器」ではないか、というくらいの衝撃的な印象でした。
音立ち、振舞、人間、演奏、学ぶという言葉が似つかわしくない何か感じるものが巨大な時間でした。
次は彼のいるフランスにいくしかないかな(千年以上前に建てられた教会が家だとか)。
(ツアーの詳細や写真などはこちら齋藤徹さんのブログにあります http://travessiart.com/category/blog/

そんなこんなで、凄い日々でした。
この1週間ほどで自分の何かがすっかり変わってしまったようにも感じます。
いつもやっている人達とやってもその特別感は続いています。
それは演奏に顕著に現れています。
是非ライブにお越しいただき、今を観ていただきたい、と思います。
日々音楽するミュージシャンには、それがほぼ全てです。